臨床婦人科産科 27巻3号 (1973年3月)

特集 産婦人科医のための腫瘍診断学

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はじめに

 与えられたテーマは「婦人科医のための腫瘍診断学」ということで,分担は"婦人科の立場から"となつていた。婦人科医が婦人科の立場から婦人科医のための腫瘍診断学とは,一体どういう注文なのかと大変にとまどつた。そこで編輯子に問合せたところ,外科,泌尿器科あるいは内科の立場から原稿をいただくのがねらいで,筆者には種々の腫瘍の臨床症状を主体とした診断について書けばよいということであつた。

 しかし考えてみると,婦人科医が取扱う腫瘍といつてもその種類ははなはだ多く,与えられた紙数では,教科書に書いてあることの一口メモも作れそうにない。そこで大変勝手ながら,良性腫瘍はすべて省略し,かつ見落すと罪の重い悪性腫瘍についても,稀なものは割愛し,比較的頻度の高いもののみに焦点をしぼることとした。そして,その代りといつては変であるが,単なる臨床症状の総花的羅列では興味もないので,今日有用とされている諸種の診断法あるいは検査法につき,その適応や意義につき私見を加えることとした。

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はじめに

 婦人科でとりあつかわれる内性器の大部分は骨盤腔内にあり,多くの腹腔内臓器にとりかこまれて,それらと解剖学的に近似の位置をしめている関係上,診断面で混乱がおきることが少なくない。とくに,space occupying lesionとしての性質が強く,特殊な症状を呈しがたい腹腔内腫瘤にあつては,鑑別診断上での問題性がより複雑となることが推測される。直腸,結腸の炎症性疾患やある種の腫瘍はそのよい例であつて,発生母地がいずれであるのかよくわからない症例が,時に,みうけられる。別の言葉でいうなら,これらの疾患は婦人科と腹部外科との境界線上にある疾患ということになる。術前の診断だけでなく,手術室の中においても,判断がつかず,最終的な結論を病理組織学的所見に求めなくてはならない症例すらみかけることがある。

 これら疾患の治療を完全におこなうためには,婦人科医あるいは外科医だけでは駄目で,両者の協同作戦があつて,始めて,まつとうされるのは当然のことである。

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はじめに

 婦人性器は泌尿器と非常に密接な関係にある。婦人性器の疾患,手術の際には常に大なり小なり泌尿器に影響がおよび,そのうちあるものは独立した泌尿器疾患にまで発展していく。特に重要なものとして,性器悪性腫瘍の尿路への侵襲,性器の炎症性腫瘍,悪性腫瘍による尿路圧迫症などが問題となり,われわれ泌尿器科医はもちろん,婦人科医も診断治療に悩まされることは,日常しばしばである。そこで今回,泌尿器科の立場から,婦人科腫瘍との鑑別診断を中心として,特に女子における泌尿器科腫瘍について簡単に述べてみる。

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 婦人科医でない私の立場から,特に脳下垂体,視床下部,副腎の腫瘍を,内分泌異常に重点をおいて解説し,併せて,若干の近年の腫瘍診断学について言及するようご依頼あり,極力この線に沿つてのべてみたい。

カラーグラフ 臨床家のための病理学・14

子宮疾患・Ⅴ 滝 一郎
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 今回供覧する上皮変化は,子宮頸部外方で頸管腺の存在しない部に認められたものである。扁平上皮領域に生じたものと考えられるのであるが,これに対しては疑問がある。すなわち,子宮頸部の円柱上皮領域と扁平上皮領域とを区分するには,最尾方に存在する頸管腺の位置が一応の規準線となるものの,その位置よりもつと尾方部まで円柱上皮がおおつていることもある。またその位置より頭方にまで扁平上皮を認めた場合,その扁平上皮が円柱上皮の化生によつて生じたものであると必ずしもいい難いことがある。既存の扁平上皮と円柱上皮の化生によつてできた扁平上皮が接続して形態学的に区別のつかないことがあるからである。この疑問を解決するのは困難であるが,扁平上皮は円柱上皮と多少異なつた増殖の仕方をすることは確かである。そのひとつとして,基底部の未熟な細胞が増殖し,間質内に突起をなして入り込んで行くことがある。

巻頭論文

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I.はじめに

 これからの家族計画のあり方について考える場合には,それが従来はどのようにとり扱われてきたか,すなわち過去に対する反省と,今後,家族計画に関連する問題としては何が最も重要であるか,の2つの点について論じねばならない。

 今後の家族計画と密接に関連するものとしては人口問題と母子保健の問題をあげることができるであろう。また家族計画を実行していくためには,その手段としての受胎調節法が必要であるが,今後はどのような方法が用いられ,どの方向に改良,研究がすすめられるべきかが問題になるであろう。

臨床メモ

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 より確実な避妊法という意味でのピルやIUDの進歩になお一層の期待をかけねばならないのがバースコントロールの現状といえるが,一方ではこれらの人為的な避妊法を行ないたくない種々の理由が残されていることも事実である。

