病院 60巻10号 (2001年10月)

特集 医療連携と病院

医療連携の理想像 寺崎 仁
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 構造改革を声高に叫んだリーダーを,国民は先の参議院選挙で信任したことになるが「聖域なき構造改革」とは,医療や福祉など弱者への公的な保障を含めて大幅に見直すことに他ならない.いわゆる「骨太の方針」には,「豊かな生活とセーフティネットを充実するために」と題して,保険者機能強化を謳い「老人医療費を経済の動向と大きく乖離しないよう抑える」と書いてある.それも「おそれず,ひるまず,とらわれず」実行するとしており,平成14年度予算の概算要求基準でも,老人医療費を人口の高齢化に伴う当初見込みの自然増1兆円が7,000億円に減額され,構造改革による痛みの内容が次第に明らかになりつつある.

 医療サービスの効率化が必要なことは多くの人が理解しているが,自由競争を大胆に導入した構造改革を唱える世にいう識者と呼ばれる人々の医療についての発言には,やはり戸惑いを隠せないというのが正直なところである.

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 近年,特定機能病院において医療連携の推進および強化が図られている.本稿では東京医科大学病院(以下,当院)における医療連携室の業務内容につき具体的に述べてみたい.

 平成5年12月,当院が特定機能病院として認可された翌年11月医療連携推進室が設置された.これが当院における医療連携のスタートである.室長は副院長が兼任,その他の室員もすべて兼任であった.しかし,今後の医療連携の重要性や時代のニーズに応えるため,新しい体制の医療連携室が平成11年11月にスタートした.すなわち部屋の新設と専任職員の配置である.室長(医師)の他に3名の職員が専任として配属された.医療連携室に専任医師がいるという例は他になく,画期的なことであった.

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 秋田県成人病医療センターは,昭和59年,旧県立施設を財団法人が運営という公設民営理念と県医師会の事業参加を旗印に発足した.以来,あくまでも登録医制度を中心に,紹介型・開放型の2次〜3次医療を展開してきた.平成12年2月,2次医療圏を対象とする地域医療支援病院となったが,県保健医療計画の第3次救急医療機関として,より広域的にセーフティネットの機能も果たしている.

 本稿では,当センターの現況,ならびに地域医療連携の課題を述べる.

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 弊誌編集室では,2001年2月1日現在の資料をもとに,地域医療支援病院の承認を受けている医師会立病院18施設に対し,各病院の現況に関するアンケートを行った.ここでは,その中で回答のあった10施設について紹介する.

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名古屋第二赤十字病院の概要

 当院は名古屋市東部の丘陵地に立地し,国の救命救急センターに指定されている急性期型・高度医療型の地域中核病院である.本年6月には,災害に強いエネルギーセンター,物流センター,1次から3次まで対応可能な救急外来,手術室,ICU(集中治療部)・熱傷センター・HCU(救急治療センター)・CCU(循環器疾患集中治療部)・SCU(脳卒中集中治療部)など,合わせて100床の病棟部門を備えた新救命救急センター棟が完成した.

 その他の特殊部門として,NICU(新生児集中治療部),腎臓病総合医療センター,地域医療研修センター,国際医療救援部などを併設,県の地域災害医療センター,地域周産期母子医療センターなどに指定されている.病床数は結核病床の30床を含めて835床,平成12年度の病床利用率95.4%,一般外来患者数2,134名/日,救急外来受診患者数36,047名/年,救急車受入台数4,599台/年,初診患者紹介率33.8%,平均在院日数17.0日と名実ともに急性期型病院である.常勤医師は研修医を含めて196名,看護婦は642名,その他職員を合わせた常勤職員総数が1,254名の大所帯である.

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 わが国では2000年度より,高齢社会に対応する社会的整備の一つとして,公的介護保険制度が施行された.また,近年の診療報酬改定にも見られるとおり,病院の機能分化促進が図られており,これに伴い病院の受け皿整備がますます要請される方向にある.さらに,高齢化の進展につれて,介護・福祉ニーズを持って退院するケースが増える傾向にある.こうした状況から,今後はシームレスケアに対するニーズが高まることは避けられないと考えられる.

 病院サービスと介護・福祉サービス間のシームレスケアを実効あるものにするには,所有形態かネットワーク形態かを問わず,介護施設や在宅サービスなどの整備が欠かせないが,これだけでは不十分で,各施設間の連携(ケア連携)よろしきを得て初めて達成されるものである.本稿では,各施設の整備状況といったストラクチャーではなく,シームレスケアの第2の要件であるケア連携(プロセス)について述べる.

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□療護センターの開設

 本年7月初め岐阜県美濃加茂市にある特定医療法人厚仁会木沢記念病院で自動車事故対策センターの「中部療護センター」が開所された.これは自動車事故による脳損傷によって重度の後遺障害が残り,治療と介護を必要とする患者が,一定の要件のもとで入院する専門施設.1984年に千葉市に最初の療護センターが開設され,仙台(東北療護センター),岡山(岡山療護センター),そして全国で4番目の施設として開設された(民間病院委託では初).本センターは中部地方,関西地方および北信越地域の患谷さんが入院する施設と位置づけられている.

