Refresher Course・14
この症例にみる診断過程のポイント
細井 董三
1
Tozo Hosoi
1
1東京都がん検診センター
pp.447-450
発行日 1985年4月25日
Published Date 1985/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109795
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
□症例:60歳,男性.
□主訴:特になし.
〔初回X線所見〕患者は特に自覚症状はなく,健康診断のために胃X線検査を受けた.Fig. 1はその際の立位第1斜位の食道二重造影像である.Fig. 1aでは上部食道が,Fig. 1bでは中・下部食道が撮影されている.食道は異常なしと診断された.内視鏡に回った理由は前庭部にびらん性胃炎の所見があったからである.しかし,Fig. 1を見直してみると,簡単に異常なしとするには問題がある.まず,辺縁を見てゆくと,全体的に滑らかな輪郭で描かれており,少なくとも辺縁の異常はチェックできない.次に中央部を見ると,二重造影像にはなっているものの,バリウムが粘稠すぎるため,粘膜面をバリウムの薄い幕が覆ってしまって,粘膜面の微細な変化が全く描出されていない.しかし,Fig. 1bをよく見ると気管分岐部のやや下方の中部食道(A)と下部食道(Ei)の共に右側壁寄りに(B),わずかな異常陰影があり,特に下部食道のほうには,中に粘膜面のわずかな凹凸不整のようなものが認められる.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.