臨床泌尿器科 63巻12号 (2009年11月)

特集 泌尿器科領域の漢方療法―エキスパートに聞く

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要旨 泌尿器科領域として,古くは,排尿困難,浮腫,性機能障害,不妊症などが主な疾患であったと考えられる。臓器としても腎が中心で,腎は,生殖,成長,発育,排尿や水液の代謝,呼吸にも関与する。腎気が不足した腎虚では夜間頻尿となり,腎気の固摂作用(固護し統摂する。すなわち,血を循行させ外溢させない,尿,分泌液,津液などを正常に分泌し,過度に排泄させない)が低下すると腎気不固となり,摂津できないと頻尿,多尿,尿失禁,摂精できないと遺精,早漏などになる。腎精の不足は,性欲の低下,インポテンツ,不妊などを呈する。膀胱は州都の官といわれ,尿を貯蔵し,湿邪が停滞すると,頻尿,尿意促迫,排尿痛,混濁尿,血尿,結石などを伴う。

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要旨 男性排尿障害と漢方療法について,日本東洋医学会のEBM特別委員会から報告された『漢方治療エビデンスレポート2009―320のRCT』において,男性排尿障害について評価を受けた論文および自験例を中心として,前立腺肥大症,過活動膀胱,慢性前立腺炎に対する漢方療法の有用性および問題点について概説した。

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要旨 女性のLUTSの漢方治療では,3つの潜在的原因があると考えて処方を選ぶ。腹圧性尿失禁や骨盤臓器脱の原因は,骨盤底筋群や骨盤底を構成する靱帯の脆弱化や欠損と考え,補気剤と駆瘀血剤で治療する。過活動膀胱の原因には脳や脊髄などの中枢神経と末しょう臓器・膀胱の老化による機能障害があると考え,補腎剤で治療する。膀胱痛症候群/間質性膀胱炎の原因には膀胱上皮の脆弱性があると考えて,水滞治療薬と冷え治療薬を用いる。女性性機能障害に関しては,性的意欲障害やオルガズム障害には補気剤や理気剤を用い,局所反応障害には補腎剤を用いる。性交疼痛症には,炎症がある場合には黄連含有方剤を,性的未熟がある場合は建中湯類を用いる。

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要旨 LOH症候群ガイドラインが公表されて,男性更年期障害患者のうちで男性ホルモン低値の患者に対するホルモン補充療法は一定の方針が示されたが,男性ホルモン値が正常な患者に対する治療法はいまだ統一されたものはないのが現状である。本稿では,究極のテーラーメイド医療ともいうべき漢方療法の,男性更年期障害治療における現状を文献的に考察するとともに,筆者らの施設での治療の実際について概説する。

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要旨 男性不妊症に対する漢方療法について概説した。最初に,男性不妊症に比較的多く処方される1.桂枝茯苓丸,2.柴胡加竜骨牡蛎湯,3.桂枝加竜骨牡蛎湯,4.補中益気湯,5.牛車腎気丸,の5つの処方の適応などに関して解説した。また,これらの5処方を用いて妊娠が成立した症例の治療経過を提示した。

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要旨 泌尿器科医が頻繁に遭遇する薬物療法の副作用として,前立腺癌内分泌療法によるhot flush(HF),頻尿治療薬(抗コリン薬)による口腔内乾燥,BCG膀胱内注入療法後の排尿痛がある。それらに対して,ときに漢方薬が有効な場合がある。具体的には,HFに対しては桂枝茯苓丸,当帰芍薬散,加味逍遥散など,口腔内乾燥に対しては麦門冬湯,人参養栄湯,白虎加人参湯,清心蓮子飲など,BCG膀注後の排尿痛に対しては猪苓湯,猪苓湯合四物湯,五淋散,竜胆瀉肝湯などが報告されている。本稿では,それらの副作用の頻度や出現機序,さまざまな対処法も含め,漢方薬の有用性を中心に概説する。

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 前立腺癌検出率向上のための試みの1つとして,6か所以上の生検本数の増加が挙げられる。従来の系統的6か所生検と,10か所生検とを比較し,癌検出率を検討した。結果は,6か所生検群と10か所生検群において,癌検出率には統計学的有意差を認めなかった。しかし,PSA値別に4.0ng/ml以下,4.1ng/ml以上10.0ng/ml以下,10.1ng/ml以上の3つのサブグループに分けて検討したところ,グレイゾーンのサブグループにおいて癌検出率に統計学的有意差(p=0.0102<0.05)を認めた。また,10か所生検における癌の局在の検討では,癌が検出された233症例中40例(17.2%)は6か所生検では癌が検出できなかった可能性が示唆された。

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 症例は64歳,女性。近医CTで膀胱三角部から子宮にかけて腫瘤を認め,当院へ紹介。TUR生検を行い,病理診断はMucosa-associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫であった。MRI,FDG-PETで骨盤内リンパ節転移を認め,膀胱原発MALTリンパ腫,臨床病期ⅡEBと診断。リツキシマブ併用CHOP療法を3コース施行後,膀胱部へ放射線治療(41.6Gy)を行いCRが得られた。

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 73歳,男性。膀胱癌に対しTUR-BT術後,BCG(コンノート株)膀胱内注入療法を施行。4回目の注入後に,38℃の熱発が3日間持続し,入院となった。画像にて異常所見を認めなかったが,結核感染を疑いINH 400mg/日の投与を開始した。その後も,炎症所見と微熱が持続したため,4週間後にGaシンチグラフィ,胸部CTを施行し,粟粒結核と診断した。治療開始4週間後のCTで肺病変の軽快を確認し,退院となった。

