胃と腸 16巻2号 (1981年2月)

今月の主題 胃リンパ腫(2)―良性リンパ腫

主題

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 胃におけるリンパ細網系の増殖については,総論的には反応性増殖と腫瘍性増殖が考えられ,腫瘍性とすれば良性と悪性およびその境界領域の鑑別,反応性とすれば胃炎性の反応か潰瘍に対する二次的な反応か,更には,腫瘍性増殖と反応性増殖を明確に区別しうるかどうかといった問題がある.今回,本誌において,主題“胃リンパ腫―悪性リンパ腫”に次いで,良性のlymphoproliferative disorderに関する特集が企画されたが,ここでいう“良性”は,悪性腫瘍の対義としての良性腫瘍を指すものではなく,pseudolymphoma(reactive lymphoid hyperplasia)が主な対象となるものであり,リンパ細網系に関しては,良性腫瘍の概念は明確ではないことをお断りしておかねばならない.

 1958年のSmith&Helwig1)の胃悪性リンパ腫とreactive lymphoid hyperplasiaに関する報告はわずかに半ページのabstractで,症例の個個については詳かではないが,その後の多くの胃reactive lymphoid hyperplasiaあるいはpseudolymphomaに関する論文の嚆矢となったものといえる.

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 良性のリンパ細網系細胞の増生は,1928年Konjetzny1)が“lymphatisch-hyperplastischer Gastritis”の名称で記載して以来,種々の変遷があったが,本邦では1966年に中村2)がreactive lymphoreticular hyperplasia(RLH)として6症例の報告を行って以後,この名称が一般的となっている.しかし,本疾患の悪性リンパ腫ならびに早期胃癌との臨床的鑑別が注目され,症例の報告が増加するに伴い,反応性増生のみならず,腫瘍性の性格をもったものあるいは良悪性境界領域病変の報告が散見されるようになった.それゆえに近年,潰瘍や慢性炎症による反応性のlymphoreticular hyperplasiaと良性リンパ腫を分けて考える学者も増加している.

 今回の特集に際し,反応性のlymphoreticular hyperplasiaと良性リンパ腫が臨床的に十分検討されていない現在,便宜的に両者を合わせて良性リンパ腫としてX線・内視鏡検査所見,切除胃肉眼所見を中心に検討を行った.

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 本病変が,主として粘膜上皮下層のリンパ系および網内系細胞の増生によるものである以上,胃粘膜の表面にあらわれた肉眼的変化をとらえようとする内視鏡的手段でその変化を的確に表現することは大変難しいことであり,病理組織学的にも良性,悪性の鑑別に困難を極める例があるというのに,肉眼的にその鑑別を試みることは,至難の業と考えていた.しかしながら,lymphoreticular tissueの増生が著しい場合に,胃粘膜にも肉眼的な変化があらわれ,X線診断および内視鏡的に,胃の悪性腫瘍とまぎらわしい所見を呈することが,Konjetzny(1928,1938)1),Schindler(1937)2)らにより指摘されて以来,この病変が注目されるようになり,その報告例も増加しつつある現実を踏まえ,この機会に自験例および他2施設からの提供例と既報告例を参考とし,文献的考察を加えて,この病変の内視鏡像の特徴について解析を試み,内視鏡診断の可能性と限界,殊に誤診されやすい悪性リンパ腫と早期胃癌を中心に,その鑑別の可能性を追求した.

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 反応性リンパ増殖症(RLH)は,現在良性病変として広く理解されているが,実際には悪性リンパ腫との間に明確な一線を画することが困難である場合も少なくなく,これらRLHと悪性リンパ腫との連続的な関連性は,診断学的にも病理学的にも興味深いものと思われる.

 そこでわれわれは,胃悪性リンパ腫における1つの特異的所見として光島1),三坂2)らが報告した“溝状びらんに囲まれた粗大顆粒像”に類似した像を示すRLHの1例を提示し,若干の検討を加えた.

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 患 者:27歳,女.

 臨床経過および検査所見 1973年5月,空腹時の心窩部痛や嘔気が生じるようになった.9月25日,虎の門病院で胃X線検査を受け,異常なしと診断された(Fig. 1a).見なおすと,胃角前壁に楕円形のニッシェがあった.胃角部後壁の胃小区模様に異常所見はない.愁訴が持続するので,入院精査が行われた.10月30日の内視鏡検査(Fig. 4a)で,胃角小彎に類円形の浅い小さな潰瘍が2個認められた.11月6日のX線検査(Fig. 1b)および11月12日の内視鏡検査で,潰瘍が瘢痕となっていたので退院した.

