胃と腸 25巻3号 (1990年3月)

今月の主題 胃癌の切除範囲をどう決めるのか

序説

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 本号の主題である“胃癌の切除範囲をどう決めるのか”は,既に論じ尽くされたテーマである.話題としての目新しさもない.それにもかかわらず,なぜこの時点で再び取り上げたのか,その“理由”を個人的な立場から語ることで,私は自分に課せられた序説の責任を果たしたいと思う.

 話はインターンを始めた1966年に遡る.当時,千葉大学第1内科の白壁研究室で診断した胃癌の症例は,第1外科に回された.手術には必ず研究室の医師が立ち合い,切除した標本は,まず最初に研究室の人間が手術室から持ち出して写真を撮り,標本をスケッチし,更にその標本を厚いコルクの板に虫ピンで固定し,ホルマリンに入れる作業を受け持っていた.1~2時間後の半固定標本を撮影するのも義務となっていた.

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要旨 X線診断で胃癌の切除範囲を決めるのに必要な事項を,胃上部,胃体部の早期癌68例,早期類似進行癌32例を対象に検討した.①食道浸潤のX線診断に必要な撮影体位は半立位腹臥位第1斜位である.EGJより食道側に限局したバリウム斑,顆粒状陰影が存在すれば,食道側浸潤の可能性が高い.②EGJと口側浸潤境界の距離の診断には半立位仰臥位第2斜位の撮影が有効である.③肉眼所見,内視鏡所見の軽微な症例のX線所見はバリウム付着の差として描写されているものが多い.

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要旨 胃癌の切除範囲の決定について内視鏡診断を中心に検討した.粘膜内浸潤については,色素散布による粘膜面の観察と共に,胃生検を応用した点墨法が切除範囲の決定に有用であって,胃中部に最も多く認められる早期癌で,特に胃体下部に占居する症例では,口側粘膜浸潤範囲を術前に確定しておくことが,ow(+)の防止に必要である.粘膜下層以下の浸潤については,linitis plastica型癌を含む4型癌で胃体下部から幽門部に主座を持つ症例では,口側浸潤範囲の内視鏡診断が困難な場合があって,従来の左側臥位に,胃上部を伸展して観察しうる右側臥位を併用すべきであろう.食道浸潤ならびに胃多発病変についても検討し,特に多発胃癌の検討から,胃上部の内視鏡的検索に当たって,限局した発赤粘膜病変に注目すべきである.

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要旨 胃癌の手術で胃の切除線を決定する方法について述べ症例を呈示した.①噴門部癌食道浸潤範囲の診断:通常はX線,内視鏡で食道粘膜表面の状態を描出すればよい.しかし癌が食道の管腔表面には露出せず粘膜固有層を浸潤することがあるので,病巣の口側粘膜の生検を行っておくことが必要である.②粘膜内の癌浸潤範囲の診断:(A)術前診断:X線,内視鏡で境界が鮮鋭な場合は,その口側を生検し癌陰性であることを確かめておけばよい.口側が随伴Ⅱb,Ⅱb,浅いⅡcを示す場合は以下の手順が有用である.(a)境界と思われる部にクリッピングを行う.(b)留置されたクリップの口側より生検を行い,口側に癌がないことを確かめる.(c)その後にX線検査を施行し,食道胃接合部よりクリップまでの距離を確認する.(c)このとき,クリップを目安として病変部境界がバリウムの付着異常として描出されればなおよい.(B)術中診断:術前にクリップなどで癌浸潤範囲が“線”として確認できていればクリップを目標に切除線を決定する.術前診断が不十分であればopen gastrectomyを行い,色素を散布して粘膜面の微細な変化を確認したうえで切除線を決定する.以上の論旨に基づき症例を呈示した.

