病院 60巻1号 (2001年1月)

特集 IT革命と病院

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 IT (情報技術)による社会の変化はどの程度の規模になるのだろうか.バイオテクノロジーが本格的に成果を出すまでの21世紀初頭の間は,ITがあらゆる技術革新の中心になると思われる.その影響は18,19世紀の産業革命に匹敵するという人もいるが,まずは,過去の情報技術がもたらした社会変革と比較してみよう.

 人類史で最大の情報革命は文字の発明であった.文字によってわれわれは,情報を記憶するだけでなく記録することが可能になり,大量の情報を正確に扱えるようになった.また,文章でものごとを表現するために論理性が発達した.文字は単に優れた表現手段であるだけでなく,われわれの認知や思考の方式を変えたのであった.

IT革命とこれからの医療 大江 和彦
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 IT (information technology;情報技術)の進展と普及によって,いろいろな業種や分野でこれまでの基盤的な枠組みが大きく変革しつつあるのは周知のとおりである.それでは,具体的に何が変わろうとしているのかと問われれば,確かにコンピュータが増え,これまで書類でやりとりしていたことが電子メールですむようになってはいるが,革命といわれるほど根底から変革しているようにも思えない人も多いのではないだろうか.ここでは,いわゆるIT革命とまでいわれる変化のうねりが日本の医療にどのような影響を与えるかについてなるべく客観的に解説したい.

「eヘルス」と病院経営 江口 成美
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 医療にIT革命の波が押し寄せている.米国ではeヘルス熱が相当なレベルで,1999年初頭以降,医療サービス関連の学会は必ずといってよいほどテーマに取り上げている.時期的には米国においてマネジドケアが定着し,言葉自体に新鮮味を欠いてきた頃でもある.eヘルスがマネジドケアに代わる新しい「流行語」になっているかのようだ.eヘルスに大きな期待をかける人は多いが,医療が抱える様々な課題を解決してくれる救世主となり得るだろうか.本稿では米国におけるeヘルスの現状を「病院経営」という観点から概観し,日本における可能性と将来を予測したい.

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 医療消費者,つまり患者に対して,インターネットを利用し,医療関係者がどのような方法でどのような情報を提供していくべきか,これは今後,社会において大きな問題になることでしょう,インターネット先進国のアメリカでも,大きなプロモーションをしているホームページはありますが,成功事例とはいえないようです.一般向けの相談をしているホームページには確かにアクセスは多いのですが,医療レベルとしては低い内容の相談になりがちです.その結果,病院などでの実際の臨床には妨害になるという問題が浮上しています.「あるホームページに,こういうことが書かれていたのですけれども」と患者が医師に質問することが増えているといいます.しかし,参照したホームページではしっかりした相談がなされていないので,実際には混乱を来しやすくなっていると聞きます.

 保険制度の異なる日本においては情報公開に対する考え方も異なるので,この問題は日本独自の問題として考える必要があります,筆者は,済生会中央病院で糖尿病外来の医師を続けながら,また一方では,ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社というインターネット接続プロバイダーの中で健康医療関連のプロジェクトを指揮しているという立場から,今後の医療消費者への医療情報の提供の問題点について考察してみます.

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 情報技術(IT)の飛躍的発展が,医療消費者たる患者の行動,思考,態度を一変させようとしている.病院側が医療情報開示,患者教育,医師教育などの課題を解決する体制を固める前に,目覚めた患者が情報開示と医師啓蒙になだれをうって押し寄せているのだ.

 私事になるが,筆者は,米国に住んでいたときに妻が白血病と診断され,患者家族として闘病をした経験がある.ニューヨークのスローン・ケッタリングがん研究所とシアトルのフレッド・ハッチンソンがん研究センターでの妻の闘病は13か月にわたった.筆者たちは,多くの医療関係者にたくさんの質問をし,インターネットで情報を収集した.そして,それに基づいて治療選択を行おうとした.

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 岡山県北部の医療の中核を担ってきた津山中央病院が,津山市郊外に新築,移転した。今回の移転は,旧国立療養所津山病院の移譲を契機に進められたもの。移譲されたのは平成9年12月で,津山中央病院東分院(250床;一般110床,療養型90床,結核50床)として運営されてきた.その後,同敷地内に新病院の建築を進めてきたが,平成11年12月に竣工.津山市内二階町にあった津山中央病院の機能を統合し,津山中央病院と名称を変更して再発足した.同時に旧津山中央病院は津山中央記念病院へ名称を変更(病床数を90床に減床),2年後の開院に向けて新築が進められている.

