病院 77巻11号 (2018年11月)

特集 働き方改革の行方

巻頭言 渋谷 健司
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 医師の働き方改革が佳境に入ってきた.本特集の武井論文では,厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」から,宿日直や在院時の自己研鑽の扱いや応召義務など,主要論点について最新の状況をまとめていただいた.同検討会では,健康管理という観点から一定の時間外労働規制はやむを得ないという労働側の意見と,医師の特殊性を踏まえた対応が必要であるとする医療側との意見が対立している.特に,医療現場からは,医師数が足りない中で労働時間の短縮は困難であり,働き方改革は医療の崩壊につながるといった声を多く聞く.

 しかし,今こそ「長時間勤務は当たり前,自己研鑽も診療の合間や病院内に残って勤務時間外に行う,呼び出しがかかればその都度対応する,その結果,長時間勤務がさらに続く」という悪循環を断ち切り,医療の構造改革と生産性の向上を図るチャンスである.そのためには,現場の地道な業務の効率化と経営トップの強い意思が求められる.

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●労働基準法改正により,罰則付き時間外労働上限規制が行われることとなった.

●医師は,施行期日の5年後まで適用が猶予され,規正の具体的な在り方等について,「医師の働き方改革に関する検討会」において議論が行われており,平成31年3月までに結論を出す予定である.

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●少子高齢化,財源不足,ライフスタイルの変化が進む中で,自助を前提に真に困っている方を助ける医療を目指して,医師自身の働き方改革に注目が集まっている.

●医師の働き方改革として「テクノロジーの活用」「女性の働き方改革」「多様なキャリア形成」の3つのポイントがある.

●医師の働き方改革により,医師の役割はコミュニケーション重視となり,他業種と連携した医療業界への関わりなどが進むと考えられる.

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●研修医を含め,勤務医は労働法上の労働者である.

●宿日直勤務は労働時間である.ただし,労働実態によっては,断続的労働として労働基準法上の労働時間の上限規制等から免れうる.

●勤務医の実質的な労働条件が急速に悪化した結果,もはや,勤務医は限界を超えている.これ以上,現場に我慢を強いることは許されない.早急な対策が求められる.

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●株式会社電通は2016年11月より違法労働時間をなくすための社内改革に取り組み,RPAを導入した.

●業務の削減ではなく,まず工程の短縮化を目指し,現在,600ロボで月間16,000時間の時間創出に成功した.

●業務を専門家に集約するCoEへの展望を得た.単純作業をRPA化することで,人間がより必要とされる業務に集中することが可能であり,改革も促進された(結果的にマインドセットの切り替えと同じ効果があった).

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●現行の医療制度と期待される働き方の矛盾を乗り越えて,働き方改革を成功させるためには,伝統的な医師の価値観を意識変革する必要がある.

●医療機関は,画一的な診療体制ではなく,診療科の特性に合わせた体制を導入できるようにして,管理者のリーダーシップと現場からのボトムアップで働き方をデザインしていく.

●完全単独主治医制から複数主治医制への転換は必須であるが,医療機関や診療科の状況によって転換のタイミングは異なる.

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医師にも働き方改革の波が押し寄せている.

だが,医師不足のまま労働時間を短縮すれば医療の崩壊につながるといった懸念も根強い.

果たしてそれは本当だろうか.

他業界の働き方改革の成功と失敗を熟知する白河氏にその本質をうかがう.

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要旨

 都道府県立病院が2014年4月〜2017年5月に労働基準監督署から受けた是正勧告および改善指導(以下,是正勧告等)と是正報告および改善報告(以下,改善報告等)を調査した.その結果,49施設が是正勧告等を受けていた.指導条項としては,労働時間および法定時間外,休日および深夜労働に対する割増賃金に関する違反が多いことが判明した.医療機関側からの是正報告では,労働時間の適切な把握や勤務体制の見直し,職員への注意喚起,安全衛生委員会の活用などがあった.

