胃と腸 18巻3号 (1983年3月)

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 治療の目的で用いられた薬剤による急性食道潰瘍の報告はまれであるが,近年,診断学の進歩により報告数も増加している.われわれは,消炎鎮痛剤sodiu m2-phenylacetate(ボルタレン) に起因すると考えられる急性食道潰瘍の1例を経験したので報告する.

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 食道胃接合部の粘膜下腫瘍の報告には平滑筋腫,平滑筋肉腫などの筋原性腫瘍が多くみられ,次いで神経性腫瘍が目立つが,いずれにしても,これらの外科処置に当たっては占居部位ならびに良悪性の術前診断が極めて重要である.部位的にはX線診断に多くの期待が求められることが多い.本症例はX線・内視鏡検査ともに噴門部の胃内発育型粘膜下腫瘍像を呈したが,大部分が食道粘膜で覆われており,組織学的にも多くの論議がなされた孤立性食道胃接合部悪性神経鞘腫であった.

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 胃に原発する扁平上皮癌は極めてまれである.われわれは,30歳女性の胃体上部小彎より後壁に発生した Borrmann 2 型扁平上皮癌の1例を経験したので,報告する.

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 同一腫瘍内に管状腺癌を共有る胃カルチノイド(渡辺英伸らの言う胃内分泌細胞癌)の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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 胃底腺粘膜から発生したⅡc+Ⅲ型の粘膜内癌で,術前深達度診断がsmまたはsm以深に浸潤していると診断された症例を経験し,その深達度診断について検討を加えたので報告する.

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 胃悪性リンパ腫は,胃肉腫の約60~70%にみられ,胃に原発する非上皮性腫瘍の中でも比較的よくみられる疾患である.しかし,多発性胃悪性リンパ腫は,胃悪性リンパ腫の14~18%にみられ比較的まれな疾患である.また,胃悪性リンパ腫と腺癌の併存例は極めてまれで,現在まで6例の報告をみるにすぎないようである.私どもは,最近同一胃に多発性胃悪性リンパ腫と粘膜内癌が併存した極めてまれな症例を経験したので報告する.

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 われわれは胃迷入膵から生じたと思われる癌の1症例を経験した.これまでに,正確に記述されたこのような症例の報告数は国内・外ともに極めて少なく,貴重な1例と思われるので報告する.

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 Intraluminal duodenal diverticulum(以下,IDDと略す)は十二指腸第2部に内腔に突出する嚢状,または吹き流し状の憩室を有するまれな消化管奇形で,そのX線像は特徴的である.今回われわれはIDDの1例を経験したので,これを報告し,自験例も含めて本邦16例の検討を行った.

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 最近,われわれは高齢者の虚血性小腸炎と思われる1例を経験したので報告する.

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 近年,小腸に関する診断法の進歩とともに本邦における小腸の限局性病変に対する臨床診断も次第に確立されつつあり,小腸病変の報告例も増加しつつある.しかし,胃あるいは大腸病変に比して小腸疾患はまれで,とりわけ非特異的小腸潰瘍はまれである.このたび,われわれは空腸に発生した単発の潰瘍性病変で,病理組織学的に単純性非特異的空腸潰瘍と診断された1例を経験したので,その診断過程および小腸X線検査所見による鑑別診断について若干の考察を加えて報告する.

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 回盲部は消化管のうちで多種類の病変の発生する部位であるが,注腸透視,大腸内視鏡検査を用いても,その質的診断に際しては困難を感じることが少なくない.最近われわれは9歳男子で,注腸検査にて単純性非特異性潰瘍と診断しえた1例を経験したので報告する.

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 上部消化管のクローン病は,本邦ではなお極めてまれな疾患である.われわれは,大腸クローン病(疑診例)の経過中に十二指腸球部狭窄を生じ手術の結果,胃・十二指腸病変を伴うクローン病と確診できた症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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 潰瘍性大腸炎,クローン病,単純潰瘍などの非特異性炎症性腸疾患をはじめとして,大腸疾患の中には病因や病態が十分に解明されていない疾患が少なくない.最近,われわれは激しい下痢を主訴とする女性の大腸病変で,臨床的ならびに病理学的にも,従来記載されてきた疾患概念とは異なると思われる所見を呈した1例を経験したので報告する.