 Fig. 1cは1974年9月,外来通院中に行った胃X線検査のX線像である.胃角の軽い伸展不良がある.胃角を圧迫すると,少し太まった粘膜ひだが認められた.胃角部から幽門前庭部にかけての胃小区像は,少し大きく,かつ大小不揃いで,また,小さいニッシェが多発している.

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 最近,われわれは40日間にX線所見が著しく変化したreactive lypmhoreticular hyperplasiaの1例を経験したので報告する.

 症 例

 患 者:47歳,女.

 主 訴:空腹時心窩部痛.

 家族歴,既往歴;特記すべきものなし.

 現病歴:1973年7月初旬より空腹時に心窩部痛を覚え,同年7月3日に某医を受診した.同医のもとで胃X線および内視鏡の検査を受け,手術をすすめられたがそのまま放置していた.同年11月初旬,上記同様の症状が出現したので,同年11月6日癌研内科を受診した.

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 症 例

患 者:55歳,男.

主 訴:心窩部鈍痛.

家族歴,既往歴:特記することなし.

現病歴:5年前より,ときどき心窩部鈍痛.1978年4月,健康診断のX線検査で異常ありと言われたが放置(LPCクリニックの写真,Fig. 1と2).1年後に空腹時の鈍痛が起こり近医を受診.異常を指摘され,当院に紹介された.

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 1966年以来,わが国で一般に胃RLH(Reactive Lymphoreticular Hyperplasia)と呼称されるようになった病変は,その後多くの症例報告を重ねてきたが,いまなお重要な問題を未解決のまま抱えているように思われる.

 それらは,①本態についての考え方と分類法,②胃悪性リンパ腫との臨床的,病理組織学的鑑別,③内科的治療法の可能性,などがあり,現在もなお臨床的および病理組織学的診断基準が確立されたとはいい難い.

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 胃X線検査,内視鏡検査にて多発潰瘍を有する胃reactive lymphorcticular hyperplasia(以下,胃RLH)と診断し,胃切除後7年半再発をみない1例について報告し,鑑別診断を中心に考察を加える.

 症 例

 患 者:鳥○志○○,45歳,女.

 主 訴:空腹時の腹部膨満感.

 既往歴:33歳,第2児分娩後より無月経.

 家族歴:悪性腫瘍なし.

 約2ヵ月間続く食事摂取にて改善する腹部膨満感にて,1972年11月,藤田胃腸科病院に入院となる.腹痛なく,食欲良,便通異常なく,体重45kg増減なし,であった.現症は特記すべきことはなかった.

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 胃のreactive lymphoreticular hyperplasia(以下,RLH)は,X線・内視鏡的に,Ⅰ型以外の早期胃癌,悪性リンパ腫,粘膜下腫瘍,良性胃潰瘍と鑑別がなお困難な疾患である.以下,胃潰瘍として経過を追っているうちに早期胃癌が疑われたRLHの症例を呈示する.

 症 例

 患 者:31歳,男,会社員.

 主 訴:空腹時の心窩部痛.

 既往歴:10年前に虫垂切除.

 家族歴:特記することはない.

 現病歴:当科来院6カ月前ごろより空腹時に心窩部痛があり,A医を受診し胃潰瘍と診断された.入院加療を受け,約3週間で症状が軽快したため希望退院した.しかし,1カ月前から再び前回と同様な症状が起こり,B医を受診し,胃X線検査により,胃癌を疑われたため当科を紹介された.

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 われわれは胃集検にて粘膜異常をチェックされ,胃X線検査,胃内視鏡検査では早期癌Ⅱc+Ⅲを疑われ,胃生検ではreactive lymphoreticular hyperplasia(RLH)を強く疑われて切除された胃RLHを経験したので報告する.

 症 例

 患 者:里○一〇,57歳,男.

 主 訴:心窩部痛,胃部膨満感.

 家族歴,既往歴:特記すべきことなし.

 現病歴:1976年7月より食後心窩部痛と胃部膨満感を自覚していた.同年8月胃集検を受け精査通知があった.同年10月に近医を受診し,胃X線検査および胃内視鏡検査の結果早期癌を疑われ,手術をすすめられたため当院を紹介され入院した.

