胃と腸 16巻3号 (1981年3月)

今月の主題 虚血性腸炎の臨床と病理

序説

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 Ⅰ.話題の1つである.頻度が外国より少ないものだから遅れをとった.あとから追いかけたものに,クローン病と本症がある.パピロトミーにしても,日本全国の症例数に匹敵する経験例を,欧州では1施設で持っている.欧州では,十数人の放線医が検討会をしている.その会で本症をテーマにしたところ,200例以上の症例の検討ができたという.これを踏まえて,いま,日本的手法が問われ求められているのである.

 Ⅱ.発症の現場を血管造影写真でとらえ,あと,それが回復した結末の所見を,E. Boijsenが見せてくれたことがある.原則は,確かである.不確かなるがゆえに,代謝,免疫の学が入るという領域ではない.消化管屋にとって,脈管の表現を腸管表面にみる,という筋の通った話は,確かである.びまん性,散在性という表現で対比すれば,主として区域性の病変だろうという位置づけに落ちつくだろう.因果関係の思考過程にバランスがとれているケースはよかろう.その経過に断裂をみるものがある.ここに概念の拡大適用をみる.

主題

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 虚血性大腸炎は大腸分節に対する血行障害が主因となって起こると推察される疾患である.本症はBoleyら(1963年)1)およびMarstonら(1966年)3)の発表以来,1つの独立疾患として注目されるようになり,近年報告例の増加に伴って臨床的,X線学的,内視鏡的および病理学的知見も明らかにされている2)4)14)~17).しかし,実際には虚血の期間や程度,病変の時期(病期)や病因により種々の病理形態像を呈することが考えられ,また本症がしばしば一過性で経過観察のみのこともあって,その病理形態学的特徴についてはいまだ十分に解明されているとはいい難い.

 われわれは手術的に切除され病理組織学的検索が可能であった虚血性大腸炎10例,および臨床的・X線的に本症と考えられて生検が施行された6例の計16例を経験した.本稿では,これら16例のうち手術例10例を中心に,主として病理形態学的立場から,虚血性大腸炎の肉眼的および組織学的特徴を述べる.

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 この論文は,これまで発表されている論文の形式と別種なものであって,わが国としてはかなり特異なものだと思っている.というわけは,執筆者名をみて気付かれた方も多いと思うが,2つの大学の教室の症例を持ち寄って,まとめあげ,それについて臨床的な解析を加えたものだからである.かねがね,川井と竹本は,わが国の1教室の症例数では,国際学会において,全く勝負にならないことを話し合っていた.思いきって,わが「胃と腸」誌で,新しい試みをしてみたわけである.周到な打ち合わせを重ねたわけではないので,成功なのか失敗なのか自信はない.

 型どおりの書き出しになってしまうが,1966年Marstonら1)が大腸の虚血性病変をischemic colitisと総称して以来,虚血性大腸炎は主に欧米を中心として研究がすすめられ,その疾患概念および臨床像は,まだまだ曖昧さを残しているが,現状ではある程度明らかになってきたと言えよう.

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 Boley1),Marston2)らによって虚血性腸炎が1つの疾患単位として認められるようになったのは比較的最近のことであり,一般にはまだその実態が十分には理解されていないようである.本稿では自験例を中心に,虚血性大腸炎の内視鏡所見と生検所見の代表例を列挙することにより,本症の内視鏡的スペクトルをできるだけ明らかにしてみたい.

 対象は東京大学第1外科,養育院附属病院外科,吉田外科病院において,臨床的に虚血性大腸炎と診断され,内視鏡的に確認された19例であり,いずれも一過性のものである.

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 患 者:I.T.81歳,男.

 家族歴:特にない.

 既往歴:70歳で虫垂炎およびそけいヘルニアの手術を受けている.患者は軽度老人性痴呆および屎尿失禁があるため,特別養護老人ホームに入園中であり,1978年2月,ベッドより落ち右大腿骨頸部骨折で入院,観血的手術を受け,3月8日に退院している.

