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書評「膵癌の早期診断図譜」
竹本 忠良
1
1山口大学
pp.403
発行日 1985年4月25日
Published Date 1985/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109771
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ERCPに関連して引用すると,劇作家・評論家として著名な山崎正和教授は,近著「自己発見としての人生」(TBSブリタニカ,1984)に,次のように述べている.すなわち,“われわれは……,いわば技術的進歩主義とでも呼ぶべき,人生にたいする感受性の病弊に悩まされている.それは何でもあれひとつの仕事の達成について,さらには,ひとつの時代の歴史的な変化について,われわれがあまりにも過大な期待を抱く結果,つねに現実にたいして幻滅と徒労感と倦怠を覚える,という病弊である”と。
この本の代表著者である高木国夫博士の手によって,ERCPが診断学の世界に登場した年は,絶対に忘れることができないのであるが,実に1969年のことであった.わが国に,Hirschowitzのファイバースコープが輸入されてから,7年後に,まだまだ改良の途上にあった国産の生検用ファイバースコープでもって,ERCPに成功したのである.ファイバースコープにアングルが付いたのが,1966年であったと記憶している.このERCPは,特に膵癌と慢性膵炎の診断に有用な診断武器として,日本はもちろんのこと,欧米に広く普及した.
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