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書評「胃癌の構造」
長与 健夫
1
1愛知県がんセンター研究所
pp.278
発行日 1983年3月25日
Published Date 1983/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109321
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ある書店から執筆を依頼されて期限の迫ってきた「腫瘍の組織発生」なる宿題を前にして,いま私は四苦八苦している.もともとこのような途方もなく大きな,そしてわかったようでわからぬことの多い課題の執筆を安易に引き受けた私にその責任があり,今更繰り言を言ってもはじまらず,勇を鼓してこの課題に立ち向かってはいるが,非上皮性腫瘍についてはこの課題内容にふさわしい知識も資料も持ち合わせておらず,文献を繰ってみても,この方面の論文は寥々たるものなので,上皮性腫瘍,特に癌に焦点を当てることにしたが,自分の専門領域のことならいざ知らず,すべての臓器癌について概観し綜説するとなると,これがまた難関で筆は遅々として進まない.
前置きが大分長くなってしまったが,最近,中村恭一博士が医学書院から出版された「胃癌の構造」を読んでみると,人癌の組織発生については胃が断然進んでいることをつくづく実感させられると共に,十分の資料を駆使して自分の思うところを存分に書いておられる博士の立場を羨しくも思う.
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