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書評
佐藤 之俊
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1北里大・呼吸器外科学
pp.44
発行日 2020年1月15日
Published Date 2020/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542202248
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「診断カテゴリーに特徴的な細胞所見」が圧巻
『甲状腺細胞診アトラス—報告様式運用の実際』が上梓された.本邦初の甲状腺細胞診に特化したモノグラフである.副題に「報告様式運用の実際」とあるように,甲状腺診療に直結する項目が目白押しといえる内容である.
まず,呼吸器外科医である私がなぜこの本の書評を?,といぶかしむであろう読者にその理由をお伝えしたい.私は今から30有余年前に病理を学んだが,本書の編集である坂本穆彦先生の勧めもあってサイロイドクラブに参加した.このサイロイドクラブが母体となって,日本甲状腺病理学会が設立されたことをご存知の読者も多いことと思う.当時は,現在甲状腺病理分野で名だたる先生方がまだ新進気鋭の若者であった頃で,甲状腺はわずか20〜30gの臓器で,病理切り出しは難しくなく,乳頭癌と濾胞性腫瘍の診断ができれば十分かな,というのが私の安易な考えであった.その頃の知識といえば,乳頭癌は核所見,濾胞性腫瘍は被膜浸潤の有無といったポイントを外さなければ,それなりの病理診断はできるというようなものだったかもしれない.このような事情から,「30年にわたる甲状腺研究の進歩をよく理解するように」という坂本先生の指導の一環として書評を依頼された次第だと思う.
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