臨床検査 26巻5号 (1982年5月)

今月の主題 糖尿病

カラーグラフ

膵島の構造 須田 耕一
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 膵島,すなわちLangerhans島には現在三種類以上の細胞が存在し,それぞれが異なったホルモンを分泌していると考えられている.

 ここでは,ヒトの材料を用いてグルカゴンを分泌するA細胞,インスリンを分泌するB細胞,ソマトスタチンを分泌するD細胞の三種類の細胞について,従来より膵島細胞の組織学的な同定法として繁用されている特殊染色法と,産生ホルモンに対する免疫組織化学的手法を用いた写真を供覧する.

技術解説

インスリンの定量 紫芝 良昌
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 技術解説では,技法の実技について解説を加えるのが常道であろう.しかし,インスリンのRIAは国内では少なくとも六つのキットによって行われており,実技的な問題はそれぞれ異なる.そこで,どのようなキットを選ぶかが,測定の質を決める大きな前提となるはずである.そこで,どうすれば良い測定の質を得ることができるかを考えることも,技術解説として重要である.

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 C-ペプチドはインスリンが生合成される際の副産物である.C-ペプチドそれ自体は生体内で生理作用を持たないが,膵からインスリンと等モルで分泌される.C-ペプチドはインスリンとアミノ酸構造が大きく異なり,インスリンのRIAに干渉しないし,インスリン抗体の影響も受けない.この特性を利用して,インスリンのRIAが種々の理由で困難な場合に,インスリン動態を間接的に知る方法として血中や尿中のC-ペプチド測定が行われている.合成C-ペプチドによるRIA系を開発して,広く臨床応用を可能としたのはわが国の矢内原らによる功績である.

 C-ペプチド測定ができるようになって,今まで未知の分野であったインスリン依存型糖尿病患者の膵内分泌機能が明らかにされるようになった.

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 膵臓Langerhans島の内分泌細胞の分類染色は,1915年ごろのHeidenhainのアザン染色に始まる.その後各種のホルモンが同定されるに伴い,ホルモン分泌細胞のより細かい分類のできる染色法が要求されている.一方,おおよそ30年前にCoonsらにより確立された螢光抗体法は,ホルモンに対する抗体の精製技術の進歩とともに各細胞の同定に利用されるようになった.そのため組織染色にも,これら免疫組織化学法との関連性が望まれるようになり,さらに種々の特殊染色が報告されている.

 本稿では,日常使用されている膵島細胞に対する特殊染色と,市販の抗体で行いうる免疫組織化学法を中心に述べる.

総説

糖尿病と自己免疫 河西 浩一
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はじめに

 近年の免疫学の急速な発展とともに糖尿病学においても数多くの免疫学的知見が集積され,糖尿病に対する考えかたも大幅に変わってきた.糖尿病はⅠ型(type Ⅰ,インスリン依存性糖尿病,in-sulin-dependent diabetes mellitus;IDDM)とⅡ型(type Ⅱ,インスリン非依存性糖尿病,nonin-sulin-dependent diabetes mellitus;NIDDM)に大別されるが,前者ではその病因に自己免疫機序が大きく関与していると考えられるようになった.このようにⅠ型糖尿病を中心として広く糖尿病全般にわたって種々の免疫学的検討がなされているが,今回は糖尿病に関係した自己免疫所見について現在までに得られた知見を簡単に概説してみたい.

臨床検査の問題点・151

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 もっとも普及し,かつ長い歴史を有する検査に血糖尿糖の測定がある.その測定法は,①ブドウ糖の還元作用に基づく反応,②糖の酸性下における直接反応,③糖の酵素反応,④簡易法,に大別されよう.ここではこれら測定法と自動化,緊急検査への適応を絡め日常的な問題点を話し合う.

検査と疾患—その動きと考え方・65

小児糖尿病 手代木 正
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小児糖尿病とは

 インスリンの絶対的または相対的欠乏による代謝異常を糖尿病と呼んでいるが,これは一つの症候群であり,この中には成因も病態もまったく異なる疾患が含まれており,これらにつき種々の病型分類が行われてきた.近年,米国のN.I.H.のNational Diabetes Data Group1)は,糖尿病の名称,病型分類,診断基準を再検討して,できれば国際的に統一した見解を持つ必要性についての指摘にこたえて,表1にみるような分類を示した.すなわち,インスリン依存型(IDDM)は従来の若年型糖尿病(juvenile type DM)であり,typeIDMとも呼ばれている.一方,インスリン非依存型(NIDDM)は成人型糖尿病(adult typeDM),type Ⅱ DMと呼ばれていたものである.両者の臨床的特徴2)は表2に示した.

 小児糖尿病とは,1966年のWHOの記録によれば,0〜14歳の小児に発生した糖尿病で,通常急激に発症し,急速にインスリン依存性になる若年型糖尿病が特徴的であると述べられている.しかし,インスリン依存型でケトーシスに陥る傾向にある糖尿病型は必ずしも小児のみに発症するものではなく,どの年齢層にもみられるので,若年型糖尿病という区分は現在除かれ,IDDMとの名称が使用されてきている.したがって,小児糖尿病とは単に小児期に発症した糖尿病ということになる.