 現病歴:退院後経過は順調であったが,同年6月4日より,特別の原因なく突然大量の下血があった.初診時に行った大腸ファイバースコープおよび注腸X線検査の結果,S状結腸の変化が著しく(Fig.1),少量の下血もあり,食欲不振も伴ったので6月9日当院に入院した.

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 虚血性大腸炎はMarston1)によると①gangrene of the colon,②ischemic stricture,③transient ischemic colitisに分類されている.一過性の虚血性大腸炎は頻度が高いと思われるが,経過が早いために十分な検査が行われずに診断が不確実となることも少なくない.最近,私たちは発症後早期にX線および内視鏡検査にて診断し,経過を観察した本症の1例を経験したので報告する.

 症 例

 患 者:70歳,女.

 主 訴:腹痛,下血.

 既往歴,家族歴:特記すべきことなし.

 現病歴:1979年12月27日夜間入浴後に突然軽い嘔気,下腹部鈍痛出現,便意を催し,排便時に新鮮な血液の混入を認めた.その後も腹痛が続き,新鮮血のみの排出を2~3回みた.12月28日本院受診,直ちに直腸鏡検査施行.肛門縁より15cmの検索範囲に異常なく,口側より旧血液が流れてくるのが観察され,緊急入院した.

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 近年,本邦においても虚血性大腸炎の報告が増加しているが,われわれは短期間に著明な改善を示した本症の1例を経験したので報告する.

 症 例

 患 者:掛○わ○,70歳,女.

 主 訴:腹痛,下血.

 既往歴,家族歴:特記すべきことなし.

 現病歴:1979年12月7日突然左側腹痛,嘔気,嘔吐出現し,12月8日下血を来したため,当院を受診.直ちに入院となる.

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 高血圧症と陳旧性心筋梗塞を有する高齢者に発症した一過性虚血性大腸炎の1例を報告し,血管造影上興味ある所見を得たので若干の考察を加える.

 症 例

 患 者:61歳,女.

 主 訴:下血,下腹部痛.

 現病歴:1979年1月初めより感冒様症状を訴え,2日間感冒薬を服用した.1月6日夕方より突然激しい腹痛と下痢が始まり,引き続いて下血と嘔吐を繰り返した.下腹部痛は当初持続性で,次いで仙痛となり,漸次間歇期が長くなった.下血と腹痛は1月9日まで続き,本院外科を受診し緊急入院となった.

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 6カ月以上の経過観察で,X線・内視鏡所見で多少の改善はみられたが,完全治癒には至らなかった,虚血性大腸炎を報告する.

 症 例

 患 者:54歳,主婦.

 主 訴:突然の下腹部痛,下血.

 家族歴,既往歴:特記すべきことなし.

 現病歴および経過:1978年11月28日(発症第1日目―以下発症後の日数で記載する)の夜間,突然に下腹部激痛を覚え,多量の排便とともに,新鮮血下血をみた.排便後とう痛は軽減した.その後も,下腹部痛と下血が時折あったため,発症後25日目に当科を受診.注腸X線検査と内視鏡検査で,S状結腸の狭小化と潰瘍がみられ,精査のため入院.

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 腸の虚血状態は,その程度と範囲の差により,各種の腸病変を引き起こすことが知られている.腸間膜動脈などの主幹動脈の閉塞に基づく広範囲な腸壊死は,その代表的な重篤な疾患と言える.しかし最近,病変の範囲も狭く,また変化も軽度で死に至らない大腸の虚血性病変が注目され1),虚血性大腸炎(ischemic colitis)という名称のもとに疾患の概念が確立しつつある2)3).われわれは腹痛,下血,発熱をもって急激に発症し,臨床所見およびその経過,X線像と内視鏡所見より,狭窄型の虚血性大腸炎と診断しうる1例を経験した.しかもこの例について,注腸X線像を経時的に追跡しえたので,そのX線所見の推移を中心に報告する.

 症 例

 患 者 61歳,男.

 主 訴 左側腹部痛,下血.

 既往歴 肺炎(18歳),胃潰瘍(57歳).

 家族歴 兄に胃癌あるほかには,特記すべき事項なし.