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 胃reactive lymphoreticular hyperplasia(以下,胃RLHと略す)は1928年,Konjetzny1)が慢性胃炎の特殊型として記載しているが,近年,臨床診断学上,早期胃癌と鑑別困難な胃疾患の1つとして注目されている.RLHは組織学的には悪性リンパ腫との鑑別および悪性リンパ腫への移行の有無に興味が注がれ,その悪性化を肯定するようなRLHを伴った悪性リンパ腫の報告例も多くなってきた.ただし,その本態ならびに悪性化の有無についてはまた問題の多いところで,中村ら2)のいう限局・肥厚型で潰瘍による反応性変化とは思えない型も多く報告されるようになり,いわゆる炎症性反応像すなわち二次的変化のもののほか,benign lymphomaともいうべき腫瘍性を帯びた一次的変化のものとに分けて考えざるを得ない症例3)~6)11)も増加してきている.

 われわれも最近,多発Ⅱcの疑いのもとに入院,内視鏡的生検組織診でRLHの疑いと診断されたが,易出血性の病変が多発し,その多彩さのため悪性病変も完全に否定できず,手術を余儀なくされた胃RLHの1例を経験し,組織学的検索で独立した14個の病変が確認された興味ある症例を報告する.

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 白壁(司会)本誌15巻9号の“「胃悪性リンパ腫」特集に当たって”という八尾先生の序説の中で,予後はどうなるか,発育が急速かどうか,初期の形態は――と,明らかにしなければならない問題点が指摘されています.

 今度の特集に当たって,症例の集計を,八尾先生をはじめ皆さんが担当してくださいました.まずその集計成績からお話しいただけますか.

研究会だより

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 1963年,国立がんセンターの「胃のカンファランス」と呼称されていた症例検討会が一般にオープンされて,地方からの若い研修医とともに東京およびその近郊の熱心な開業医がこの集まりに参加し,おそらく初めて早期胃癌の切除標本をみたことであろう.また,1964年からエーザイ本社講堂で早期胃癌研究会が発足して,毎月熱のこもった討論が交されていた.この時代は,新しい学問の雰囲気,とりわけあの胃癌を征服しようという,ものぐるほしいまでの情熱をその場にいた開業医達が肌で感じ,それぞれ自分達の地域にも講習会や研究会をつくって1例でもいいから早期胃癌を発見できるようになろうという気運が横溢していた時代であった.都内でも,このあと数年の間に,各区の医師会でX線読影を中心とした研究会が発足した.こうなると自分の区の研究会だけでは飽き足らず,隣の区の医師会,更にはその先の医師会の研究会にも首を突込むようになり,各区の熱心な同志と交流するようになった.こうなると,更に高度な知識や技術を修得するためにセンターとなる研究会を持とうではないかということになった.こうして1969年に東京消化器病研究会,1975年に東京内視鏡研究会がつくられた.

 東京消化器病研究会は毎月第2木曜日に中央区にある藤沢薬品の会議室で開かれる.講師は主に国立がんセンターの諸先生で,今までに台風の晩にぶつかったこともあるが,一度も休んだことはない.出席人数はこの11年間ほぼ30~50人で,メンバーは主に開業医で,少数の大学病院やその他の病院の勤務医も含まれている.開業医の多くはいわゆる“下町”といわれる地域の医師会に属しており,それだけに遠慮のない討論のやりとりが毎回みられ,司会者はたくみに大勢から発言を引き出そうとする.研究会の内容を紹介すると,まず“1分診断”と称して日常の診療で疑問のある所見や,自分ではO.B.と思うけれど大丈夫だろうか?などと,すぐ明日にでも患者に告げる診断についての相談コーナーがある.このあとに症例検討があり,主にX線写真について議論する.講師のX線読影の解説があり,次に内視鏡の討論がある.最後に病理が出て結論を出すといった内容である.

Coffee Break

カルシトニン経口投与
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 カルシトニンを静脈内投与すると胃酸やペプシンの分泌が抑制される.この現象は正常者でも,消化性潰瘍患者でも,Zollinger-Ellison症候群患者でもみられる.しかし,どのようなメカニズムでカルシトニンが胃分泌を抑制するのかは判明していない.

 一方,胃内にカルシトニンを注入してやるとラット,モルモット,ブタでは実験潰瘍の発生を抑制することがわかっている.これは,カルシトニン胃内投与で胃内pHが上昇するからであると説明されている.ヒトにおいても同様なことがみられて,基礎分泌やガストリン刺激による胃分泌を抑制することがわかっている.この場合にもどうして胃分泌抑制に関与するのかは判明していない.

Cancer Family Syndrome
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 大腸癌は多分に遺伝的要因をほのめかす疾患として扱われてきた.

