胃と腸 21巻3号 (1986年3月)

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要旨 大腸癌の早期発見を目的とした場合,全大腸にわたる隆起性病変を探索しなければならない.この観点から,われわれはS状結腸ファイバースコープ

と注腸X線検査による同日併用検査を考案し,本法のメリット・デメリットについて検討した.検査対象は,大腸集検で発見した早期大腸癌13例(16病変),大腸ポリープ116例(148病変)と大腸集検以外で発見した早期大腸癌7例(7病変),大腸ポリープ27例(67病変),総計163例(238病変)である.同日併用検査のメリットは,①疾患の多い直腸,S状結腸のダブルチェック,すなわちX線像の重複による病変の見落としの防止,②X線併用により深部結腸が診断可能,③下部大腸を主として内視鏡で観察するため,骨盤部のX線撮影を省略することもでき,放射能被曝の軽減化につながる,④長尺ファイバースコープによる検査の苦痛の軽減,⑤より多くの小ポリープの発見,などであった.一方,デメリットは,①手数が掛かる,②コスト高,③ファイバースコープを先行させるため,腸管への刺激と腸管内に空気が入り二重造影像の条件が悪い,④放射能障害の問題,⑤ファイバースコープの消毒不完全,などであった.

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要旨 大腸早期癌の多くは隆起型を呈するので,X線診断の基本となる隆起性病変の大きさと肉眼形態(有茎・腫瘤・平盤・中央陥凹・特殊)について調べた.大きさは,sm癌のみられない0.5cm以下と進行癌の多い3.1cm以上を除いた0.6~3cmの病変を対象とした.X線による存在診断は95.7%にできた.質的診断では,m癌はfocal cancerが多いので,良性(m癌を含む)・sm癌・進行癌の判別についてみた.長茎では悪性であっても早期癌である.腫瘤・平盤では,大きさと腸壁辺縁の変形を加味して診断する.中央陥凹では中央部の陰影の程度により,深達度診断がある程度可能である.特殊では絨毛腫瘍が多く,深達度診断は難しい.

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要旨 total colonoscopy症例をもとに大腸の腺腫・早期癌の検討を行い次の結果が得られた.①小さなポリープは大腸内に比較的均一に分布した.②大きなポリープ,特に早期癌は左側大腸に多かった.③右側大腸にポリープが約20%,早期癌が約10%あった.④60歳以上では右側ポリープが全体の約1/4を占めた.⑤早期癌は症例で23%,個数で14%を占めた.m癌48個,sm癌7個であった.⑥癌化率は左側大腸で高い傾向がみられた.中高年者では腺腫・早期癌を目的にcolonoscopyを行うときにはtotal colonoscopyが望ましい.大腸の内視鏡検査では炎症性疾患が対象になるとき(若年者,血便)は病変の有無,したがって病変の一部を観察できれば,検査目的の大部分を達したことになるが,中高年者では全大腸をみて初めて,検査を行った,と言える.“all or nothing”である.

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要旨 過去20年間に当教室で経験された右側結腸(ここでは盲腸および上行結腸に限った)の早期癌は6症例8病変であり,いずれも切除例であった.術前診断は十分になされたとは言えず,存在診断が得られたのはX線検査で8病変中3病変,内視鏡検査で8病変中6病変であった.X線検査による診断成績が悪かったのは,病変の形態の特殊性(Ⅰp型1例,Ⅱa型5例,Ⅱa+Ⅱc型1例,Ⅱb型1例)が一因と考えられたが,多くは右側結腸におけるX線検査の未熟さによるものと考えられた.しかし内視鏡検査において完全に見落とされた病変があることを常に念頭に置く必要がある.

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要旨 1978年度以降1985年3月に至る7年間に名古屋市野垣病院で発見された大腸腺腫1,047症例1,272個,大腸癌669症例690個(うち早期癌208症例228個)の拾い上げ成績を分析した.早期癌は全大腸癌の約330%を占め,しかもその89%が下行結腸以下の左側結腸に見出された.早期癌の拾い上げ手段は肛門からの病変脱出,直腸指診,肛門鏡,直腸鏡検査またはsigmoidoscopyなど下部大腸検査法によるものが32%を占め,その中にはたまたま痔核などの肛門手術中に発見されたものも少数ながら散見された.しかしながら全大腸の網羅性を有するX線検査またはtotal colonofiberscopyによるものが全体の68%を占め,特に大腸の隆起性病変が強く疑われる患者,高齢者,遠方よりの来院患者には外来における注腸X線検査とtotal colonofiberscopyの同日併用による大腸癌精密スクリーニングが最も効率的と考えられた.