 ところで,排卵を知るために頸管粘液の量や性状が利用できることはすでに周知の事実であり,患者の中にも漠然とではあるが帯下感と排卵の関係に気づいている者があるのを経験する。オーストラリアのメルボルン大学のBillingsら(Lancet 1,282, 1972)は,この頸管粘液の増減を自覚症状としてとらえ,一つの周期的パターンとして患者自身に確認させることで排卵を知ることができると考えている。彼らのいう"粘液症状"の現われ方は次のようである。

今日の産婦人科

産婦人科病理 滝 一郎 , 竹内 正七
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 本誌,カラーグラフにて"臨床家のための病理学"を連載中の滝先生に,産婦人科病理の特殊性,現状,これからのあり方について,臨床,研究両面にわたつてお話しいただいた。聞き手はやはり臨床家で病理に見識の深い竹内先生にお願いした。

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 コンピュータに関する解説には2通りある。第1はコンピュータそのものを解説することで,例えば,コンピュータはどのような構造になつているか,演算装置,入出力装置,記憶装置などとは何か,といつた解説である。第2はコンピュータをどのような場合に利用すればよいかという,利用者の立場からの解説である。例えば,臨床統計を行ないたい時にどのようにコンピュータを使えばよいか,といつた解説である。

 この2つは全く別の知識であつて,通常,われわれ医師が必要とするのは第2の領域に属する知識である。しかし,コンピュータを使うにはコンピュータの構造や2進法の演算などをまず理解しなければならないと思つている人が意外に多い。このことがコンピュータに対する疎外感を生んでいるとしたら,第1の領域の知識は,むしろ有害とさえいえる。当然のことながら,コンピュータを専門にする場合でない限り,第1の領域の知識は必ずしも必要でない。これは,心電計を用いるのに心電計の構造や回路などを知る必要がないのと同じである。

私の手術

Operative Gynecology雑感 遠藤 幸三
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1.Operative Gynecologyとは

 手術の巧拙とはどういうことかと考えて見ると,行なわれた手術治療の効果があつたかどうかに帰着せざるをえない。手術のテクニックが上手で,見学老を驚嘆させるようなものであつても,病変に対して適切な手術が行なわれなかつたら,その効果はあらわれないのは当然である。すなわち,術者の専門的知識,診断能力,決断力も合せた綜合的な能力によつて,結果はきまるものである。

 婦人科手術治療を中心とする領域はOperativeGynecologyといわれる。これには手術術式,適応,術前術後の問題,合併痛,遠隔成績,手術的解剖など手術治療に付随するあらゆる部門を含んでいる。Operative Gynecologyという広い領域の研鑚によつて手術成績は向上するのである。

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緒言

 妊娠時にIleusを合併することは稀で,しかも妊娠時にはIleusの症状が妊娠に蔽われたり通常の妊娠随伴症状と紛れたりして,診断はしばしば困難である。

 妊娠時のIleusは癒着ないし索条による絞扼性Ileusが最も多いが,その他に,妊娠を唯一かつ絶対の発症要因とする妊娠時に特有の真性妊娠Ileusがある。われわれは妊娠2カ月に合併した索条性Ileusと妊娠6ヵ月の真性妊娠Ileusとの2例を経験したので報告する。

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 婦人科領域において悪性疾患のうち一部の早期癌を除いて根治手術とともに放射線療法は不可欠の治療法であり,とくに子宮頸癌III期以上では放射線治療が主療法であることは変らない。また,体部癌,頸部腺癌および卵巣癌に対しても各種の制癌剤とともに放射線療法が併用されている。これらの治療を行なうときに副作用としての造血機能の障害は従来より治療上の問題点として注目され,ことに白血球減少に対して各種の治療が行なわれているが決定的なものはみられない。Cepharanthinは従来より悪性腫瘍治療時に造血機能に対し効果が認められているが,今回その大量静注療法をとりあげて検討してみた。Cepharanthinは1934年に近藤によつて防已科値物Stephania属の"たまさきつづらふし"から抽出したAlkaroidで免疫体産生作用,網内系機能亢進作用,抗Allergy作用,自律神経調整作用および抗Hyaruronidase作用を有するといわれている。今回,当院で入院中の悪性腫瘍患者でTelecobalt照射中の患者に連日Cepharanthin 50mgの静注療法を行ない,その血液性状の変化について検討したので報告する。

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 性器出血は日常診療において,もつともひんぱんに経験する重要な疾患(症状)の1つである。この内,器質的原因によらない,いわゆる機能性子宮出血(以下FUBと略〉はその内でももつとも多いものの1つである。

 FUBの定義に関する検討はこの論文の目的ではないので,ここでは五十嵐の定義「機能性子宮出血とは子宮体内膜からの出血の中,月経と器質性出血(妊娠,炎症,腫瘍,外傷)を除外しえた時,始めて診断される」にしたがつた。もちろん,五十嵐もいつているように,過長月経(8日以上)は本来の月経とは区別し,FUBの一型とした。

基本情報

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臨床婦人科産科
27巻3号 (1973年3月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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