HOSPITAL INDEX

エイズ拠点病院・7

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医療事業経営のための管理会計的資料の紹介と検討—CHWSCより

 CHWSCからは,訪問前にも「1998年度年次報告書」(AnnualReport 1998)および「1998年度財務報告書」(Financial Report 1998),その他の資料の提供を受けていたが,訪問時にも既述のような説明資料に加え,内部管理に活用されている実際かつ最新の管理会計的諸資料を提供された.

 それらは,筆者のような管理会計研究者からみれば(理論的には)必ずしも特段に珍しいものというわけではないが,米国においてもこうした内部管理資料がオープンにされることは多分にまれとみられる.また,わが国の医療界においては,内部管理資料はおろか上場企業などの民間企業が通常実施している財務諸表の開示すら不十分な実情にあることなどに照らせば,こうした資料の紹介自体に一定の意義があると考えられる.その意味で,提供された管理会計的諸資料のいくつかを以下に紹介し,若干の検討を試みることとする.

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わが国におけるへき地医療対策の流れ

 過疎対策法,離島振興法,山村振興法などの法律の適応される地域を一般的に「へき地」と呼ぶ.「へき地」は差別用語だとして,「地域」と呼ぶような向きもあるが,やはり「へき地」のほうがわかりやすい.日本には数多くの島々,そして急峻な山々が多い,これらの作り出す厳しい地形で地域が数多く分断され,集落が散在している.一方,急速な工業化により,これらの集落から若者が流出し,高齢化,過疎化が進行し,バスの便数が減り買い物や医療で不便を強いられ,さらに人口減が進むと,ますますへき地となる.

 わが国は国民皆保険制度で,自由開業制,出来高払いが特徴である.1,000名を割るような人口で,少子高齢化が進んでいて,受け持ち範囲が広く,しかも交通が不便な「へき地」では,事業リスクが高く,開業する医師はまずいない.一方,皆保険という医療制度上,サービスを受けられる体制を整備する必要があり,都市部に医師や医療機関が集中する中,市町村は山間へき地離島にも保健医療機関を設置する.が,医師たちはあまり行きたがらない.へき地の生活の不便さ,教育,文化施設などいろいろと不便だということもある.

連載 「ケア」の関係性が変わる・1

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連載にあたって

 様々な問題を抱えながらも,介護保険がスタートして半年余りが過ぎた.これについては賛否両論あると思うが,今後の医療福祉機関の運営は,この枠組を視野に入れざるを得ない,という点については意見が一致するところであろう.この連載では,介護保険制度を前提とした場合に,医療福祉の関係者が直面するであろう問題の予測と,その問題解決を図るための提案を試みる.

 連載第1回では,医療福祉の提供者(以下,提供者という)と利用者との関係,あるいは提供者と地域との関係がどのように変わっていくのかについて考える.その際,提供者と利用者の関係および提供者と地域との関係をマーケティングの視点からとらえる,第2回は、この関係が変わることによって,われわれがどのような問題に突き当たるのかを,個別テーマをあげて考える.3回目から5回目までは,福祉の側からみた場合に,医療とのかかわりのなかで福祉における関係性が,どのように変化するのかを,事例を交えながら考えてみる.最終回は,これらの作業を通して,医療福祉を超えた社会全体の視点から「ケア」という概念の問い直しを試みる.こうしてみると一見ばらばらであるように思われるかもしれないが,この連載を貫く視線は,医療福祉における提供者と利用者および地域との新しい関係を探ることである.

連載 事例による医療監視・指導・12

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 今月は事前通告なしに行われる,いわゆる抜き打ち的に行われる緊急の立ち入り検査について触れてみましょう.前にも書きましたが,私どもは原則として抜き打ち的な立ち入り検査は避けるようにしております.これは病院の管理者(院長)をはじめとする各部署の責任ある立場の方々に在院していただいて,検査に立ち会っていただき,問題点,疑問点に対してご説明いただき,必要があれば直接ご指導申し上げるためのものです.

