耳鼻咽喉科 53巻9号 (1981年9月発行)

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目でみる耳鼻咽喉科

鼓膜所見とTympanogramの対照沖津　卓二 , 六郷　正曉 , 柴原　義博 53巻9号 , 1981年9月 , pp.614-615

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　症例　1　滲出性中耳炎（小児），4歳。主訴：鼻閉，鼻漏。約半年前から上記症状があり来院。難聴には気づかず。

　〔鼓膜所見〕（図2,3）左右ともに強度の内陥とアメ色（こはく色）をした典型的な所見。vascular striationもあり，左（図2）耳には滲出液線もみられる。鼓膜切開で両耳に粘稠度の大きい貯留液（glue）を証明。

原著

Ultrasonic Nebulizationによる薬剤の分解について川口　洋志 , 大原　昭男 , 藤木　幸雄 53巻9号 , 1981年9月 , pp.617-622

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　I．はじめに

　日常の臨床において，耳鼻咽喉科その他の科で，抗生物質を蒸留水あるいは生理的食塩水に溶解し，ultrasonic nebulizerによりnebulization（以下Unと略する）を行い，霧状にした薬剤を患者に吸入させ，上下気道の感染症等の治療を行うことが最近増えてきている。しかし，抗生物質lincocinをnebulizationしたaerosolを吸入した患者が，頭痛，眩量，嘔気等の症状を呈したことから，lincocinやある種の粘液溶解剤は，Unを行うとその薬剤の一部が分解して硫化物（硫黄化合物）が発生する。臨床症状はその硫化物によるためであるとの報告がある^1〜3）。

　今回筆者らは化学構造式中に硫黄を含む3種の抗生物質について，nebulizationすることで発生する硫化物が何であるのか，Unによる分解に関して以下の実験を行い若干の知見を得たので報告する。

上咽頭癌再発例の検討佃　守 , 玉虫　昇 , 持松　いづみ , 沢木　修二 53巻9号 , 1981年9月 , pp.623-630

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　I．はじめに

　上咽頭癌（nasopharyngeal carcinoma，npc）は台湾を含む中国南部，香港などの住民に多発するという民族的特徴をもつとともに，ウイルス学的研究からは，Old（1966）の報告以来^1），Burkittlymphoma（BL），およびinfectious mononucleosis（IM）と同様に，患者はEpstein-Barr virus（EBV）に対する高い抗体価を有し，また上PW頭癌細胞がEBVを保有し，活性のあるEBVがrescueされたことにより^2），この癌もEBVによって発症するのではないかとの疑いがもたれ，発癌のメカニズムの追求が行われている。

　またこの癌は，呼吸器系における最も予後の悪い悪性腫瘍といわれ，諸家の報告でも5年生存率で25％前後との報告が多い。この癌の自覚症状は発現しにくく（silent area），また直接視診しにくい部位（clinical blind spot）であるため，早期発見が困難で，診断が確定したときには，すでに遠隔臓器に転移しており，治療の時期が失われている例も少なくない。なお臓器転移は放射腺治療中にも，また終了後にも起こり得るわけで，この疾患の予後の悪い最大の原因となっている。それゆえ上咽頭癌は局所的な治療だけでなく，免疫機能などを考慮に入れた全身的管理をも重視しなければならない。

突発性の難聴で発症した聴神経腫瘍—非典型的病像を呈した聴神経腫瘍（その1）吉本　裕 , 岡　良己 , 小寺　一興 53巻9号 , 1981年9月 , pp.631-639

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　I．はじめに

　突発性の難聴を訴える症例に遭遇した場合，「突発性難聴」という診断名の下に対処されていることが多い。しかし，いわゆる突発性難聴という名称は，「特発性」の突発性難聴例に対して用いられるべき診断名である。したがって，突発性難聴なる診断名を用いるに際しては，あらかじめ器質的疾患（「症候性」の突発性難聴）を十分に除外しておくことが必要である。突発性の難聴の中には，種々の原因疾患を背景にして発症した症例が含まれているからである（突発性難聴全体の約20％）。

　「症候性」の突発性の難聴を，「特発性」のいわゆる突発性難聴と区別して，それと正しく診断することは，単に診断上の問題に止まらない。治療方針を決める上からも，予後を推定する上からも重要な事項である。突発性の難聴をきたす原因疾患のひとつとして，聴神経腫瘍が存在する。このことは，知識としては，知られてきている（このような症例に関する報告^6,7）がなされるようになって以来）。しかし，実際の臨床の場においては，このような症例が，それと正しく診断されないで，いわゆる突発性難聴の診断の下に対処されていることが少なくない。

メニエール病症例—純音聴力像の変動とECoG所見平田　哲康 , 野口　高昭 , 奥園　達也 , 関谷　透 53巻9号 , 1981年9月 , pp.641-645

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　I．緒言

　メニエール病の診断に関しては，厚生省特定疾患メニエール病調査研究班による診断の手びき（表1）をはじめ，種々の診断基準が発表されている^1〜3）。典型例の診断は比較的容易であるが，非典型例の場合に安易にメニエール病と診断されることが少なくないと思われる。今回筆者らは，比較的典型例と言えるメニエール病症例を経験し，5年間にわたり追跡できたので，その診断基準を今一度見直すとともに，主として純音聴力検査成績の変動，加えて蝸電図についてその特徴的所見を述べ，若干の文献的考察を加えて報告した。