 Gardner's syndrome

 Peutz-Jeghers syndrome

 Discrete polyp

 Turcot syndrome

 Gastrointestinal polyposis

 Site-specific colon cancer

 Cancer family syndrome

などなどは非常にしばしば取沙汰されている.しかしながら,大腸癌のうち遺伝性のポリポーシスと関係のあるものは,わずか1%またはそれ以下の頻度であり,遺伝的要因と関係ありと考えられるがポリポーシスとは無関係のものは12~26%もある.またcancer family syndromeも1つの疾病単位として扱うのが無理である.

Neomucosa
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 1973年から74年にかけてBenningtonらは小腸の粘膜がinterposeされた漿膜面上にも延びて生じneomucosaを形成する力を持っていることを発表した.しかし18週間かかっても完全に粘膜が漿膜上を覆いつくすところまではいかなかった.このneomucosaというのは薄く,microvilliは鈍で,腺窩形成も不十分であった.

 このような形態学的にはお粗末なneomucosaでもaminopeptidase,maltase,lactaseなどの活性は正常だったと言われる.しかしAl-p-ase,sucrase,trehalaseなどの活性はかなり低かったそうである.

便潜血反応radial immunodiffusion
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 Winawerらによると,臨床的に無症状の時点に発見された大腸癌では,遠隔転移のあるものは5%以下であり,術後5年生存率は約90%である.

 一般に大腸癌のスクリーニングは便潜血反応が用いられているが,食餌制限などがなかなか守られないために偽陽性例が多く,かなりの手間が必要なことと,不要な検査をたくさん行わなければならなくなるので,実際には面倒なものである.

Hemoccultによるスクリーニング
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 Hemoccult Ⅱという便潜血反応検査のkitを郵送してスクリーニングをした.45,101人に送った.そのうち26%にあたる14,074人が指示通りに検体を送ってきた.TVなどで盛んに啓蒙した結果この程度であった.そのうち4.38%にあたる617人で陽性であったが,陽性者の35%(215人)は更に精査を受けようとしなかった.医師により何らかの検査を受けたのは402人であった.検査といっても指診のみというものもあるのであまりあてにはならないが,とにかく402人中152人は異常なしとされた.

 187人は癌以外の病気で,その内訳は次のとおりであった.

EHTE 止血
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 消化管出血の内視鏡的止血に関しては,レーザー内視鏡の開発とともに,わが国においても近年ブームを起こしている感がある.いわゆる内視鏡的治療としてポリペクトミー,パピロトミー,静脈瘤硬化術などと並んで現今のトピックになった.

 レーザー以前には高周波電流を用いた電気メスが主役であった.内視鏡用に種々の電極が作製され応用された.止血ということになると,出血場所の発見や凝血附着の予防や穿孔の予防のために,高周波の用い方や併せ用いる補助手段についていろいろな工夫を必要とした.何といっても,高周波電流の装置の方がレーザーの装置よりはるかに安価であるから,多少の工夫でやれることなら安いほうがよい.

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 幽門前庭部に発生する対称性潰瘍は,臨床症状,形態などが異なり,またX線および内視鏡検査のうえで特異な形態をとる場合があり,悪性病変との鑑別が困難な場合がある.幽門前庭部に発生した潰瘍が,その治癒過程において,隆起を示す場合があることは蔵原ら1)によって呈示されている.また高木2),中野ら3)は,前庭部急性対称性潰瘍の治癒期において,ⅡaおよびⅡa+Ⅱc型早期胃癌と紛らわしい形態をとる可能性があることを指摘している.しかしながら,潰瘍の治癒過程において隆起を示す場合も,いずれも比較的短期間で治癒平坦化しており,2カ月以上の経過観察においても,なおⅡa様隆起を示し,Ⅱa様早期胃癌と鑑別が困難であった症例は極めて少ない.

 今回われわれは,胃角上部小彎にⅡc+Ⅱb型早期胃癌を合併し,胃角後壁に6カ月間経過観察された,Ⅱa様隆起を示す非対称性潰瘍瘢痕と考えられる症例について経験したので報告する.

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 われわれは,盲腸と横行結腸に進行癌,直腸に早期癌,S状結腸に腺腫を認めた1例を経験したので報告する.

 症 例

 患 者:33歳,男.

 主 訴:右下腹部痛.

 家族歴:伯父,母,兄弟に大腸癌を認める.

 現病歴:1978年12月31日,右下腹部痛を覚えた.発熱はなし.便の回数変わらず.1979年1月4日近医を訪れ,虫垂炎と診断され,虫垂切除術を受けたが,回盲部に腫瘤を触れるとのことで,回盲部腫瘍の疑いで当センターを紹介された.