 生活歴 外国での居住歴なし,その他特記すべき事項なし.

 現病歴 45歳ごろより高血圧を指摘され,某院にて内服治療中であった.1974年の夏ごろより,歩行時に時々,左前胸部の不快感を覚えていたが,2~3分間の安静で消失していた.1974年9月6日より3日間排便がなく,9日の朝,食事後に浣腸したが排便はなかった.正午ごろ,急に悪心嘔吐があり立ち上がれなくなったので,救急車にて某院受診した,そのときの最高血圧は240mmHgであった.午後1時ごろより急に左の下腹部と側腹部痛を認め,午後3時には,便器いっぱいに血餅様の黒色便を排出した.翌10日にも腹痛と下血は続き,疲労感と全身倦

怠感を覚え,通常200mmHgある最高血圧が146mHgに低下したので,11日,車椅子にて国立がんセンター病院に入院した.

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 本邦では第20回日本消化器病学会秋季大会(於:岐阜,1978.10)のシンポジウムにおいて“消化管と血管病変”が取り上げられて以来,いわゆる虚血性腸炎に対する関心が高まり,症例報告が集積されつつある.私たちも本邦では比較的まれとされている狭窄型の虚血性腸炎を経験したので報告する.

 症 例

 患 者:74歳,女,主婦.(厚生院 No.1473)

 主 訴:左下腹部痛.

 既往歴:44歳で子宮筋腫の手術.

 現病歴:1980年3月19日就眠時,突然左下腹部に鈍痛を自覚.疼痛は腹部全体に拡がり,嘔気,発熱,下血を伴ってきたため同3月21日名古屋市厚生院へ入院.

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 患 者:69歳,男.

 主 訴:粘血便.

 家族歴,既往歴:特記すべきことはない.

 現病歴:8年前より高血圧症(170/90mmHg)と冠動脈硬化症として某医で治療を受けていた.ある日突然,胸部圧迫感と心悸亢進が出現し,一過性の血圧低下(80/50mmHg)と共に,軽度の意識障害を来した.翌日全身状態は回復したが,3日目から下腹部の不快感と頻回の粘血便をみたため,精査の目的で当科へ紹介され入院した.

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 下行結腸および横行結腸に線状潰瘍と著明なタッシェ形成,腸管の狭窄を来し,発症より1年余にわたって,経過を追求しえた1例を経験したので報告する.

 症 例

 患 者:79歳,男.

 主 訴:悪心,嘔吐,腹部膨満感,腹痛.

 家族歴:特記すべきことなし.

 既往歴:高血圧.

 現病歴:1年ぐらい前より,時々,腹部膨満感がみられたが放置していた.1979年9月初旬,食後に腹部膨満感が増強し,腹痛,嘔吐もみられ,某病院を受診し,浣腸の処置を行った.しかし,症状は軽快せず,水様性下痢が頻回となり,翌日には下血を認めるようになり,入院となる.症状は約1週間で消失したが,諸検査の結果,要精検のため,1979年9月下旬,当科入院した.

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 最近の高齢化社会に伴い,わが国でも虚血性腸炎が次第に注目されるようになってきた.著者らは発症の早期から経過観察しえて,しかも典型的な症状と,X線所見を呈した虚血性大腸炎を経験したので報告する.

 症 例

 患 者:67歳,女.

 主 訴:腹痛,下血.

 前病歴:以前から本態性高血圧症があり,内服治療を受けていた.約2年前高血圧症に伴う一過性の意識消失発作があり,脳血管障害として入院治療を受けたことがある.しかし四肢麻痺は残さなかった.

 現病歴:1979年10月11日突然腹部の激痛が発現した.痛みは周期的で,腹がもりもり張ってくるようにして痛み,その度に頻回に便意を催し,最後には便所から出られないような状態となって意識消失して倒れた.そのとき多量の血便を排泄した.

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 約1カ月の経過で急性期から慢性狭窄型へと移行し,多発縦走潰瘍やsacculationを合併した虚血性大腸炎を経験し,潰瘍の局在性について興味ある所見を得たので報告する.

