臨床検査 64巻1号 (2020年1月)

今月の特集1 免疫チェックポイント阻害薬—押さえるべき特徴と注意点

関谷 紀貴
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 がん治療は,従来の手術療法,放射線療法,薬物療法に加えて,第4の治療として定着したがん免疫療法の適応拡大が進んでいます.がん免疫療法の登場は予後改善に貢献しましたが,がん免疫療法の全体像,免疫チェックポイント阻害薬の特徴,時に重篤となる免疫関連有害事象(irAE)に対して,臨床検査技師を含む各職種の十分な理解が進んでいるとは言えません.

 今回の特集は,免疫チェックポイント阻害薬に関する総論的事項を踏まえ,チーム医療の重要性や代表的なirAE,関連する臨床検査を理解し,患者対応の質向上につなげることを目的としています.

 前半部分は,がん免疫療法の全体像,免疫チェックポイント阻害薬の機序・適応・バイオマーカーに関する知識をバランスよく整理できる内容です.後半部分は,多職種で取り組む必要があるirAE関連の対応として,チーム医療のポイント,irAEの全体像,irAEと感染症の鑑別と対応についてご解説いただいています.本特集が,免疫チェックポイント阻害薬使用患者を病院全体で支える体制作りの一助となるよう願っております.

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Point

●免疫応答は自然免疫と獲得免疫に大別される.

●がんに対する免疫療法は能動的免疫療法と受動的免疫療法に大別される.

●免疫チェックポイント阻害抗体療法は担がん生体内にすでに誘導されていたが疲弊を起こしている抗がんT細胞を回復させる治療法である.

●がんに対する免疫療法の効果を持続させるためには,後に担がん生体内に生じる“内因性”抗がん免疫応答が重要である.

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Point

●近年,複数のがん腫に免疫チェックポイント阻害薬の適応拡大が進んでいる.

●承認されているほとんどのがん腫において,単独療法での奏効割合は15〜40%程度にとどまる.

●免疫チェックポイント阻害薬の耐性機序が明らかになってきている.

●現在,治療成績の向上を目指して,免疫チェックポイント阻害薬を含む複合がん免疫療法(併用療法)の開発が進行中である.

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Point

●免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカーとして,腫瘍細胞のPD-L1発現,マイクロサテライト不安定性(MSI),腫瘍遺伝子変異量(TMB)などがすでに用いられている.

●末梢血,腫瘍細胞,腫瘍周囲環境のそれぞれについて,多数のバイオマーカー候補が探索されている.

●生体内の抗腫瘍免疫応答はダイナミックなシステムとして成り立っており,単一の因子のみで免疫チェックポイント阻害薬の効果や副作用を予測することは困難である.

●遺伝子解析技術の進歩により,末梢血から腫瘍細胞・腫瘍周囲環境までの腫瘍免疫の全体像を評価することが可能となってきており,より有用なバイオマーカーの開発が進むことが期待される.

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Point

●免疫チェックポイント阻害薬は多くのがん種に用いられる画期的な薬剤であるが,その反面,免疫関連有害事象(irAE)という独特な副作用が高頻度に出現する.

●免疫チェックポイント阻害薬を使用する際は適応をよく吟味したうえで,事前にirAEを念頭に置いた検査を行い,投薬可能かどうかの判断を適切に行う.

●irAEは全身のあらゆる臓器に生じうるため,ほとんどの診療科が携わる必要があり,早期発見には医師のみでなく,看護師・薬剤師・患者・患者家族などがチームとして協力することが大切である.

●irAEのマネジメントにあたっては,病院全体としての取り組みが必要であり,診療各科が協力するとともに多職種連携を行い,また情報を共有することが重要である.

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Point

●免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は自己免疫疾患様の症状を呈する免疫関連有害事象(irAE)を起こす免疫調整薬である.

●irAE対策は早期発見が最も重要であり,非特異的な症状,検査値異常について注意深く解釈し評価する必要がある.

●多段階的なチェックを行うことが安全管理上重要であり,科・職種横断的なチーム医療が患者管理上必須である.

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Point

●免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の使用そのものが感染症のリスクとなるかははっきりしない.

●免疫関連有害事象(irAE)に対する治療としての免疫抑制剤の使用は,感染症のリスクとなる.

●irAEと感染症の鑑別は困難な場合が多い.

●irAEに対して免疫抑制剤を使用している患者では,細胞性免疫障害に関連した感染症の発生に注意する.

今月の特集2 生理検査—この所見を見逃すな!

河合 昭人
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 パニック値報告において,検体検査の分野では多くの場合,結果が数値で示されるので,基準をあらかじめ設定しておけば,直ちに臨床医に報告することができます.しかしながら,生理検査の場合,画像や波形の判断は直接検査を実施した臨床検査技師の技量に委ねられます.わからない波形や画像があった際は上司に相談するよう指示しておいても,担当の臨床検査技師が“この波形は問題なし”と判断してしまえば,臨床医への報告が遅れることはもとより,患者の生死につながる恐れもあります.

 本特集では異常波形や有意な画像所見を認めた場合,そのなかでも直ちに担当医に報告したほうがいい所見を提示し,判読方法やなぜ報告が必要なのか解説しました.

 生理検査に従事している方はもちろんですが,そうでない方にも知識のアップデートとしてご一読いただければと思います.皆さんのスキルアップの一助となれば幸いです.

心電図 髙野 小百合
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Point

●適切な緊急報告心電図基準(パニック値)を設定し,対応手順を明確にして手順通りに行うことは重要である.

●症状をしっかり確認し,正確な心電図所見と併せて報告する.

