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医療情報に関する待望の書が刊行されたと言っても過言でない。わが国にはこれまで医療情報,とりわけ診療情報の体系的な学問の書はなかったと言ってもよい。いまわれわれ医療界,いや医療界だけではないすべてが情報の渦のなかにいる。とりわけ病院はそうである。今回の本書の出版にあたって,多大な貢献をした編集責任者の大井利夫は,その序論の中で,「ともすると,データは多いが,真に伝えるべき情報の少ないDRIP Syndrome(Data-Rich-Information-Poor Syndrome)に陥っていることはないだろうか」と言っている。そのうえで,「患者の医療への有用性とデータベース化された情報の活用は,診療情報の必要性を表しているとまとめることができるであろう(中略)。『診療情報』の諸問題について現時点における統一した見解をまとめることは意義深いことであり,長年の念願でもあった。その意味では,本書は日本診療情報管理学会にとって夢の実現といえなくもない」と感慨深げに述べている。本書は,まさに夢の実現にふさわしいものとなっていて絶賛に値する。
この日本診療情報管理学会の生みの親でもある日本病院会からは,数多くの診療録についての専門学校や短大などの病歴管理コースで用いるテキスト的なものが出版されており,その多くは病歴室で用いられる実用性の高いハウツーものであった。また,医学書院から古くは『診療録管理の実際』(津田豊和,1966)があり,『診療情報の管理』(拙著;監修,1988)がある。診療録の書き方,POSに関することは本書でも取り上げられているが,同じく医学書院からの日野原重明による名著といわれ今日においても読み継がれている『POS―医療と医学教育の革新のための新しいシステム』(1973),それに続く,『POSの基礎と実践』(1980)は今回の本書の出版に,そして今日の各病院で活躍している診療情報管理士に多大の影響を与えているに違いない。
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