 症 例

 患 者:52歳,男.

 主 訴:腹痛,下血.

 現病歴:20年来軟便傾向で,週1回ぐらい下痢があり,労作時に動悸,息切れを訴えることがあった.1979年3月下旬に感冒様症状があり,3月30日朝食前に排便し,その直後から腹部全体のキリキリする痛みが出現した.痛みは徐々に左下腹部に限局し,15分ぐらいで最強となった.この後血性下痢を4~5回繰り返し,嘔吐も1回認めた.翌日にも同様の発作があり本院受診.注腸造影で下行結腸に異常を指摘され,同年4月19日内科入院となった.

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 患 者:渡○水○,65歳,男.

 主 訴:左下腹部痛.

 現病歴:1978年4月22日夕,急に心窩部不快感があり食物残さを嘔吐す.微熱・左下腹部痛を伴うようになり近医にて投薬受けるも症状軽快せず.4月24日より下痢(軟便・黄色で3行)も出現し,徐々に左下腹部痛増強す.4月25日朝より目まいあり近医にて血圧60mmHgとショック状態となり当院に緊急入院となる.

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 腸循環障害性病変は近年,増加の傾向にある.特に慢性腎不全や敗血症のごとく全身状態の不良な患者に原因不明の消化管出血が,ときに認められるが,その原因の1つにmycotic aneurysmがある.

 われわれは慢性腎不全患者で消化管出血を来し,上腸間膜動脈のmycotic aneurysmによって惹起された区域性の腸循環障害性病変を経験したので報告し,この病態への注意を喚起したい.

 症 例

 患 者:66歳,女.

 主 訴:下血.

 既往歴:15歳および25歳のときに肋膜炎.

 現病歴:1977年(64歳)ごろから眼瞼浮腫が出現し,同年11月には近医にて腎疾愚を指摘されて,1カ月間入院治療を受けた.

 1978年頭初から全身倦怠感,眼瞼浮腫および視力低下が出現し,同年8月に北里大学病院を受診した.

 1978年9月8日には本院で慢性腎不全と診断され,第1回目の入院をした.血液透析を行うも心不全出現のために腹膜透析に変更し,以後の1週間に3回の透析を行った.

 1979年3月17日には某病院へ転院し,透析を週4回行っていたが,同年8月30日ごろから腹膜透析の排液が軽度の混濁を示してきた.そのために,腹膜透析用の溶液に抗生剤を注入し,透析を続けた.

 同年9月4日から赤黒色便が出現し,翌日になっても下血が持続したために,sigmoidoscopyが施行されたが,出血部位は判明せず,9月6日には北里大学病院へ転院となった.

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 最近,われわれは,分娩を契機として発症した小腸に限局し慢性の経過と紐状狭窄を呈した虚血性腸炎のまれな1例を経験したので,若干の考察を加え,報告する.

 症 例

 患 者:34歳,女.

 主 訴:腹痛.

 既往歴:3年前,子宮内膜症を指摘されている.2年前,不全流産にてD&C施行.

 家族歴:特記すべき事項はない.

 現病歴:1979年8月6日第2子正常分娩(妊娠38週,第2頭位).その直後から食後の心窩部不快感あり,同年8月10日夕食後より急激に嘔吐を伴う激しい上腹部痛と右下腹部鈍痛が出現した.排便により腹痛は軽減している.8月24日近医で上部消化管造影を施行する.バリウムの排出が悪く,翌日から腹痛のため,同院に3週間入院.10月には,下痢と体重減少(8kg/2M)が加わり,本院受診.食事摂取困難,脱水著明にて,10月16日本院内科に入院した.血便,背部痛は認めていない.

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 武内(司会)虚血性,あるいは阻血性と呼ばれる,いわゆる腸管の血行障害をベースとした腸病変については,「胃と腸」14巻5号の“消化管と血管病変”で一度取り上げられています.その後1年余を経て,最近,虚血性腸炎に関する発表も多くなってきていますし,また高齢化社会を迎えて,今後増加してくることも予想されます.今回は,この虚血性腸炎について,皆様方の貴重な経験例から忌憚のない御意見をお聞かせ願えればと考えております.