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要旨 胃癌の切除範囲決定に際し,外科的立場から切除断端癌陽性および不必要な胃全摘の問題を取り上げた.対象は過去14年間に切除された胃癌955例のうち切除断端(OW)が問題となった38例(早期癌6例,進行癌32癌)である.OW(+)の30例はすべて進行癌であり,そのうち28例までがOW以外の理由で絶対的非治癒となったものである.追加切除を余儀なくされた症例は8例であり,早期癌(6例)の場合は表層拡大型のⅡb,Ⅱcであり,切除線決定には労を惜しまず各種画像診断(ゾンデ法,色素内視鏡,段階的生検)を駆使し,かつ術中断端迅速標本に供すべきである.進行癌では浸潤性発育を示す硬癌が多く,超音波内視鏡も有用である.次に胃全摘を施行した早期癌35例について検討したところ,12例までが大きさ5cm以内で,リンパ節転移もなく,切除範囲を縮小しても十分根治性が期待された.

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要旨 限局型発育を示す胃癌では肉眼的癌浸潤部より3cm以上,浸潤型発育を示すものでは5cm以上離して胃切離線を設定するという従来の考え方を変える必要はないが,これはあくまでも進行癌を対象としたものであり,早期癌ではこの限りではない.早期癌に対していたずらに広範胃切除に固執することは得策ではない.このような意味から,上部胃癌に対する噴門側胃切除は,むしろ積極的になされるべきであると思われる.噴切後は高ガストリン血症の状態になるが,この意義についてはいまだ解明されていない.噴切後は十二指腸,上部空腸,膵組織におけるDNA合成の亢進が示されており,ガストリンはこれら臓器に対して何らかのtrophic actionを示しているのではないかと思われる.

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要旨 胃癌の切除範囲を決める際の問題点を病理の立場から整理してみた.次の4つの問題が指摘できる.①病変の範囲が判読困難なⅡbやⅡb類似癌.②進行癌における癌性リンパ管症.③取り残しが生じうる多発胃癌.④病理組織診断の誤り.具体例に即して論じ,次のように結論した.(1) Ⅱb,Ⅱb類似癌単独の場合よりも,その周囲に潰瘍瘢痕やⅡc,進行癌などの明瞭な病変が共存している場合に,Ⅱb,Ⅱb類似病変は一層診断困難となる.(2) 癌性リンパ管症による断端陽性を回避する手段は,凍結標本による迅速病理診断のみである.比較的若年者のⅡc類似進行癌で,組織型が低分化腺癌や印環細胞癌の場合,癌性リンパ管症による断端陽性を想起する必要がある.(3) 多発胃癌の頻度は予想外に高い.今後,多発癌症例に対して全胃切除を決定する診断基準を検討したい.(4) 病理組織診断が絶対ではない.肉眼でより的確に病変の範囲が判読できる症例も存在する.X線診断が軽視されるような風潮は好ましくない.

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 武藤 本日はお忙しいところをお集まりいただきまして,ありがとうございます.

 今回の座談会のテーマは“胃癌の切除範囲をどう決めるのか”ということです.こういうことは当然どこでもきちんと行われていて,取り残しがあったり,取り過ぎがあったりということはほとんどないと,そう思っています.恐らく先生方の所でも,最近はそんなことは起こっていないでしょうが,日常診療の場では,胃癌の部位により,あるいは進展の具合によって,術前にきちんと判定して胃切除の範囲を決めるということは非常に大切なことなのです.それがきちんと行われないと断端(+)になって術後再発が起こったり,あるいは不必要な胃全摘が行われたりするわけです.ここで初心に返って,切除範囲をどうやって決めるのが一番合理的であるかということを,今日お集まりいただいた専門の先生方にお話しいただきたいと思います.

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〔症例〕73歳,女性.主訴:食欲不振.家族歴:父が72歳で心筋梗塞で死亡.母が27歳で髄膜炎で死亡.既往歴:25歳で不妊症のために手術,66歳より高血圧で治療中.現病歴:1987年10月24日食欲不振で吉村医院を受診し,胃幽門前庭部に隆起性病変を発見した.内視鏡生検でGroup Ⅲのため経過追跡としたが,腫瘤の増大を認め,1988年3月12日に当科に紹介された.