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 丸山(司会) 本日のテーマは大腸早期癌診断におけるX線と内視鏡との比較です.

 初めに確認しておきますが,この場合の診断というのは発見ないしは拾い上げというふうに解釈して話を進めていきたいと思います.

 内視鏡専門の先生の立場からは,いまさらX線と内視鏡を比較するなどということは意味がないという意見もあると思います.また昨今の大腸の診断の現況をみますと,X線診断一本槍という先生方は非常に少なくなりました.X線をやっておられる先生でも,実はこっそりと内視鏡もやっておられる.あるいは,内視鏡の先生は逆で,X線をあまり信用しないという立場で内視鏡だけという,この二通りに分かれると思います.このように通常は,情報を追加する手段として,どちらかを必ず,自分が内視鏡であればX線,X線であれば内視鏡というように情報を絶えず自分のところに持っていて診断をされているというのが,日本の現状ではないかと思います.

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注腸X線像でⅡa+Ⅱc型病変が疑われたが,内視鏡像では空気量により形態の変化がみられ,色素散布では中心陥凹がはっきり描出されず扁平隆起型早期直腸癌と診断された症例である.この型の早期癌における内視鏡診断では,空気量を変えた観察が重要となる.

〔症例〕患者は68歳の女性で,特に症状はなかった.1983年7月の注腸X線検査により上行結腸憩室症と診断され,経過観察されていた.1985年7月の大腸内視鏡検査で直腸の病変が指摘され,精密検査を施行した.

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要旨 患者は64歳,男性.心窩部不快感にて来院.胃X線所見上,胃角後壁を中心に多発する隆起性病変を認め,胃内視鏡検査では,表面平滑,周囲粘膜と同様の色調を呈する多数の隆起性病変を胃角を中心として前後壁にみた.表層拡大型Ⅱa集簇型早期胃癌の診断にて胃亜全摘術が施行された.切除胃の肉眼像では,多数の隆起性病変は1つの領域を形成し,径9cmの類円形のⅡa集簇型癌巣を呈した.更に,この口側にⅡc様陥凹がみられ,癌巣全体は9×10cmであった.組織学的には高分化管状腺癌で,深達度はm,aw(-),ow(-),n(-)であった.

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要旨 患者は59歳,女性.発作性の腹痛・嘔吐を繰り返し,1年前に胆石症の診断のもとに胆嚢摘出術を受けたが症状は変わらず,同症状にて当院外来受診時の腹部単純X線像でわずかなニボー像を認めたため入院となった.臨床所見では軽度の右側腹部圧痛と貧血を認め,便潜血(+)以外には検査成績に異常はなかった.腹痛は翌日軽快し,小腸ニボー像も消失.小腸造影にて空腸中部に表面平滑な長径17mmの腫瘤が明らかにされた.手術所見ではTreitz靱帯より約100cmの空腸に重積した腸管を認め,約25cmを切除.同部の腸管は漿膜側に及ぶ線維性肥厚がみられ,繰り返し重積が生じていたと思われた.その腸管膜付着側に表面平滑な3.0×2.0×1.5cmの山田IV型ポリープを認め,組織学的に脂肪腫と診断した.1980~1982年における本邦の集計では,脂肪腫は27例と,小腸良性腫瘍中26%を占め,男女差は認めず発症は30~80歳台に広く分布している.大きさは10cm以下が95%で,部位はTreitz靱帯とBauhin弁から各々60cm以内の小腸に82%が存在し,小腸狭窄,閉塞症状により発見された症例が66%を占めた.有症状時の腹部単純X線写真が手掛かりとなって,術前に病巣の存在診断が可能であった小腸脂肪腫の1例を報告し,本邦における文献的考察を加え小腸良性腫瘍の問題点につき言及した.