 しかし場合によっては,病院の現状を把握するために,通告なしにまず立ち入らなければならないこともあります.今回はそのような例をご紹介しましょう.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第74回

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県の高度医療センターとして,電子カルテの本格的採用

 島根県立中央病院は県下唯一の県立病院であり,県民医療の中心的役割を担う高度医療センターとして,出雲市の中心にあった旧病院より約700m北寄り,新しく整備された国道9号線バイパスに面する交通要衝の地に移転新築された.

 新病院は,専用エレベータのある本格的なヘリポートを持ち,高度・特殊医療,救命救急医療,隠岐の島などへのへき地医療への対応をはじめとして,地域医療への支援,医療従事者の教育.研修のセンター的機能を備える.

ボランティア:住民に支えられて—諏訪中央病院・1

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 美しい山並をみせる八ヶ岳の麓,ゆるやかに広がる山裾に位置する諏訪中央病院.「予防からリハビリまでの一貫した医療」,「地域に密着した手づくりの医療」,「救急医療,高度医療を担う」を理念に掲げ医療活動を展開している.

 心臓外科,脳外科,癌の外科,脊椎外科など年間1,750件の手術に取り組み,時間外救急患者は年間15,000件,循環器グループは24時間体制で心筋梗塞に対し血栓溶解療法,冠動脈拡張術,ステント挿入を行い,心筋梗塞の平均在院日数は10日になった.消化器グループでは年間7,000件を超す内視鏡検査を行い,癌の内視鏡的治療やカテーテルによる治療に積極的に取り組んでいる,一般病棟の平均在院日数は16.8日になっている.

病院管理フォーラム Hospital Administratorへの道 part3・1

21世紀の地域医療 中田 祐広
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21世紀の課題

 1968年に製作された映画「2001年宇宙の旅」を観賞しながら,未来はどうなるのかと思いを馳せたのがついこの前のような気がする.筆者自身の考えには大して変化もないまま,ついに2001年に突入してしまった.

 さて,21世紀はどんな時代なのか.筆者が社会人として過ごしてきた1980〜1990年代の20年間を振り返ってみると,貿易収支の大幅黒字,非関税障壁などによりジャパン・バッシングが生じるほど日本型経営が世界経済の頂点を極めた時期と,NIES (新興工業経済地域)諸国などの台頭により国内が空洞化し,海外に向けた量産化・コストダウンといった拡大再生産の図式が崩れ,政・官.財の癒着やわが国金融秩序に対する国際的な不信が追い打ちをかける現実によって,バブル崩壊後,低迷した景気の中をなかなか再浮上できなかった時期に二分される.

病院管理フォーラム 看護管理=病院のDON・1

病院のDON 小山 秀夫
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看護部長の重要性

 国立医療・病院管理研究所では,毎年2回,「病院管理研修会・看護部長コース」を開催している.このコースは1953年に開始されたもので,2000年12月までに5,637名の参加者があった.1953年当時,当研究所は「病院管理研修所」という名称であった.この年の4月には東北大学医学部にわが国で初めて「病院管理学教室」が設置されて,記念すべき年であった.しかし,入院が必要な結核患者を入院させる設備が著しく不足し,医師や看護婦のマンパワーも不足している状況において,病院管理や看護管理について,どのようなことを,どのように研修することが有効であるか,といったこと自体から研究する必要があった.

 近代的な病院管理研修の体制が確立できたのは1961年6月のことであり,「厚生省病院管理研究所」に名称変更し,看護管理の研究も開始された.当時の病院における看護労働は,人員不足もあり,深刻な労使問題を抱えていたが,国民皆保険の体制が確立し,病院数も病院病床数も急激に増加し,各地で夜勤は2人で月間8日間までという「ニッパチ闘争」が展開されるようになった.

病院管理フォーラム 総合相談室—退院計画の課題・1

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背景

 当院は第2次救急指定の急性期医療機関である.1991年より診療支援部に総合相談室が設置され,それまでリハビリテーション科や精神科に所属していたソーシャルワーカーと新たに保健婦,看護婦が配置され,患者,家族の様々な療養上の相談を受け援助してきた.年々,適正医療と早期社会復帰を目的とした治療計画が進められる中,特に退院後の療養に関する相談が増加し,1999年度のソーシャルワーク統計では,相談の約50%が退院後の療養に関するものであった.