早期胃癌研究会

1989年12月の例会から 長廻 紘
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 1989年12月の早期胃癌研究会の例会は12月20日に,小林絢三(大阪市大3内)の司会で開催された.

〔第1例〕40歳,男性.胃悪性リンパ腫(症例提供:東京都がん検診センター 潮崎).

1990年1月の例会から 小越 和栄
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 1990年1月の例会は新潟がんセンター,小越の司会で17日に2例の検討が行われた.今回より司会者が記録も担当することになった.

〔第1例〕69歳,女性.胃悪性リンパ腫(症例提供:福井県立病院外科 山道).

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要旨 患者は39歳,男性で,胃部不快感を主訴に受診.X線,内視鏡検査で胃角部から幽門部にポリポーシスを認め,前庭部前壁では大きな結節状隆起を呈していた.組織学的に若年性ポリポーシスが疑われた.大腸にも十数個のポリープを認めた.胃切除術および大腸は内視鏡的ポリペクトミーを施行した.組織学的には胃,大腸とも若年性ポリポーシスで,胃の大きな隆起部分では若年性ポリープ中に胃型の異型上皮様構造と,一部に明らかな胃型の腺癌を認めた.大腸のポリープは若年性ポリープと腺腫,癌の併存を認め,腺腫内癌はなかった.若年性胃腸管ポリポーシスはまれな疾患で,癌化の問題,家族内の消化管癌の発生の危険性を中心に文献的考察を行った.

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要旨 患者は76歳,女性.主訴は下血.大腸内視鏡検査で直腸に表面に数本の毛髪を有する腫瘤があり,生検の結果,重層扁平上皮に覆われていた.腹部単純写真,注腸造影,CTで腫瘤内石灰化が認められ,直腸奇形腫と診断し,腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は33×24×22mm大で,左卵管の背側で卵巣と15mmの索状物で連続していた.病理組織検査で腫瘤の表面は扁平上皮で覆われ,内部には結合組織,腺組織,神経組織,骨組織などが含まれていた.卵巣には異常はなく,病理組織学的検討の結果,直腸原発の成熟型奇形腫と考えた.直腸原発奇形腫は自験例を含めると本邦で11例,世界で40例報告されている.この中には経肛門的に摘出したものもあり,卵巣との連続性を明確にしていないものがある.卵巣奇形腫の直腸穿破例も報告があるため,原発性と診断するには開腹下に卵巣奇形腫の有無や位置関係を明確にする必要がある.

初心者講座 胃X線検査のポイント―私の検査法

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1.造影剤はゾルか粉末か

 現在,私自身は粉末(バリトゲンデラックス,黒,硫酸バリウム97.89%含有)を150w/v%に調整したものを使用している.

 バリウムを選択するに当たって,ゾルがいいか,粉末がいいかを議論することは重要な問題ではないと思う.市販のバリウムは何を使っても,写真の質,特に二重造影像の質に大差はない.差があるとする意見もあるが,これはほとんどの場合,個人的な好み(美意識)の違いによるものである.

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1.ルーチン胃X線検査法の考え方

 ルーチン胃X線検査の目的は一定の撮影枚数で病変を効率よく拾い上げることにあると思われる.そのためには広範囲が描出できる二重造影法を主体とすべきである.しかし,ただ二重造影像を撮ればよいというものではなく,胃小区像,微細模様が十分に描出された診断価値の高い写真を撮る必要がある1).微小胃癌,噴門部陥凹型早期胃癌のX線検査による診断能は内視鏡検査のそれに劣るとの論文が多いが,胃小区像が十分に描出された二重造影像は内視鏡検査の色素散布像に匹敵し,微小胃癌の拾い上げ診断も高率に可能である2).また,噴門部の陥凹型早期胃癌のX線診断の決め手はバリウムをいかにしてよく付着させるかにある3).診断価値の高い写真を撮るためには,撮影技術が習熟できているとすれば,より解像力の高い撮影装置の開発が挙げられるが,現在の機械メーカーの態度ではそれは期待できない.CR(computed radiography)が開発されているが,その評価には分かれるところがあり,まだルーチン検査に使用できる段階ではない.新しい造影剤の開発も期待できない今,残された道は現存する造影剤をいかに上手に使用するかである.