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 虚血性大腸炎は Boley ら(1963年)および Marston ら(1966年)の発表以来,1つの独立疾患として注目されるようになり,近年,報告例の増加に伴ってその臨床像および病理像も明確にされつつある.しかし,短時日のうちに急速に推移するとされている本症の病像の経時的変化については,いまだ十分に解明されているとはいい難い.

 先にわれわれは,本症の病理形態像とその経時的変化について報告した.今回は,注腸X線検査あるいは内視鏡検査が経過中2回以上にわたって施行された本症20例を対象とし,その自覚症状,炎症所見(血沈,白血球数),X線像および内視鏡像を経時的に分析したのでその成績を報告する.

Coffee Break

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 上腹部愁訴例とアミラーゼ値をチェックし,高値例にERCPで早期膵癌を引き続き発見しえたことは,膵癌の早期発見のスクリーニングにアミラーゼ値のチェックが有効であったことを物語っています.上腹部の激痛と共に,アミラーゼ値の著明な上昇は,急性膵炎を疑いますが,アミラーゼ値の軽度上昇は,臨床的に,しばしば経験し,ただ単に軽症の膵炎としてかたずけてしまい,ERCPで膵の状態を調べることは,まず考えていないことでしょう.われわれが膵癌の早期発見のためのプロジェクトとして,アミラーゼ値の上昇例に積極的にERCPを行った結果は前回に書きました.胃癌の早期発見では,無症状例に早期胃癌が見出され,患者がどうして手術する必要があるか,なかなか納得しないことがあることは,現今ではまれでなく,常識になっています.膵癌の早期診断でも,10kgから15kgもの体重減少を示し腰痛があって悪液質に近い状態で発見される症例が多い中で,軽い上腹痛や胃部重圧感を訴える程度で,アミラーゼ値がわずかに高い症例にERCPを行って早期膵癌が発見されています.ERCPを行う前には,検査医は夢にも思っていなかったことで早期胃癌と同様なことが,早期膵癌でも言えるものです.

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 毎年1回の胃癌検診を行っている健常人に,ある時点でX線的に急に胃全体の管状収縮あるいは leather bottle 状態となっていて,その時点では既に手遅れであるような場合が少なからずあります.このような症例に対して,現在,Borrmann 4型癌,スキルス,linitis plastica 型癌,1initis plastica などと呼ばれていて,用語の混乱があります.それらは,同じ癌組織型であって,linitis plastica 型癌は Borrmann 4型,スキルスと呼ばれている類に含まれています.しかし,linitis plastica 型癌は Borrmann 4型とスキルスとは,癌の進展過程,肉眼形態,そして臨床的には早期診断が困難であるとともに予後の極めて悪い状態の癌である,という点で異なっています.したがって,linitis plastica を Borrmann 4型あるいはスキルスから独立させた1つの群あるいは類とする必要があるかと思います.

 Linitis plastica(Brinton,1852)の用語は,当時は癌ではなく炎症性病変であるとみなされていたので-itis がついています.しかし,現在ではこの用語は正しくはなく,慣用的に用いられています.Linitis plastica と呼ばれている型の癌にふさわしい用語があれば,その用語を用いるのがよいと思います.

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欧文目次

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Sulfasalazine Inhibits the Absorption of Folates in Ulcerative Colitis: C.H.Halsted, G.Gandhi, T.Tamura(N Eng J Med 305: 1513~1517, 1982)

 潰瘍性大腸炎疾患の患者でしばしば起こる葉酸欠乏は,サルファサラジンの使用に部分的に起因すると言われる.In vitro では,サルファサラジンは葉酸の腸管輸送や肝での葉酸酵素の阻害剤である.しかしながら,サルファサラジンの使用と葉酸の吸収不良の発現や欠乏との明らかな関連はまだ十分証明されていない.

 著者らは,潰瘍性大腸炎の患者でサルファサラジンの使用と葉酸吸収不良および欠乏の関連について研究し,殊にサルファサラジン投与患者と非投与患者での低血清葉酸値の頻度を比較した.

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Effect of Ethanol on Biliary Unconjugated Bilirubin and Its Implication in Pigment Gallstone Pathogenesis in Human: C. DiPadova, et al. (Digestion 24: 112~117, 1982)

 疫学的調査では大酒家の肝硬変に色素性胆石が合併しやすいと報告されているが,その理由はよくわかっていない.著者らの以前の家兎での実験で,エタノール投与が胆汁中の非抱合型ビリルビンを増加させたことに基づいて,ヒトの肝胆汁への影響を調べた.