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 千里リハビリテーション病院(大阪府)には,体育館のようなリハビリ室がない.通路や階段,外気に触れる渡り廊下など,空間の全てが普段の生活に戻るための練習の場になっている.徒歩15分のスーパーやカフェへの往復もリハビリテーションの一環だ.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・47

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 葉山ハートセンターは,重度の心臓疾患の外科手術による治療を目的として,循環器外科とその後方病床に特化した心臓病の最先端治療センターとして開設された.開設当時は,それまでの病院建築の典型を払拭した敷地選定や建物形状,質の高いインテリアデザインや眺望との一体感など「病院らしくない病院」は話題を集め(図1),心臓手術を受ける患者に配慮した環境が高く評価され,グッドデザイン賞金賞(2000年),日本医療福祉建築賞(2001年)を受賞している1)

連載 事例から探る地域医療再生のカギ・24

志摩市民病院の医療再生 伊関 友伸
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■何が問題だったのか

①若年層を中心に人口減少する市

 三重県志摩市は,三重県の志摩半島南部に位置する人口約5万の自治体である.市全域が伊勢志摩国立公園に含まれ,日本有数のリアス海岸美を誇る英虞湾に約60の小島が点在するなど自然豊かな地域である.2016年には,伊勢志摩サミットが市内の賢島で開催された.

連載 事例と財務から読み解く 地域に根差した中小病院の経営・12

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 2013年,石橋総合病院(以下,同院)は経営難を理由にJA栃木厚生連から医療法人社団友志会に事業譲渡された.当時の同院は築40年以上が経過し,老朽化と狭隘化といった問題も抱えていたほか,譲渡に当たっては職員の雇用維持も条件となっており,諸規程の調整や職員間の融和など課題は山積みだった.

 しかし,譲渡から1年後には病床利用率が約10ポイント上昇,4年後には移転新築をし,外来患者数や手術件数といった実績も飛躍的に伸びた.JA栃木厚生連時代(以下,旧院)の職員もほとんど退職することなく,経営は順調である.

連載 「働き方改革」時代の労務管理・6

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■はじめに:「働き方改革」時代の労働条件の変更の重要性

 「働き方改革」が叫ばれる中,多かれ少なかれ自院の労働条件や適法性を見直されている病院経営者も多いと思われる.その中で,より効率的かつ実態に即した労務管理を行うために,これまでの連載でご紹介した制度(労働時間や管理監督者制度,固定残業代制度や変形労働時間制度など)を導入または変更するに当たっては,従来の労働条件の変更を伴いうるため,労働条件の見直しに着手される場合も多いであろう.

 もっとも,労働条件は労働契約の内容であるため,変更内容の合理性はもとより,変更のための手順にも,当然のことながら,一定の法律上の制約が存在している.

 特に,労働者の不利益に労働条件を変更する場合には,労働者の同意の取得の前提となる必要かつ十分な情報提供や,変更の必要性を十分吟味しなければ,労働条件の変更が無効とされる危険が大きく,気付けば未払賃金が山積していたなどという事態に陥りかねないのである.

 そこで,本稿では,労働条件を変更するためにどのような方法や制限があるかを確認・整理することで,実際に労働条件を変更する際の法的有効性を担保する方法について解説したい.

連載 多文化社会NIPPONの医療・14

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 医療通訳体制をどうするか,院内資料や表示の翻訳をどこまでやるべきかを悩んでいる医療機関は多い.外国人患者がそんなにたくさん来院しているわけではないのに,どこまでお金をかけることができるかという現実的な問題がある.厚生労働省や自治体が,医療通訳やコーディネーターの人件費,院内表示の多言語化を推進する目的で半額を助成する補助事業を公募しているが,裾野を広げていくためには,予算だけでなく現場レベルでの工夫の共有なども必要である.本稿では,自動翻訳機器やアプリを含めた通訳・翻訳について,筆者の試行錯誤をもとに紹介する.

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病院
77巻11号 (2018年11月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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