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 胃X線診断は,いかに優れた読影力があっても,撮影が不十分だと難しい.“胃X線検査が終わったときは,既に診断の大方は決まっている”と言える.まず,いかに良いX線写真を撮影するかが問題である.

 1.バリウムの付着に影響する因子

 良いX線検査には,使用するバリウムと,濃度,分量,それに発泡剤の量,鎮痙剤の使用,ゾンデの使用,体型,胃液などの因子が影響する.

入門講座・3

小腸X線検査の実際 八尾 恒良
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5.二重造影法

 小腸の二重造影法は胃や大腸のそれと同じように,バリウムと空気を用いて小腸粘膜の様相を描出する方法である.しかし,小腸では胃や大腸と異なって経口法や注腸法ではバリウムや空気の出し入れが自由にできないために良好な二重造影像を撮影することができない.したがって,十二指腸または空腸まで挿入したゾンデを通じて造影剤や空気を注入することが必要となる.

 空気と造影剤を用いるほかに欧米では,空気のほかに水やメチルセルロースを用いた方法も“二重造影法”と呼ばれているが,本稿ではこれらの方法はあとで項を改めて解説したい.

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欧文目次

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 Hazard rates for dysplasia and cancer in ulcerative colitis; Results from surveillance program: Lasner BA, et al (Dig Dis Sci 34: 1536-1541, 1989)

 潰瘍性大腸炎における癌発生の危険因子として,大腸の罹患範囲と病悩期間が知られている.かつては,小児期発症例で癌の危険性がより高いとされていたが,最近,それに対する批判もされている.

書評「大腸癌の構造」 清成 秀康
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 大腸癌は近年本邦でも増加傾向にあるが,組織発生についての考え方は“大腸癌の大部分は腺腫経由である”が一般に受け入れられている.著者は本書において上記の説とは異なり,大腸癌は大腸粘膜から直接発生する“de novo cancer”が主流であると主張し,この結論に到達する過程を医学書としての正確な記述に加えて,読物としても平易な語り口で興味深く,著者一流の精緻な論理の展開を辿らせてくれる.

 イラストにあるように,“大腸癌の発生は腺腫経由”という従来からの説が,多くの矛盾や不確かさの基盤のうえに危うく立っていることを多くの臨床的,病理学的事象の集積によって明瞭に浮かび上がらせ,次に誰もが経験し,納得できる,例えば幾何学の公理のような事象から再出発し,帰納,演繹,背理法と論理学の手法を駆使して“大腸癌は正常大腸粘膜から”という大腸癌組織発生の論理体系を新たに構築している.

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 Diagnosis of recurrent upper gastrointestinal cancer at the surgical anastomosis by endoscopic ultrasound: Lightdale CJ, et al (Gastrointest Endosc 35: 407-412, 1989)

 食道癌や胃癌の術後再発の診断はしばしば困難である.特に吻合部に限局して粘膜下に再発したものは困難である.超音波内視鏡(EUS)は消化管の壁構造を描出しうる新しい方法として登場してきた.本論文ではEUSによる胃癌および食道癌の吻合部再発の診断について検討している.

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 本書の著者の1人である狩谷 淳先生は1988年5月に他界されている.しかし,本書の序文は,既に,その前年に書かれたものである.本書は,先生が一生を消化管のX線診断と治療に情熱を傾けてこられた総仕上げの作品である.まさに診断の精髄を伝えている.共著の間山素行先生も,共に仕事をし,苦しさも満足感も分かち合った仲の共同研究者である.読影はあくまで理論的である.非常に厳しい.性格がそのまま現れている.

 消化管のX線診断について,狩谷先生と直接に語り合いたいと何度も思っていた.しかし,ついにその機会を得なかった,残念に思う.本書を残されたことが,それだけ嬉しく,また,同志的な喜びにもつながる.

