医療従事者のための医療倫理学入門
12.医療における権利について
浅井 篤
1
,
大西 基喜
2
,
永田 志津子
2
,
新保 卓郎
2
,
福井 次矢
2
1京都大学大学院医学研究科社会健康医学系
2京都大学医学部附属病院総合診療部
pp.76-78
発行日 2001年1月1日
Published Date 2001/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903186
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〔ケース〕
1999年2月28日,わが国で初めて脳死状態患者からの臓器摘出,臓器移植が行われた.ひとりの女性の善意が少なくとも6名の人々の命を救った.しかし,脳死判定から臓器摘出に至る過程で,患者(臓器提供者)の家族から、患者の自宅にまで報道陣が詰め掛けるなど,取材に行き過ぎがあったとの指摘があり,「患者および家族のプライバシーに触れる報道のあり方以前の非人道的な取材方法のあり方を反省し謝罪すべきだ」とのコメントが公表された.
一方で,患者と患者の家族の「プライバシーに対する権利」を守るという理由で報道・取材活動を制限するのは,情報公開の原則に反するという批判も行われた.これは,わが国の臓器移植の歴史を踏まえた上で脳死と判定される患者の利益を守るためには,「知る権利」が十分保障されなければならないという立場である.
しかし,この場合の知る権利とは誰の権利なのだろうか,そして誰に権利保障の義務を負わせるべきなのであろうか.上記の二つの権利の葛藤を解消するにはいかなる手続きが必要なのであろうか.
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