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 われわれは,Meckelの憩室を,術前に内視鏡的に診断し,潰瘍を確認しえた1例を経験した.これまで,Meckelの憩室の術前診断として小腸造影,血管撮影,99mTc‐pertechnetateを用いたシンチグラムなどが行われているが,内視鏡的に確認しえた報告はこれまでになく,これが世界で最初の症例と思われる.

 症 例

 患 者:斉○真○,7歳,男.

 主 訴:下血.

 家族歴,既往歴:特記すべきことなし.

 現病歴:生来健康であったが,1978年6月18日,運動をして帰宅,午後4時ごろ腹痛出現したが,そのまま夕食は摂取した.午後8時ごろ,再び腹痛出現し下血.近医受診し止血剤投与され一時帰宅したが再び大量に下血し近医で輸液1,000mlを受け,翌19日当院小児外科に入院となる.

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 大腸ポリポージスには腫瘍性の大腸腺腫症,非腫瘍性のPeutz-Jeghers症候群,若年性ポリポージス,Cronkhite-Canada症候群などが知られている.これらの中で若年性ポリポージスは極めてまれな疾患であり欧米で50数例,本邦で8例が報告されているにすぎない.われわれは特異な組織学的型態を示し,家族性を認め,McColl10),武藤ら12)の報告しているjuvenile polyposis coli,若年性大腸ポリポージスに該当すると考えられる症例を経験したので報告する.またこの症例は胃前庭部幽門部にも多発性ポリープが認められたことが特異的である.

 症 例

 患 者:24歳,女,事務員.

 現病歴:生来健康であった.1976年6月30日,下痢,下血にて当科外来へ.1976年7月10日,注腸X線検査にて大腸に多発性の分葉状,有茎性のポリープを認めた.1976年7月21日,内視鏡的に直腸,S状結腸のポリープ3個摘出.1976年7月26日,開腹し,計10個の結腸ポリープを摘出した.

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欧文目次

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 Extension of Gastric Lymphoma into the Esophagus and Duodenum: H. Hricak, R. F. Thoeni, A. R. Margulis, W. R. Eyler, I. R. Francis (Radiology 135: 309~312, 1980)

 胃リンパ腫の予後と治療は,腺癌の場合と異なるので正しい診断が必要である.内視鏡生検は,1/3以上の症例で陰性になるので,X線的特徴に基づいた腺癌との鑑別が大変必要になってくる.

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 Gastric Adenocarcinoma Following Gastric Lymphoma. Role of Partial Gastrectomy: J.Sellin, B. Levin, C. Reckard, R. Riddell (Cancer 45: 996~1000, 1980)

 胃リンパ腫で部分的胃切除と放射線治療を行った13年後に残胃に発生した胃癌の報告である.

編集後記 中沢 三郎
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 胃の悪性リンパ腫を特集した際に,反意語としての良性リンパ腫を取り上げないと片手落ちであろうということで本特集号が企画されました.ところが,胃の良性リンパ腫とは何かとよく考えてみますと意外に実体がはっきりせず,谷口論文に述べられているごとく,リンパ細網系に関しては良性腫瘍の概念は明確ではないのであります.

 良性のリンパ細網系細胞の増殖については1928年Konjetzny以後,Smith&Helwig,Schindlerの報告があり,日本では中村先生のRLHはあまりにも有名であります.以後,数多くの臨床例が発表されており,主として胃癌,特にⅡc型胃癌との鑑別が問題となっておりましたが,最近では,この中に反応性変化もあれば良性腫瘍と考えたほうがよい症例や,どちらとも言えない境界領域のものまで様々な性格をもったものが含まれることが判明してきました.この問題の探究につきましては,単に胃局所のみではなく全身的なリンパ腫との関連で論ぜられるべきでありましょうが,一方,これら本態論は別にして,既に多くの読者が御経験のごとく,RLHと思っていたら実は悪性リンパ腫であったり,また,その逆もみられたり鑑別診断は厄介なものであります.これらの諸問題を一括して理解していただくため,本号では,いわゆる胃の良性リンパ腫についての概念が手際よく整理され,同時に悪性リンパ腫との鑑別点としてX線内視鏡所見および興味ある多数の症例が掲載されています.悪性リンパ腫との区別はなお容易ではありませんが,それでも詳細な所見の読影により,かなりの程度に鑑別が可能となりっっあります.本特集がその一助となれば幸いです.

基本情報

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胃と腸
16巻2号 (1981年2月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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