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Colonic Polyps in Patients with Acromegaly: I. Klein, et al. (Ann Int Med 97: 27~30, 1982)

 男10例,女7例,平均年齢それぞれ51.5歳,46.1歳の末端肥大症例を注腸および大腸ファイバーで検査し,9例にポリープを発見した.8例にポリペクトミーを行い,5例は腺腫性(うち4例は多発性),3例は過形成性であった.悪性例はなかったが,2例は既往に大腸癌の手術を受けていた.なお,上記17例中11例は10年以上末端肥大症に罹病しており,下垂体摘出術などを受けている.

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Cancer in the Excluded Rectum Following Surgery for Inflammatory Bowel Disease: I.C.Lavery, D.G.Jagelman (Dis Colon Rectum 25: 522~524, 1982)

 潰瘍性大腸炎患者には正常者に比べて,大腸癌が発生する危険が高いことは既に明らかにされてきているが,今回,著者らは患者の不良な全身状態あるいは緊急手術ということのために大腸亜全摘術と回腸瘻設置術が施行され,保存された直腸に癌の発生した5症例を経験し,若干の考察を加え報告している.

書評「胃癌の構造」 長与 健夫
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 ある書店から執筆を依頼されて期限の迫ってきた「腫瘍の組織発生」なる宿題を前にして,いま私は四苦八苦している.もともとこのような途方もなく大きな,そしてわかったようでわからぬことの多い課題の執筆を安易に引き受けた私にその責任があり,今更繰り言を言ってもはじまらず,勇を鼓してこの課題に立ち向かってはいるが,非上皮性腫瘍についてはこの課題内容にふさわしい知識も資料も持ち合わせておらず,文献を繰ってみても,この方面の論文は寥々たるものなので,上皮性腫瘍,特に癌に焦点を当てることにしたが,自分の専門領域のことならいざ知らず,すべての臓器癌について概観し綜説するとなると,これがまた難関で筆は遅々として進まない.

 前置きが大分長くなってしまったが,最近,中村恭一博士が医学書院から出版された「胃癌の構造」を読んでみると,人癌の組織発生については胃が断然進んでいることをつくづく実感させられると共に,十分の資料を駆使して自分の思うところを存分に書いておられる博士の立場を羨しくも思う.

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 最近,器械吻合器が積極的に消化管吻合に用いられるようになってきている.私も食道空腸吻合術,食道離断術,直腸前方切除術などに器械吻合を利用している.1981年に鹿児島で手術手技研究会を主催した際には,主題として器械吻合を取り上げて,種々の問題点について討議を行った.最近いろいろな雑誌にも特集が掲載されているが,使用経験豊かな術者らがその使用法などについて詳細にそしてわかりやすく解説し,単行本としてまとめた本は従来なかったように思う.この本はその最初であり,器械吻合についての理論と実際の教科書となるのではないかと思う.

 まず,12世紀にさかのぼる器械吻合の歩みの項が実に興味深い.そして,1958年峰式吻合器のこと,1972年中山隆市式吻合器のことなどを含めて歴史が実によくわかる.私は今後このようなソフトウェアの部門では,日本が世界をリードしてほしいし,するであろうと信じている.

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 百聞は一見に如かず,ということがある.私は小児科医であるが,ときどき皮膚科医を羨ましく思うことがある.それは皮膚疾患はその病状が文字通り眼に見えるからである.

 さて,本書は小児の消化管の内面を最も進歩した内視鏡で見た所見に基づいて,小児の消化器疾患の診療を具体的に記述した少なくともわが国では類例を見ない著書である.

編集後記 熊倉 賢二
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 史上最強の技術帝国,日本の登場が最近話題になっている.特に活力を持ち出したのは中小企業の技術であるという.小さいところでは年に何千件と倒産するが,一方ではその何倍かが新しくできて,新陳代謝が激しい.だから,経済原則からちょっとはずれると,たちまち自然淘汰されてしまうという.かつての技術革新は大企業主導型であったが,今では草の根型が定着してきたともいう.恐しい時代がきたものである.

 本号を通読しているうちに,上記のような雑誌の記事を思い出した.本号は特別の企画に基づく特集号ではない.それなのに,極めてレベルの高い論文が食道,胃・十二指腸,小腸,大腸にわたり掲載されている.特集号以上に読みごたえがある.恐れ入った現実である.これは,全国的に各分野の基礎的技術が向上したためであり,それらを総合した研究が定着した結果である.

基本情報

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胃と腸
18巻3号 (1983年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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