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要旨 59,歳男性,腹部膨満感を主訴として受診.注腸検査,大腸内視鏡検査で右結腸曲に中心陥凹のある無茎性隆起を指摘されたが,生検ではGroup 3であった.腺腫内癌の可能性も考慮し,結腸部分切除術が行われた.切除標本では15×12×2mmの環状隆起であり,病理検索で陥凹部から隆起部にかけ,一部に粘膜内に限局した高分化腺癌が認められたが,主として中等度~高度の異型を示す腺管腺腫と診断された.最近,中心陥凹が必ずしも悪性の決め手とは言えず,中心陥凹のある扁平隆起で良性病変がまれならず存在することが明らかとなりつつあり,若干の文献的考察を加え報告した.

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要旨 排便時の新鮮血付着を主訴とする68歳女性の直腸後壁に発生した大きなリンパ性ポリープの1例を報告した.注腸X線検査および内視鏡検査所見から,中心にわずかなびらんを有する半球状の粘膜下腫瘍と考えられた.生検で,Group 1(炎症性ポリープ)と診断され,外科的局所切除術を行った,組織学的には萎縮した直腸粘膜と,粘膜固有層から外膜に及ぶ著しいリンパ球の浸潤および胚中心を有するリンパ濾胞様構造の腫大・増生を認め,当初benign lymphoid hyperplasiaと診断された.しかし,後に悪性リンパ腫との鑑別が問題となった.経過は良好で,術後3年経った現在も再発はみられていない.

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要旨 Peutz-Jeghers症候群における消化管ポリポーシスの癌化や悪性腫瘍の合併など最近注目されてきている.患者は42歳,男性で,口唇,手指に典型的な色素斑がある.腸管にはポリープが散在し,下行結腸には腫瘍による狭窄が存在していた.内視鏡的ポリペクトミーおよび小腸部分切除,左半結腸切除,術中経腸的ポリペクトミーなどを施行した.ポリープは組織学的にすべて過誤腫でfocal cancerを認めなかった.また,結腸の腫瘍は高分化腺癌,中心に粘液癌を混在していたが,過誤腫または腺腫成分の共存を認めなかった.以上,本症候群と大腸癌の合併例を報告すると共に,本症候群の癌化,癌の合併などについて考察を加えた.

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要旨 大腸病変を随伴したサルコイドーシスのまれな1症例について報告した.患者は29歳男性,1980年1月ぶどう膜炎による眼症状で発症し,胸部X線写真で両側肺門リンパ節腫脹と左中肺野に粒状影が認められサルコイドーシスと診断した.ステロイド治療で胸部および眼病変は治癒し,両病変が緩解状態の1984年2月から排便時新鮮出血が起こり,大腸内視鏡およびX線検査を施行した.直腸下部に結節状の隆起を伴う不整形の潰瘍性病変があり,正常粘膜を挾んで下行結腸に表層性の粘膜病変が認められた.直腸生検で類上皮細胞肉芽腫が見出され,全身性サルコイドーシスの大腸病変と診断した.ステロイドの経口坐薬併用治療により下血は消失し,内視鏡的にも著明な改善が認められた.

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要旨 60歳女性.吐血を主訴に来院.入院時検査で貧血と低蛋白血症を認め,上部消化管造影および胃内視鏡検査で胃体部の腺境界領域に弧状に配列する大小不同の多発性ポリープを認めた.生検診断では過形成性ポリープが疑われたが出血持続したため胃切除術を施行.切除胃の組織学的検索ではポリープは間質に乏しく,胃腺窩上皮あるいは幽門腺類似の腺管の腫瘍性増殖を主体としたものであった.以上より同ポリープは喜納らの言う胃腺型腺腫と診断された.また術後血清蛋白の改善をみ,結果的に低蛋白血症は同ポリープよりの蛋白漏出が疑われた.以上,低蛋白血症を伴った胃腺型腺腫と老えられた1例を報告した.