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 内視鏡に関する論文を記述するとき,あるいはこれを学会において報告するとき,しばしば正確な用語を探すのに苦労することが少なくない.殊に内視鏡的な解剖学的名称があってもよいはずなのに,今まではそれが定まっておらず,人によってその表現はまちまちであった.

 X線診断学にしても,外科学にしても,殊に手術治療学においても,各々の用途に適した解剖学的な名称が存在する.またそれによって,一段とその学問体系が進歩,発展してきたことは歴史的にみても明らかな事実である.

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 書名は「直腸肛門の外科」であるが,Ⅰ.手術とpitfall(問題点),Ⅱ.直腸癌に対する補助・合併療法,Ⅲ.直腸癌術後管理とfollow-up,の三部構成になっており,本書の狙いは直腸癌にあることがわかる.

 解剖,検査,診断に始まり,各種術式の選択基準,術式解説から術後管理,ストマケア,更には長期follow-upの実際と再発癌の対策に至るまで,直腸癌のすべてが,極めて要領よくまとめられている.殊に手術術式については,オーソドックスな手術はもちろん,局所切除術や神経温存手術のような機能愛護的手術から,仙骨合併切除を伴う骨盤内臓全摘術のような超拡大手術に至る今日的話題の領域まで,幅広く編集されている.のみならず,分担執筆者は,各領域のパイオニア,豊かな経験を蓄えられたベテラン,あるいは新進の専門家であって,それぞれのartの凝集をここに見ることができるのは素晴らしいことである.本書を繙くとき,経験を積んだ外科医は,執筆者の個性を汲み取りながら,自然と自己の手術観や手技を点検,整理することになるであろう.一方,初心者は本書によって,術前評価,手術術式の決定,術前準備に至る流れを大局的に理解することができる一方,本書の記載に従って,現実の症例を点検すれば,要所要所がピタリと押さえられるので手順良く,抜けのない手術準備を進めることができるだろう.また,手術の前日には本書をもう一度開いて,明快な記述や挿図から,手術の重要な場面のイメージを,症例に則して頭の中に描いてみることをお薦めしたい.明日の手術が,より理解しやすく印象深いものになること受け合いである.

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 医学書院より今回出版された東義孝,松本廣嗣両氏による著書,「超音波診断へのアプローチ 腹部」は,いわゆる超音波診断法の解説書ではなく,むしろ自習書ともいうべき特異な目的をもった書物である.

 超音波診断はリアルタイム法の出現以来,特にその非侵襲性,経済性,そして診断結果の迅速性などから臨床各分野に広く普及するに至った.超音波プローブを当てるだけで皮下組織から体腔内深部臓器まで手軽に画像として認識できるこの診断法は,放射線照射を浴びる心配もないなど診断を受ける患者にとっても大変な福音となっている.

編集後記 望月 福治
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 今回取り上げられた主題は“胃癌の切除範囲をどう決めるのか”である.X線,内視鏡,一部に超音波内視鏡をも加えた診断,実際の手術を担当する外科,それに病理サイドと,それぞれの立場から,幾つかの問題点が提示されている.切除線については,癌の口側端,とりわけ噴門部への浸潤範囲が論点の中心となった.一方,病変としてはⅡb,多発癌,Borrmann 4型またはスキルス胃癌が主役であることも指摘された.いずれも切除する立場からみると,断端浸潤の有無と共に,胃全摘とするか,あるいは縮小手術が可能かにかかわる問題点となっている.他方,座談会は豊かな経験をもとに,微に入り細に入り,しかも,幅広く議論されている.相手が“癌である”という立場から,小と言えどもあなどることなく,日々,真剣に取り組んでいる姿勢がにじみ出ているようである.

 序説で述べられているように,本号の主題は,既に論じ尽くされたテーマであるかもしれない.日頃,通い慣れた道でも,ときに足を止めてみると,これまで気づかなかった思いがけない光景に出会い,改めて新鮮さを感じることがある.この企画から,いささかでもリフレッシュされるような出会いを感じとっていただければ幸いである.

基本情報

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胃と腸
25巻3号 (1990年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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