材料別細菌検査の進め方・5
嫌気性菌の検査法
増谷 喬之
1
,
播金 収
1
,
鷲津 良道
2
,
山中 喜代治
3
,
小栗 豊子
4
,
佐久 一枝
5
,
三輪谷 俊夫
6
Takayuki MASUTANI
1
,
Osamu HARIKANE
1
,
Yoshimichi WASHIZU
2
,
Kiyoharu YAMANAKA
3
,
Toyoko OGURI
4
,
Kazue SAKU
5
,
Toshio MIWATANI
6
1奈良県立医科大学附属病院中央臨床検査部細菌検査室
2京都府立医科大学附属病院臨床検査部血清検査室
3大手前病院細菌検査室
4順天堂大学医学部付属順天堂医院中央検査部細菌検査室
5東京都立駒込病院臨床検査科細菌検査室
6大阪大学微生物病研究所細菌血清学部門
pp.582-590
発行日 1982年5月15日
Published Date 1982/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911549
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はじめに
近年,感染症は大きく変貌し,従来の病原菌による感染症に代わって弱毒菌ないしは平素無害菌による日和見感染症(opportunistic infection)が増加している.日和見感染症は平素無害性で宿主の常在菌として存在している菌群が,重篤な基礎疾患,例えば白血病,癌などの悪性腫瘍,免疫力低下性疾患またそれらの患者が死亡する少し前の終末感染(terminal infection)としてみられることが多い.嫌気性菌感染症1)も広義の日和見感染症のカテゴリーに入るもので,Bacteroides s.p.,Pe-ptococcus sp.,Peptostreptococcus sp.などの無芽胞嫌気性菌が病原菌として多く検出される.中でもBa-cteroides fragilisはその代表的菌種であり,嫌気性培養技術の進歩,普及によって感染症における嫌気性菌の重要性が明らかにされてきた.このことにより臨床細菌検査においては,嫌気性菌の検索を無視することができなくなった.これに対応する目的で,小規模の検査室でも実施できる嫌気性菌検査法について記述する.
現在,嫌気性菌の同定はGram染色性,形態,生化学的性状,代謝産物の分析などによって行われる.近年化学分類(chemotaxonomy)の進展につれてガスクロマトグラフィーによる低級脂肪酸の分析が嫌気性菌の分類に導入され,その結果が重視されている.
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