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要旨 57歳男性.胃潰瘍の治療目的にて入院中,胃十二指腸造影で十二指腸球部より第二部にかけて数個の隆起性病変が見出された.低緊張性十二指腸造影にて同部に数個の隆起性病変と,大乳頭の後壁寄りにバリウム斑が描出された.内視鏡検査では乳頭口側に隆起病変を,肛門側に不規則な陥凹性病変を認めた.内視鏡直視下生検にて,隆起性病変はBrunner腺の過形成,陥凹性病変は低分化粘液腺癌と診断された.以上より十二指腸第二部の癌と診断し胃部分切除および膵頭部十二指腸切除術を施行しChild法にて再建した.切除標本では大きさ1.3×1.0cm,肉眼的にはⅡcで病理組織学的には低分化粘液腺癌で深達度はsmであった.文献上,本例は本邦十二指腸第二部の早期癌としては第8例目,陥凹型の早期癌としては第3例目に当たると考えられた.

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草場 通論文への質問

新潟大学第1病理 渡辺英伸

 本例に関し,以下の点を質問いたします.

 1)小彎口側の小ポリープは中心に発赤調を有していますの,healed erosive gastritisのような組織所見が期待されますがどんな組織像でしょうか.

 2)大型のポリープも表面に発赤を有しており,浮腫状です.胃腺型腺腫がこのような肉眼型をとるのでしょうか.

 3)本例は過形成性ポリープの一亜型で,非腫瘍性の幽門腺が増殖した型,すなわち,腺増殖型の過形成性ポリープと考えてはいけないでしょうか.表層部の粘膜固有層にも,過形成性ポリープの性格がよく出ているように思うのですが.

初心者講座

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Ⅰ.X線撮影法

 通常適切な空気量があれば胃体中部までの後壁病変は,前回呈示した胃角部を中心とした二重造影法で描出できることが多い.しかし胃体高位,噴門部または穹窿部の病変は,仰臥位第1斜位で撮影された二重造影像がないと拾い上げられないことが多い.

 胃体部の二重造影像は一度患者さんに右下60°ぐらいの斜位をとらせ造影剤を穹窿部と前庭部に“振り分け”て15~30°ぐらいの斜位に戻すと〔症例1〕a)のような二重造影像が撮影される.これらの二重造影像は脊椎と重なった部分が多く,重なった部位は細かい読影ができないので,大彎側を脊椎の左側で広範囲に描出することを意図した写真〔症例1〕a),強い斜位で小彎側を脊椎の右側に描出することを意図した写真〔症例2〕a),更に両者の中間の写真など3枚ぐらいは撮影するのが望ましい.

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欧文目次

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 腹部の超音波診断および治療は,装置の改良と相まって1970年代の後半に長足の進歩を遂げた.1980年代に入ると医院レベルにまで装置が普及し,これに呼応して超音波診断に関するセミナーが頻繁に開催され,解説書や入門書も数多く出版されてきた.しかし,残念ながらこれらの出版物のすべてが推奨に値するものばかりとは言い難い.執筆者の大部分が大学や研究施設の関係者であって,どうしてもそれぞれの専門に偏りがちでカバーできる範囲が限定されたり,症例数が少ないために不鮮明な画像の写真が多数使用されていたりする本も散見する.

 本書の著者は,特に救急医療に重点を置く都立墨東病院に一般消化器内科医として長年勤務され,多数の症例に接して自ら超音波診断・内視鏡診断・血管造影を行い,これらを用いた治療にも取り組んでこられた.超音波診断については,1978年から本格的に始められ,1980年以来その研究成果を日本超音波学会でもしばしば発表しておられる.

編集後記 望月 福治
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 シーシュポスは重い岩を山頂まで運び上げなければならない.ひとたび山頂に達した岩は再び自らの重みで麓にころがり落ちてしまい,彼の永遠の仕事はいつものようにまた始められる.われわれの仕事も,ある意味ではこんなものかもしれない.

 "早期胃癌のX線診断と内視鏡診断の比較"という命題は,麓にころげ落ちては押し上げられる岩のように,これまで何度か繰り返し検討され,話題の頂上に取り上げられてきた,いわば永遠の主題であるように思われる。本号では,こうした両診断法の比較を,胃から大腸の早期診断の場に置き換えて特集が組まれている.

基本情報

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胃と腸
21巻3号 (1986年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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