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書評「直腸肛門の外科」
小山 靖夫
1
1栃木県立がんセンター
pp.359
発行日 1990年3月25日
Published Date 1990/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110422
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書名は「直腸肛門の外科」であるが,Ⅰ.手術とpitfall(問題点),Ⅱ.直腸癌に対する補助・合併療法,Ⅲ.直腸癌術後管理とfollow-up,の三部構成になっており,本書の狙いは直腸癌にあることがわかる.
解剖,検査,診断に始まり,各種術式の選択基準,術式解説から術後管理,ストマケア,更には長期follow-upの実際と再発癌の対策に至るまで,直腸癌のすべてが,極めて要領よくまとめられている.殊に手術術式については,オーソドックスな手術はもちろん,局所切除術や神経温存手術のような機能愛護的手術から,仙骨合併切除を伴う骨盤内臓全摘術のような超拡大手術に至る今日的話題の領域まで,幅広く編集されている.のみならず,分担執筆者は,各領域のパイオニア,豊かな経験を蓄えられたベテラン,あるいは新進の専門家であって,それぞれのartの凝集をここに見ることができるのは素晴らしいことである.本書を繙くとき,経験を積んだ外科医は,執筆者の個性を汲み取りながら,自然と自己の手術観や手技を点検,整理することになるであろう.一方,初心者は本書によって,術前評価,手術術式の決定,術前準備に至る流れを大局的に理解することができる一方,本書の記載に従って,現実の症例を点検すれば,要所要所がピタリと押さえられるので手順良く,抜けのない手術準備を進めることができるだろう.また,手術の前日には本書をもう一度開いて,明快な記述や挿図から,手術の重要な場面のイメージを,症例に則して頭の中に描いてみることをお薦めしたい.明日の手術が,より理解しやすく印象深いものになること受け合いである.
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