Coffee Break
潰瘍の再発をめぐって(その5)―潰瘍症離脱
五ノ井 哲朗
1
1福島県立本宮病院
pp.1248
発行日 1985年11月25日
Published Date 1985/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109720
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最近,潰瘍再発に関して通読した諸文献のうち,問題提起という意味でもっとも注目されたのは,五十嵐・栗原による報告“潰瘍症のgradeとその対策”(第26回日本消化器病大会,シンポジウム,消化性潰瘍の再発予防,1984)であった.彼らは,初発潰瘍(潰瘍歴なし,瘢痕なし)33例の経過を15~22年間にわたって追跡し,その間における潰瘍再発の実態を報告した.その内容は多くの貴重な示唆を含んでいるが,なかでも重要なことは,潰瘍症離脱の実態を初めて明らかにしたことであろう.
まず,意外なことに初発潰瘍33例中9例,27%は治癒後15~22年の間再発することなく経過した.累積再発率が上限に達する期間15年(前述),あるいは再発間隔最長7年(後述)という数字からみて,これらの潰瘍は永久治癒を営んだものとみなしてよいであろう.すなわち,現在,消化性潰瘍と診断される病変の中に,再発を繰り返すものと,再発しないものとがあるということになる.両者は異なった病変なのか,それとも同じ潰瘍の違った経過なのか,新しい問題が生じたとも言える.
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