 虚血性腸炎はまだ議論のある病態で,その概念についても,必ずしも一致していません.本誌では既にクローン病などを取り上げており,“腸シリーズ”の1つとして,どう位置づけしていったらよいかということで,この主題が取り上げられました.

研究会だより

芙蓉消化器病研究会 横山 雄次
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 これまでの会の経過を4期に分けてみました.

 ①昭和37~40年:桐生の中嶋義麿先生(その後の研究会のリーダー)が,早期胃癌の新知識を県下の諸先生に紹介すべく医師会を足場に孤軍奮闘していたころ.

 ②昭和40~45年:有志を集め“メサフィリン研究会”と称して,エーザイ援助のもとに消化器病中心の講演会が開かれた時期で,この期間中約50回開催された.

 ③昭和45~48年:それまでの会を発展的に解消させて“芙蓉消化器病研究会”と改め,十数名の会員が協力し,引き続き消化器病中心の研究会が約150回開催された.

 ④昭和49年~現在:会の名称はそのままに,内容を消化器病に限定せず,呼吸,循環,神経,検査等々,次第に枠を拡げながら現在に至り,既に200同を越える各種研究会が続いている.

 ⑤これと並行して昭和42年9月から毎月1回,中嶋先生を講師としてX線フィルム読影会が開かれている.

Coffee Break

Bombesinと十二指腸acidificationと……
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 ErspamerらはBombesinによってCCKが放出されることを1974年に報告している.その後MiyataらによってBombesin投与により膵液中蛋白の増加が確認された.また,Bombesin投与で血中Secretin濃度は上昇しないにもかかわらず膵液中重炭酸の増加がわずかではあるが認められることもわかってきた.この膵重炭酸分泌はBombesinの作用によるものと考えられている.

 Secretinによる膵重炭酸分泌は顕著であるけれども,Bombesin投与と十二指腸内のacidificationを併用した場合のそれは単にacidificationのみの場合より有意に多いということが,Bombesin刺激説を支持する1つの根拠とされている.

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 大腸のX線診断は,注腸二重造影法の発達により著しい進歩を遂げ,小さな隆起性病変も数多く発見されるようになってきた.したがって,隆起性病変の形態を明瞭に描出して,癌か否か,癌ならば早期癌か進行癌かをX線診断しなければならない機会は,ますます多くなると考えられる.ところが,この優れた二重造影法を用いても,隆起性病変の形態を明らかにすることは,必ずしも容易ではない1).また,胃の隆起性病変には極めて有効な圧迫撮影法は,解剖学的理由で大腸では一般に適用困難である.このように大腸の隆起性病変を精密診断するためには,従来のX線検査法のみでは不十分な場合がある.

 そこで,われわれは肛門から挿入したバルーンを用いて,病変を腸管の内腔から直接に圧迫して描出するX線検査法“バルーン直接圧迫法”を考案した.この方法を用いると直腸およびS状結腸の隆起性病変をFig.1のように明瞭に描写できる.したがってこの方法は下部大腸の隆起性病変に対するX線精密検査法として,臨床的に十分有用と考えられるので報告する.

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欧文目次

編集後記 八尾 恒良
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 本誌12~14巻にかけて,腸結核,クローン病およびその疑診例,いわゆる回盲部近傍の単純性潰瘍と重ねた“腸シリーズ”は,腸の炎症性疾患を本邦独自の手法を用いて再整理しようとする目的を有していた.そして,これらの“腸シリーズ”は,いろいろな面から本邦の腸疾患に対する認識を高めるのに役立ってきたと自負している.

 今回の虚血性腸炎特集も,竹本,川井両教授の臨床面,武藤氏の内視鏡,生検からの分析など同じ目的にかなうものと思う.また,岩下,飯田両氏の論文は病理の材料に対して臨床を加味した経時的分析を加えることで,新知見が得られている.

基本情報

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胃と腸
16巻3号 (1981年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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