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 古くは尿糖を測定することで糖尿病診断の手がかりを得てきた.血糖の測定が可能となり,さらにそれが経時的に行えるようになって試験食を負荷する試験が行われた.その後ブドウ糖を負荷する方式が一般化し,広く行われている.臨床家はこのブドウ糖負荷試験をどのように実施し,解釈し,利用しているのか,特に糖尿病の臨床上の重要な問題である.

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 本誌26巻4号に投稿された佐々木らの"赤芽球鉄染色の一改良法について"の論文を,たいへん興味深く読ませていただきました.論文の主旨は赤芽球鉄染色の時間を大幅に短縮して,簡便化を計ったもので,日常検査を行っている者に示唆に富むものと思います.しかし,若干気づいた点がありましたのでコメントさせていただきたいと思います.

 まず固定に関してですが,論文では木村1)らのホルマリン蒸気固定,30〜60分間を純メタノール固定に変更し,時間を室温3〜5分間に短縮しています.鉄染色の固定にメタノールを使用し,比較的短時間で行う方法はGrünberg2)が1941年に発表して以来比較的ポピュラーであり,われわれ3)の検査室においても15年ほど前より採用しています.したがって,この改変は特に新しいものと思われません.

負荷機能検査・29

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 レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系は,生体の血圧ならびに水-電解質調節に重要な役割を演じており,特にアンジオテンシンは血管平滑筋を収縮することにより血圧を上昇させ,副腎皮質の受容体と結合してアルドステロン分泌を促進する作用を有する.したがって,アンジオテンシン負荷に対する反応を検討することにより,レニン-アンジオテンシン系の血圧ならびにアルドステロン分泌に対する意義を評価することができる.

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はじめに

 近年,感染症は大きく変貌し,従来の病原菌による感染症に代わって弱毒菌ないしは平素無害菌による日和見感染症(opportunistic infection)が増加している.日和見感染症は平素無害性で宿主の常在菌として存在している菌群が,重篤な基礎疾患,例えば白血病,癌などの悪性腫瘍,免疫力低下性疾患またそれらの患者が死亡する少し前の終末感染(terminal infection)としてみられることが多い.嫌気性菌感染症1)も広義の日和見感染症のカテゴリーに入るもので,Bacteroides s.p.,Pe-ptococcus sp.,Peptostreptococcus sp.などの無芽胞嫌気性菌が病原菌として多く検出される.中でもBa-cteroides fragilisはその代表的菌種であり,嫌気性培養技術の進歩,普及によって感染症における嫌気性菌の重要性が明らかにされてきた.このことにより臨床細菌検査においては,嫌気性菌の検索を無視することができなくなった.これに対応する目的で,小規模の検査室でも実施できる嫌気性菌検査法について記述する.

 現在,嫌気性菌の同定はGram染色性,形態,生化学的性状,代謝産物の分析などによって行われる.近年化学分類(chemotaxonomy)の進展につれてガスクロマトグラフィーによる低級脂肪酸の分析が嫌気性菌の分類に導入され,その結果が重視されている.

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 γ-GTPはγ-グルタミルペプチドを水解すると同時に,そのγ-グルタミル基と他のアミノ酸やペプチドとの転移反応を触媒する膜結合酵素である.その生物学的意義は十分解明されていると言えないが,細胞内のグルタチオンの分解と合成に共役するアミノ酸の搬送機構に関与していると考えられている1).正常の成熟臓器ではその活性は腎にもっとも高く,次いで膵や副睾丸に多く,肝の活性は非常に低い.胎生期における肝の活性は非常に高く,分化成長に従いしだいに活性を減じ,生後著しく減少する.成熟肝では胎生期の1/10以下の活性しか示さなくなる2).組織学的にも胎児肝のγ-GTPは肝細胞の毛細管側にもっとも強く認められ,細胞質内にもび漫性に染色される.一方,正常成熟肝では細胆管上皮に散在的に染色されるにすぎない.また,種々の実験肝癌の発癌過程を経時的に検討した成績をみると,前癌性病変として注目されている過形成結節において,すでに強いγ-GTP活性が現れ,変化が進行するに従い活性が増加することが知られている3〜6).このようなことより,癌化に伴う本酵素活性の上昇は一種の癌胎児化現象ともみなされている.

 γ-GTPには濾紙電気泳動で移動度の異なるアイソザイムの存在することが1965年にKokatとKuska7)によって報告されて以来,種々の支持体を用いた検討が試みられてきたが,臨床的な価値はほとんど認められていなかった.