 このセンターの開設は,これまで地域の中核病院として急性期医療に取り組んできた木沢記念病院にとって,広域的な医療ニーズに対応するという点で,病院の今後の発展に大きな意味を持つことになろう.

HOSPITAL INDEX

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〔総合周産期母子医療センター〕

(平成11年6月28日,児発第530号より抜粋)

 ○総合周産期母子医療センターの機能〜相当規模の母体・胎児集中治療管理室を含む産科病棟及び新生児集中治療管理室を含む新生児病棟を備え,常時の母体及び新生児搬送受人体制を有し,合併症妊娠,重症妊娠中毒症,切迫早産,胎児異常等母体又は児におけるリスクの高い妊娠に対する医療及び高度な新生児医療等の周産期医療を行うことができる医療施設/地域の周産期医療施設からの搬送を受け入れ,周産期医療システムの中核として地域の各周産期医療施設との連携を図る/周産期医療情報センターとしての機能を有し,他の周産期医療施設の医療従事者の研修医を行う.

○施設数〜3次医療圏に1か所(複数設置は可)

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 医療財政の悪化を背景とした診療報酬抑制策の下にあって,多くの病院は厳しい経営状況におかれている.こうした中,病院界において診療科別採算管理(診療科別原価計算,注1)などの会計管理手法による経営管理にも期待が寄せられている.また社会一般からは,公共的サービスを提供する機関として,病院は経営状況を会計的にしっかりと把握し,外部に報告するとともに,会計情報を基に経営を安定させ医療サービスを継続的に提供しつづけることが期待されている.

 そこで筆者は,今後,病院界に会計管理を普及・定着させるための研究の第一歩として,民間病院における会計管理実務の現状をアンケート調査により定量的に把握することを試みた.「部門別原価計算を試みる病院が最近増えてきた」といった話は,筆者が実施してきたインタビュー調査などでもよく聞かれるが,具体的にどの程度の割合の病院で部門別原価計算などが実施されているのか,また病院属性により会計管理実務にどの程度違いがあるのか,は今まで明らかにされたことがないからである.

戦略的病院経営の勧め・1

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 今日,日本の医療供給体制は大きな転換期にある.人口の高齢化と疾病構造の変化により,病院機能も大きく変貌を迫られている.病院経営者にとっては日々の運営が苦しいばかりでなく,長期的な展望に基づいて身近な環境を分析し,経営方針を決める必要に迫られている.医療の大変革期の今こそ,戦略的経営が求められるのである.そこで本連載ではこれから5回にわたり,病院経営における戦略決定プロセスについて検討する.

病院管理フォーラム Hospital Administratorへの道 part3・10

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⦿医療法人白十字会の現状(背景)

 当法人の概要(表)であるが,時代と行政の動向を睨みながら地域ニーズに応えることができるよう整備を行ってきた.

 現状を総括すれば約20年間の拡大・拡張路線から,それぞれの施設機能の充実をはかる「量から質」への転換期にあると位置づけることができる.

病院管理フォーラム 看護管理=病院のDON・10

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 ⦿職務満足とストレス

 1950年代,心理学者のハーズバーグは,職務満足要因として「仕事の達成感」,「同僚や上司からの承認」,「やりがいのある仕事」,「業務上の責任」,「昇進や自らの成長」があり,逆に職務不満足要因には,「組織の方針や経営」,「管理者の質」,「給与や労働条件」,「職場内の人間関係」があることを明らかにした.前者は「動機づけ要因」,後者は「衛生要因」と名づけた.職務満足要因は積極的職務態度に影響し,職務不満足要因は欠乏すれば不満につながるが,充足しても積極的職務態度に効果を持たないことを意味する.

 ハーズバーグに端を発する一連の研究は,心理学や経営学ではあまりに有名であるが,彼らの調査対象に看護婦が含まれていたことは重要であろう.なぜならば,職務満足とストレスは背中合わせの存在であり,看護職にとって職務不満足要因は,ストレス要因そのものであるからである.こうなると,院内の職務不満足要因を徹底的に解消することが院内のストレスを少なくすることになる.

ボランティア:住民に支えられて—諏訪中央病院・10

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 今,日本では「癒し」という言葉が流行っている.このブームをつくっているのは,われ先に癒されたい,自分さえよければという箱庭的でわがままな「癒し」のような気がする.ヒーリンググッズやヒーリングミュージックが街に溢れ,ヒーリングセラピーの名を借りた人格改造セミナーが,たくさんの人を集めているらしい.ぼくは人間のつながりの中で,お互いが癒されていくプロセスが大切だと思っている.僕らの「病コン」は人と人のつながりの中で始まった.

 「病コン,やってみませんか」.11年前,東京芸術大学名誉教授で音楽評論家の畑中良輔氏より突然の申し出があった.