 入院患者の中には,単身,高齢世帯の増加など生活構造の変化や不況による経済問題などの生活背景の問題を抱えた患者が存在する.このような患者,家族は疾病の罹患による不安だけ抱えているのではなく,生活背景により退院後の対処方法を見いだせずに,不安や混乱に苛まれるケースが少なくない.

Principle 病院経営・24【最終回】

病診連携の枠組み(5) 谷田 一久
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 これまでは医師の年代別人口や医師の守備範囲といった医療提供者サイドの話をしてきた.医師の年代別人口のセクションでは,医師間の競争が強まるのではないか,したがって,競争原理に耐え得るマネジメントスタイルが必要となるであろうと述べてきた.そして,医師の守備範囲のセクションでは規制と競争について問題提起をしてみた.いずれにしても医療提供者に目は向いている.そこで,この項では医療機関の利用者である患者に目を向けてみることにする.

癒しの環境

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 胃癌や大腸癌の手術を受けた方はご存じだろうが,消化器の手術後食は,手術後消化管の運動が回復し,ガスが出るとまず重湯から始まる.その後徐々に3分粥,5分粥,7分粥,全粥とお米の割り合いが多いお粥となっていく.最後に健康人と変わらない常食となる.

 これは日本独特のシステムではあるが,多くの国においても同様に,消化器術後の食事にはこのステップアップシステムが存在する.しかし日本のように細かなステップを踏む国はなく,お隣の韓国では,ミューム,ジュ,普通食の3ステップ,中国では流質,半流質,軟食,普食の4ステップである.

医療経営の総合的「質」の検討・1

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 平成12年3月,日本品質管理学会の計画研究として,筆者が主査となり,医療経営の総合的「質」研究会が発足した.医療(経営)を組織管理の観点から検討することが目的である.病院経営者,医療管理学研究者,企業経営者,品質管理実務者,品質管理研究者が参加し,月例の会合で議論を重ねている.

 本号では,医療経営における質向上活動の動向を報告する.また,次号から,研究会委員が事例および検詞事項を報告する.

医療従事者のための医療倫理学入門

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〔ケース〕

 1999年2月28日,わが国で初めて脳死状態患者からの臓器摘出,臓器移植が行われた.ひとりの女性の善意が少なくとも6名の人々の命を救った.しかし,脳死判定から臓器摘出に至る過程で,患者(臓器提供者)の家族から、患者の自宅にまで報道陣が詰め掛けるなど,取材に行き過ぎがあったとの指摘があり,「患者および家族のプライバシーに触れる報道のあり方以前の非人道的な取材方法のあり方を反省し謝罪すべきだ」とのコメントが公表された.

 一方で,患者と患者の家族の「プライバシーに対する権利」を守るという理由で報道・取材活動を制限するのは,情報公開の原則に反するという批判も行われた.これは,わが国の臓器移植の歴史を踏まえた上で脳死と判定される患者の利益を守るためには,「知る権利」が十分保障されなければならないという立場である.

 しかし,この場合の知る権利とは誰の権利なのだろうか,そして誰に権利保障の義務を負わせるべきなのであろうか.上記の二つの権利の葛藤を解消するにはいかなる手続きが必要なのであろうか.

琉球弧から・1

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□沖縄サミット余話

 昨年7月に開かれたG8首悩会談の際,各国首脳が宿泊するホテル,会場,道路の整備には,各都道府県から2万4千人の警察官が派遣された.酷暑のなか,汗だくになって警備する警官に,近くの住民が冷たい飲み物を持参して「わが家でシャワーをどうぞ」と声を掛けられた.学童や生徒たちも,炎天下に制服姿の警官を見掛けると,「ご苦労さま,ありがとうございます」と言って,缶ジュースを差し入れたという.後日,本土へ帰る警官は,「地域住民から,これほど温かくされたのは初めて」と感激し,民宿の主人と「また,来る」と約束したという.

 沖縄の人々の,外来の客を迎える分け隔てのない友好的態度は,「出会えば兄弟(イチャリバ チョーデー)」という沖縄流の素朴な持てなし方である.

基本情報

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病院
60巻1号 (2001年1月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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