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 症例は47歳,女性で,高度肥満を有し,両側尿管結石による尿毒症をきたし,血液透析療法施行および腎瘻造設後に急性肺塞栓症(以下,aPE)を併発した。CTにて両肺動脈に塞栓を認め,血栓溶解療法を施行した。発症後3週目のCTでは血栓の消失を認めた。患者は,肥満,長期臥床,中心静脈カテーテル留置などの危険因子を有しており,aPEの予防を目的にヘパリンを早期より積極的に使用すべきであったと考えられた。

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 症例は,95歳,男性。真性包茎。陰茎包皮先端部全周性に一部にびらんを伴う紅色結節あり。生検施行しBowen病と診断。環状切除術の要領で腫瘍切除術を施行。病理組織標本では真皮内への浸潤像がみられ,Bowen癌と診断した。HPV免疫染色は陰性であった。全身検索にて転移像はみられず,経過観察中である。過去10年間の本邦報告例の集計では,外陰部に生じたBowen病は浸潤癌になりやすく,注意が必要と考えられた。

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 症例は36歳,男性。数か月前より左陰囊が腫大し,徐々に硬化してきたとのことで当科を受診した。腫瘍マーカーは正常であったが精巣腫瘍と判断し,高位除睾術を施行した。病理組織診断の結果,精巣腫瘍の組織型としては非常に珍しいカルチノイドであった。

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 内科レジデントマニュアルが第7版として3年ぶりに改訂された。昭和59年に初版が世に出て以来,長期にわたり好評を得ている内科マニュアルである。初版時には聖路加国際病院内科レジデント医師によって執筆陣が構成されたが,今回の最新版の大幅な改訂でも多くの先生方が執筆作業に継続して参画されている。そのためか,初版以来続いているよい特徴は維持されており,白衣のポケットに収まるコンパクトサイズで読みやすく,主として内科領域のコモンな症候や病態,疾患が扱われている。改訂が行われたことによって,日進月歩の内科領域の最新治療についてフォローできる内容となった。

 改訂版を通読してみて,新たに評価できる点がいくつかあることに気づいた。まず,多くの治療項目では治療内容における個々のレジメンについて,妥当性のレベルが明示されている。エビデンスに基づくガイドラインなどでのコンセンサスがどの程度得られているかどうかがひと目でわかるように★印の数でマークされており,EBMを重視したプラクティスが適切な診療とみなされる今日,治療内容の選択のガイダンスとして大いに役に立つと思われる。

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 JIMに連載されていたときから注目していた記事が,連載時より格段にバージョンアップして,1冊の本にまとめられた。タイトルは「白衣のポケットの中」,副題が「医師のプロフェッショナリズムを考える」である。そして,本書のコンセプトは,裏表紙の次のフレーズに凝縮されている。

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 驚くべきタイトルの単行本が上梓されたものである。2009年7月に京都で開催された日本心電学会と日本不整脈学会の合同学術集会の書籍展示で,最大部数を売り上げたようである。不整脈全体を網羅するものばかりでなく,個々の不整脈を扱った単行本はこれまでにも上梓されている。例えば心房細動,WPW症候群,Brugada症候群などである。これらの不整脈はそれなりにまとまった疾患として認識されており,単行本としても違和感はない。

 だが,「プルキンエ不整脈」という疾患概念にはなじみがうすい。左脚後枝に起源を持つベラパミル感受性心室頻拍をまず思い浮かべるが,その他の心室性不整脈については,いわれてみればなるほどプルキンエ線維が関係しているものもありそうに思われる。このような古い頭に一撃を加えるほどのインパクトを本書は持っている。著者の野上昭彦先生,小林義典先生は心臓電気生理の臨床でこれまで多くの業績を挙げてこられたが,特にプルキンエ線維が関連した心室頻拍や心室細動の研究に関しては第一人者である。

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編集後記 大家 基嗣
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 ときより立ち寄る丸善日本橋店に,文庫本が平積みになっていました。タイトルは『思考の整理学』(ちくま文庫)。説明書きが添えてあって,「東大・京大生協で去年最も売れた本。1986年以来の超ロングセラー」と書かれていました。思わず手に取って序文を読み,面白そうなのでその場で購入しました。著者はお茶の水女子大学名誉教授外山滋比古氏です。思考という過程を学問的に追求した著書ではなく,どちらかというと気楽なエッセイです。ベストセラーである理由は,卒業論文に必要な普遍的な考え方が述べられているためだと思いました。

 同感できるところと同感できないところがありましたが,同感できる箇所には,私が日頃から考えてはいるがメッセージとして伝えきれないことが明確に表現されていました。例えば,論文を書こうとしている学生に,「テーマはひとつでは多すぎる。少なくとも,二つ,できれば,三つ持ってスタートしてほしい」。この逆説的なメッセージは,受け取り手によって印象が変わると思いますが,同感できる方が多いのではないでしょうか。研究を始める若い医師に,私は先輩の一研究者として,研究はいくつものテーマを並行して行うようにアドバイスしています。ひとつのテーマで研究を行い,長い年月をかけてもそれが上手くいかなかった際のショックは大きく,さらに研究を続けていく意志を失う可能性があるからです。だめと思ったらみんなで相談してさっさと止める柔軟性が必要な気がしています。「テーマはひとつでは多すぎる」というメッセージに対して,ピンとくる人はピンと来る,と著者は述べていますが,私があえて言葉をつけ加えさせていただけるなら,「ひとつでは『負担が』多すぎる(重すぎる)」でしょうか。

基本情報

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臨床泌尿器科
63巻12号 (2009年11月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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