癒しの環境

こどもに聴く 藤井 あけみ
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 もしもあなたが「おやゆび姫」になったなら,世界はどう変わるでしょう.花びらは香りのよいベッドになるでしょうか.草むらのばったやありはどう見えるでしょうか.私たちが彼女と同じようにその世界を味わうことは不可能でしょう.どんなに想像力を駆使してみても限界があります.私はこれがおとなが「こどもにとっての癒しの環境」を考える際に踏まえるべき大前提ではないかと考えます.

 ですからこどもにとっての癒しの環境の考察は,「これまでの小児病棟における生活環境がおとなの基準で考えられてきた」ことへの自覚から始められなければなりません.おとなは往々にして,こどものために自分がしていることは絶対によいことだと信じています.しかし,現実はこどものほうが気を遣って我慢したり,言いたいことがあっても言えない場面が多いのです.

連載 事例による医療監視・指導・21

結核感染の防止 桜山 豊夫
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 結核予防週間も終わりましたが,最近結核の院内感染が問題になる例や,医療従事者の結核感染が話題になることが多くなってきました.本号では結核を巡る問題について考えてみたいと思います.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第84回

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 この十数年間,国内の医療施設の中心的話題は高齢者を対象とした医療施設,いわゆる老人病院や療養型病床群のあり方であった.そうした中で急性期医療施設に目を転じても,病棟における患者の生活環境の重視が中心的課題であり,急性期医療の提供に関する建築的話題が少なかったといえよう.

 ところで近年,入院部門の平均在院日数が急激に短縮化する中で,入院しながら行われていた治療行為が数多く外来で行われるようになった.内視鏡による治療やがん患者に対する化学療法などがそれである.このような傾向の延長線上に,まだ国内においては事例が少ないが,外来において行われる手術,いわゆる外来手術(一般には「日帰り手術」と呼ばれることが多いが,手術日に来院して手術を受けた後に帰宅する場合ばかりでなく,入院する場合もあるので本稿では「日帰り」ではなく「外来手術」と称する)がある.

医療経営の総合的「質」の検討・10

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 2001年5月6〜9日の4日間,ノースカロライナ州シャーロットタウンで,アメリカ品質学会第55回年次大会(American Society for Quality 55th Annual Quality Congress;ASQ/55th AQC)が開催された.参加者は50か国より約3,000名といわれている.

 セッション数22,発表件数84件.内ヘルスケア分野が12件と最も多く,教育分野7件がこれに次ぐ.これは「マルコム・ボルドリッジ国家品質賞(Malcolm Baldrige National Quality Award;MBNQA.1987年にレーガン大統領のサインで制定)」のヘルスケア,教育分野の審査基準が1998年に制定されて,この分野に関心が集まってきているとともに,ヘルスケア分野については1999年12月,クリントン大統領とその諮問グループが「医療エラー低減を通じた患者安全改善計画(Plans to Improve Patient Safety in the United States through Medical Error Reduction)」の検討中にInstitute of Medicine (IOM)より提出された報告書,「人間は過ちを犯すものである(To Err is human)」の発表が大きな影響を与えたものと考えられる.

医療従事者のための医療倫理学入門

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〔ケース〕

 医学研究者Nが,肺がんに対する新しい抗癌剤臨床治験(phase 3)の研究プロトコールを考案中である.プラセボ単独使用を含む無作為割り付け二重盲検対照試験を発展途上国Aで行いたいと思っている.A国は貧しく,国民の多くは肺がんになっても全く化学療法を受けていなかった.また,今まで他国の研究者によって行われたA国での研究を見てみると,人々の研究参加を含めた多くの重要事項が共同体の長の裁量で決められており,「インフォームドコンセント」もすばやく取得されていた.さっそくNは研究プロトコールを仕上げにかかった.

 このように,A国でプラセボを対照薬とした臨床研究を実施することに倫理的な問題はないだろうか?

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 当院は280床を有する病院で50床のリハビリテーション病棟(以下,リハ病棟)を有し,脳卒中の回復期の患者を中心に診療している.平成10年6月より,診療報酬改正に伴い在院日数60日以内での運営を推進してきた.そのことにより生じた現状および問題点について検討したので報告する.

琉球弧から・10

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□自宅の病床化

 ある医師が在宅診療を主とした家庭医として開業する.1日10名の患者を往診し,2週間ごとの定期診療を依頼され,内服薬処方と栄養指導,リハビリテーションをすれば,1か月間に延べ100名の患者を診察できる.そのような患者が各地で増えれば,一般病床の需要は大幅に減る.例えば,千名の開業医が1か月におのおの100名の在宅診療をすれば,10万床削減できる計算になる.

 先進7か国の中で,際立って長いといわれる在院日数を短縮し,社会的入院を解消する最後の切り札は,かかりつけ医による在宅診療,すなわち「自宅の病床化」ではないだろうか.

基本情報

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病院
60巻10号 (2001年10月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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