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 フェリチンは分子量約45万の組織貯蔵鉄蛋白であるが,1972年Addisonらによって1),血中に放出された微量のフェリチンがラジオイムノアッセイ(RIA)法により測定できるようになった.以後,次々に血中フェリチンに関する臨床的知見が得られ,現在,貯蔵鉄量の指標として血中フェリチンの臨床的意義は高く評価されるに至っている2).一方,1980年にLipschitzらがRIA法にて尿中フェリンチンについて報告してから3),尿中フェリチンへの関心も高まりつつある.しかし,市販のフェリチンRIAキットの測定感度では,尿中フェリチンの成績を得るのに限界がある.今回,筆者らは,フェリチンの微量測定法としてβ—D—ガラクトシダーゼを標識酵素としたサンドイッチ型エンザイムイムノアッセイ(EIA)法を試み(測定感度0.1ng/ml),健常人の尿中フェリチンについて検討を加えたので報告する.

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はじめに

 1974年Blombäckらの発表以来1),凝固因子の酵素的アミド水解作用により,特異的に色素を遊離するように合成されたペプチド基質が次々と開発され,現在種々の凝固・線溶因子測定用キットに応用されている2).われわれは早くよりフィブリノゲンの代用として,パラニトロアニリン(ρ-NA)発色性合成ペプチド基質(H-D-Phe-Pip-Arg-ρ-NA,Testzym S-2238)を用いた抗トロンビンⅢ (AtⅢ)二段測定法を基礎的に検討し評価を加えてきたが3,4),今回市販のテストチームATⅢキットにおけるトロンビン,検体と基質濃度,反応停止液,総反応液量などを改変して第一段および第二段反応時間を延長させた改良キット(第一化学薬品)を検討したので報告する.

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はじめに

 最近の免疫組織化学の技術的発展とその応用面の拡大は目覚ましいものがあり1〜3),豊富な種類の抗血清や標識抗体が市販品として容易に入手できるようになったことも手伝って,免疫染色法はもはや単に研究室内での研究手技にとどまらず,一般の臨床検査室での利用度もますます増人する傾向にある4〜8)

 しかし.検査室で本法を実施する際に依然として一つの障害となっているのは,良好な染色結果を得るための諸条件.例えば抗血清や標識抗体の希釈度,反応温度や時間などをそのつど設定することが必要なことで,それができるようになるまでにはどうしてもある程度の経験を積まねばならないからである4)

質疑応答

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 〔問〕 向精神薬(ドグマチール,ホパテ)服用の患者にLDH 341,CPK 1,873というデータが出ました.臨床所見と合わないので薬の副作用ではないかと思いますが,どうしてこのような異常値が出るのでしょうか.

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 〔問〕 ラテックス凝集反応を行う際のラテックス粒子は,どのように感作がなされるのでしょうか.また,どのような形状をしているのでしょうか.

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 〔問〕 成書にはDavidsohn吸収試験の正常者,血清病,伝染性単核症の場合の吸収効果が説明されていますが,私の検査室で,未吸収256倍,加熱ウシ血球による吸収512倍,モルモット腎による吸収512倍という凝集を示す検体がありました.同一のヒツジ血球を用いた他検体では,このような異常凝集は認めず,また再検査後も同じ結果でした.この異常凝集についてお教えください.

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 〔問〕 赤血球140万,Hb4.5g/dl,Ht 13%の貧血患者の交差試験で,自己抗体と思われる凝集があり(温式,冷式とも),交差ができませんでした.急を要する場合,このようなときはどのようにすればよいのでしょうか.小さな検査室なのでパネル血球を常に置いてはいないのですが,それにしても凝集の強い場合,パネル血球を使用できないようにも思います.

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 〔問〕モザイクを疑わせる症例で,抗血清に凝集する細胞とフリー細胞とを分離し,型決定を行いたいのですが,良い分離法をお教えください.またB3などの亜型とBMosとの区別で決め手となる検査法にはどのようなものがありますか,お教えください.

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 〔問〕私の施設では心腔内心電図記録時にprogra-mmed electrical stimulation法を用いてSACTを測定していますが,心房,房室結節の不能期の測定に,またbypass tract reentryのメカニズムの解明に利用されるということですが,その方法をお教えください.

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 〔問〕小中学生3名の精密検査の結果と外来患者の1例を下に記しましたが,潜血反応陽性および沈渣でPote有,蛋白陰性というデータが出たものです.他の技師に尋ねてみると,同じ経験があるとのことでした.尿を乳鉢で擦るか,時間をおいて蛋白を調べるとこうなるとのことでしたのでやってみると,スルフォ法でも煮沸法でも〔±〕は〔+〕,〔−〕は〔+〕と反応は強くなりました.この理由を教えてください.

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 〔問〕ケトスティックスを使用して検査をしていますが,紅色を呈した場合,原因となっている薬剤名,その他の理由がありましたらお教えください.

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 〔問〕私は現在工業大学で工業化学を学んでいます.卒業後,生化学,臨床化学を学びたく,また特殊技術者として医療関係で働きたいと考え,臨床検査技師の専門学校へ働きながら通うことを考えています.そこで,臨床検査技師とはどの程度の収入が得られる職業であるのか,また人員が充足されつつあるとのことですが就職が難しくなるということはないのか,の二点についてぜひ回答をお願いいたします.

基本情報

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臨床検査
26巻5号 (1982年5月)
電子版ISSN:1882-1367 印刷版ISSN:0485-1420 医学書院

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