●前回心電図があれば,比較して異常の有無を確認する.

心エコー 水上 尚子
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Point

●心エコー検査では,1つの所見の見逃しが,患者の生命に危機を及ぼす可能性があることを,検査者として認識する必要がある.

●急性冠症候群において,心電図で心筋障害を示唆するST上昇がある場合は,なるべく早く再灌流療法を行う必要があり,心エコー検査により,再灌流療法に遅れが生じないよう留意する.

●急性冠症候群を疑う症例の検査時には,まず上行大動脈を中心とした断面で,Stanford A型大動脈解離の有無を確認することが重要である.

●肺血栓塞栓症のほとんどが下肢深部静脈血栓により引き起こされるため,肺血栓塞栓症と深部静脈血栓症は1つの連続した病態,静脈血栓塞栓症(VTE)として捉えられている.

腹部エコー 工藤 岳秀
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Point

●生理検査は,さまざまな患者と直接触れる検査である.そのなかで腹部超音波検査(US)でパニック値(像)を拾い上げることは臨床上非常に有用である.

●パニック値(像)はUS所見のみならず,視診・触診などの身体所見や問診あるいは臨床経過,さらに血液検査所見なども考慮して総合的に判断するものである.

●各疾患を理解し,無症候性で経過をたどる病態でもパニック値(像)として的確に指摘するスキルを養う.

脳波 田中 理
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Point

●検査前に患者情報の確認をし,どのような脳波異常が出る可能性があるか,どのような発作を起こす可能性があるかを理解しておく.

●高齢者のてんかんは多くの場合,痙攣を伴わないことが多いので脳波を注意深く観察する.

●発作が起こった場合は一呼吸おいて,患者の安全を確保しつつ患者をよく観察する.

●発作時は随伴する運動症状の有無や,眼球・頸部の偏倚,目の状態,発作時間,発作中および発作後の意識状態を確認する.

●非痙攣性てんかん重積(NCSE)の疑いがある場合は速やかに医師に連絡する.

呼吸機能検査 宮澤 義
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Point

●上気道閉塞を疑う場合は呼気・吸気フローボリューム(FV)曲線を測定して,胸郭外・胸郭内および固定性上気道閉塞を判断する.

●慢性閉塞性肺疾患(COPD)は著しい不均等分布肺により肺拡散能力(DLCO)が異常低下を示す場合がある.

●肥満や痩身の患者では予測値との不一致が起こる場合がある.

●低肺気量の症例は測定できない検査がある.

●小児気管支喘息の軽症例の診断は1秒率(FEV1%)よりFV曲線のパターンや最大呼気中間流量(MMF)が有用である.

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■非特異反応の発生

 非特異反応とは,何らかの生体成分が試薬や採血管成分などと反応し,目的とする抗原抗体反応以外の反応を引き起こし,病態とかけ離れた測定値を示す現象である.その多くは初回値と希釈再検値との乖離,臨床側からの指摘など,偶発的に見いだされる場合が多い.

 今回のテーマである腫瘍マーカーにおける非特異反応の発生頻度は,がん研究会有明病院における腫瘍マーカー13項目での10年間の依頼検体2,725,205件を用いた検討から,検査現場で発見できた事例数として項目ごとに0.0008〜0.0970%と報告されている1).また,その原因は異好抗体の関与が最も多く,免疫グロブリン(immunoglobulin:Ig)クラスはIgMが多いとのことであった.このように発生頻度は低いながらも非特異反応は現在でも発生し,結果の解釈を誤らせ患者に不利益を被らせる可能性がある.

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症例

50歳代,女性.

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目次

書評 佐藤 之俊
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「診断カテゴリーに特徴的な細胞所見」が圧巻

 『甲状腺細胞診アトラス—報告様式運用の実際』が上梓された.本邦初の甲状腺細胞診に特化したモノグラフである.副題に「報告様式運用の実際」とあるように,甲状腺診療に直結する項目が目白押しといえる内容である.

 まず,呼吸器外科医である私がなぜこの本の書評を?,といぶかしむであろう読者にその理由をお伝えしたい.私は今から30有余年前に病理を学んだが,本書の編集である坂本穆彦先生の勧めもあってサイロイドクラブに参加した.このサイロイドクラブが母体となって,日本甲状腺病理学会が設立されたことをご存知の読者も多いことと思う.当時は,現在甲状腺病理分野で名だたる先生方がまだ新進気鋭の若者であった頃で,甲状腺はわずか20〜30gの臓器で,病理切り出しは難しくなく,乳頭癌と濾胞性腫瘍の診断ができれば十分かな,というのが私の安易な考えであった.その頃の知識といえば,乳頭癌は核所見,濾胞性腫瘍は被膜浸潤の有無といったポイントを外さなければ,それなりの病理診断はできるというようなものだったかもしれない.このような事情から,「30年にわたる甲状腺研究の進歩をよく理解するように」という坂本先生の指導の一環として書評を依頼された次第だと思う.

「検査と技術」1月号のお知らせ

次号予告

あとがき 山田 俊幸
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 2020年,令和2年が皆さまにとりましてよい一年となりますようお祈り申し上げます.

 何度もお聞きになったことと思いますが,2019年は水と風による災害が頻発しました.被災された方々にあらためてお見舞い申し上げます.私事で恐縮ですが,程度は軽いものの私も水による被害を受けました.まさかそこまでとは想像しておらず,リスク回避や事後対応につき考えさせられるところ大でした.

基本情報

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臨床検査
64巻1号 (2020年1月)
電子版ISSN:1882-1367 印刷版ISSN:0485-1420 医学書院

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