舌骨上筋群を用いた新声門再建術森満　保 , 高橋　政見 , 松元　一郎 , 岡田　修一 53巻9号 , 1981年9月 , pp.651-655

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　I．緒言

　喉頭全摘出後の音声リハビリテーションに関する問題は臨床的に極めて重要である。

　1970年Arslan and Serafini^1）が音声と鼻呼吸を再獲得させる手術術式を報告したが，その大胆な発想と，彼らが発表した好成績は大きな反響を呼んだ。しかし，追試者の成績は必らずしも満足すべきものではなく，1974年Staffieri^2）が鼻呼吸を放棄して誤嚥に対する変法を報告してようやく一応の評価が得られるようになった。しかしなお誤嚥を100％避けられないのが現状である。

聴原発作と考えられた1症例南　吉文 , 南　吉昇 53巻9号 , 1981年9月 , pp.657-661

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　I．緒言

　純音，雑音などを聞くことにより異常行動をきたし，最終的にはてんかん様発作を生ずる聴原発作（audiogenic seizure）は，動物実験によって，その発生機序などが研究されているが，臨床的な立場，特に耳鼻科領域における報告はあまりみられないようである。今回，筆者らは純音聴力検査中に不快感を訴えたため，種々検索した結果，聴原発作と考えられた症例を経験したので，若干の文献的考察を加えて報告する。

上咽頭にみられた多形性腺腫の1症例弓崎　明輝 , 奥田　稔 , 八木　聰明 , 坂口　幸作 53巻9号 , 1981年9月 , pp.663-666

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　I．はじめに

　多形性腺腫（いわゆる混合腫瘍）は，唾液腺に発生する良性腫瘍として最も頻度が高い。耳下腺はその好発部位であるが，本腫瘍は大唾液腺以外にも口腔底，頬粘膜，口蓋，鼻副鼻腔，咽頭，喉頭，気管支などに発生し，その報告がなされている。しかし，上咽頭を発生母地とした多形性腺腫の報告は極めて少なく，本邦では1例をみるだけである。最近筆者らは，上咽頭に発生した多形性腺腫の1例を経験したので報告する。

スギ花粉症患者の生活環境調査野村　公寿 , 打越　進 , 小松　信行 , 三国　郁夫 53巻9号 , 1981年9月 , pp.667-672

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　I．はじめに

　スギは背から日本に広く分布し，当然花粉の飛散も多かったと考えられる。それなのに，スギ花粉症患者が最近になって著しく増加している^1〜3）のはなぜであろうか。

　今回，花粉の側はさておいて，個体の側に原因があるか否かをさぐる目的で，スギ花粉症に代表される春だけのアレルギー性鼻炎患者にアンケート調査を行った。そして，日常生活の面などで鼻アレルギーのない人に比べて，スギ花粉症の人はどんな特徴を示すのかについて検討した結果を報告する。

鼻腔形態の断層X線撮影による観察奥田　稔 , 坂口　喜清 , 谷垣内　由之 , 坂口　文雄 , 町井　一史 53巻9号 , 1981年9月 , pp.673-677

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　I．はじめに

　鼻の機能は鼻腔形態と密接な関係があるので，鼻科診療にあたっては鼻腔形態の正常化に常に配慮の必要があるのはいうまでもない。鼻腔形態はX線の導入により詳細に検討されているので今さら加えるべきものがないという議論もあろうが，今回筆者らはあえてX線断層撮影法による鼻腔形態の観察を試みた。その理由は，今までの研究は鼻中隔の形態異常，副鼻腔の発育に主眼がおかれ，鼻腔構造の相互関係の検討が不十分と思われたことと，撮影装置の改良によりかつてより観察の精度が向上したこと，コンピュータの利用により推計学的処理が容易になったことである。

咽頭扁桃の細菌学的検索吉田　篤正 53巻9号 , 1981年9月 , pp.679-684

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　I．はじめに

　幼小児の咽頭扁桃は口蓋扁桃と共に成人のそれに比較して大きいのが普通である。この肥大は感染症による場合，あるいはその二次的所産の場合は別として，従来生理的肥大という見方で理由づけられていた。しかし最近は免疫学的に詳細な解析が進んでいる^1,2）。

　扁桃を免疫学的に眺める場合，起因菌としてのいわゆる病原性菌と共に，病原性・非病原性を問わず局所の常在菌も考慮されねばならない。扁桃炎の起因菌については古くから多くの研究がなされているが，現在成書^3）にはStreptococcus（特にβ-Streptococctts）・肺炎球菌・Staphylococcusが主なものとされており，扁桃の常在菌についてはα-Streptococcus・Diplococclts・β-Streptococcus・γ-Streptococcusなどの好気性菌が挙げられる。しかし，ひろく生体内常在菌について，Rosebury^4）は多数の報告をまとめて，人の鼻腔・鼻咽腔・咽頭・口腔における嫌気性菌の常在菌としての優位性を証明しており，鈴木^5）も嫌気性菌の優位を述べているなど，一般には嫌気性菌の方が好気性菌より質・量共に重要であるとされている。

鏡下咡語

ハンガリー印象記—第12回世界耳鼻咽喉科学会議に参加して村上　泰 53巻9号 , 1981年9月 , pp.648-649

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　去る6月21日から28日まで。東欧はハンガリーの首都ブダペストで，第12回世界耳鼻咽喉科学会議が開催された。世界各国から約3,000人が参加した大集会であったが，私もその一員として，共産圏の大都会での国際学会の雰囲気を十分体験しえたと思っている。私自身決して語学に堪能ではないのだが，それでもよく海外に出る方だと思っている。しかし東欧については，10年も以前にほんのわずかユーゴスラビアに滞在したことがあるだけで，直接街を歩き人々と接するのは今回がはじめてといってもよい。だから，見るもの聞くもの全てが新鮮な驚きの連続であった。以下，思い出されるままにその印象を記してみる。

基本情報

耳鼻咽喉科
53巻9号
(1981年9月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0386-9679 医学書院

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