病院 26巻8号 (1967年8月)

特集 病院の廃棄物

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まえがき

 物の構成分が隅から隅まで,しかも最後の最後まで活用できるなら,そこに廃棄物は出てこない。しかし,そうした活用のできないものも多いし,また,たとえできてもその容器などはあとに残るから,廃棄物はたいていの場合どうしても出ざるをえないのがふつうである。

 一方,物の中には,それをくまなくかつ最後まで活用するよりもしないほうがいろいろの点からむしろ有利なものもある。最近とみに注目をあびるようになったディスポーザブル(disposables=使い拾て)用品などはその最もよい例である。ディスポーザブル用品の利用が進めば,その面からまた廃棄物の種類と量は,一そう増加することになろう。

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はじめに

 近年わが国の病院でも,診療と同様に患者の収容サービスの大切なことが強調されてきている。収容サービスの中心をなすものはもちろん看護であるが,その他に給食,寝具そしてよい環境を与えるなど,入院患者の生活に必要なすべての世話を行なうことが病院の重大な関心事となり,患者の生活の場としての病棟は病院活動の中心をなすものとなってきた。

 人間の生物学上の欲求に基づく一定の最少限度の根本的な施設や環境は,人間の肉体的,精神的,社会的健康のためにはどうしても必要なものであるといわれているが,これが病人の場合には健康な人よりもそのような標準の維持にはいっそう敏感なものであるから,病棟は患者が生活するのに最も適当な環境でなければならない。よい環境作りのためには温度,照明,換気,音響など種々の条件があるが,特に衛生的標準を維持することは大切なことと思われる。病棟は汚いところという観念がなくなり,一流ホテルのように清潔で快適だということになれば,治療の場としてまことにふさわしく,また病人を最もよい状態におき,疾病に対して個体が最も強く抵抗しうるように,そして患者のもっている可能性をのばすように努力している病院看護の効果もあがるであろう。

有価廃棄物とその処理 平野 栄次
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 病院という施設はつぎのような各種の機能をあわせ持っているということがいえよう。

 1)医療機能 2)ホテル的機能 3)工場的機能

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 無価廃棄物の処理についてはどこの病院も苦労しているようである。病院業務のうちで最もおくれているのが廃棄物処理であろう。先日奈良県下のある大きな綜合病院を見学してきた。そこでは汚物,ガーゼ類は重油バーナーの焼却炉で処理をしていたが,その他の塵芥については市当局の処理に依托しているということであった。ダストシュートは設置していないので,廃棄物の収集には各病棟の隅にポリペールを置いてそれを運搬して捨てているようであった。他の機械化された諸設備と比べて塵芥処理のおくれが印象的であった。病院の廃棄物を病院外で処理することは,医学的見地からはどう判断されるであろうか。病源菌の汚染伝播のおそれはないのであろうか,と案じられる。

 また広い緑地帯をもつ樹木の多い療養所では季節的にでる廃棄物は相当な量になると思うが,その処理はどうしているのであろうか。近頃病院造園ということが言われるようになり,建物内部ばかりでなく外部や,緑地帯の美化が問題になってきているおり,廃棄物の処理対策を真剣に考えなければならない。

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 このテーマを与えられ,いろいろ調査した結果,驚いたことはわれわれの考えてもみなかった種々の廃棄物があることであった。また,廃棄物だと思っていた物が,立派にある種の原料に役に立っていたりして,まざまざと病院業務の複雑性を思い知らされた。病院で出る動物性の廃棄物は,大別して次のように分類できると思う。

1.手術室からの廃棄物2.産科(特に分娩室)からの廃棄物3.動物実験室(試験室)からの廃棄物4.解剖室(病理検査室)からの廃棄物5.病棟からの廃棄物

ダストシュートについて 伊藤 誠
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 院内の各部門が緊密に連繋しあってはじめて有機的な病院としての機能をはたしうることはいまさらいうまでもない。それゆえに,部門間のつなぎのひとつとしてのいろいろな"もの"の運搬は,病院の管理上はもちろん,建築計画の面でも重要な問題となる。効率よく仕事をさばくためには,必然的に機械化の導入ということになろう。シュートは機械とはいえまいが,重力を利用して運搬の労力にかえていこうとする点で,機械とねらいを同じくするもっとも初歩的な装置であると考えてよい。ところでダストシュートとなると,原理は初歩的ではあるが,あるいは初歩的であるがゆえに,なかなか厄介である。あらためて問題としてとりあげて考察してみようとするゆえんである。

 運搬という観点を離れても,特に病院では,ものの流れの末端をいかに処理するかが重要である。特に"きたない"ものの始末は,病院自体を清潔に保っていくために,ぜひとも十分の配慮を必要とするところである。くさいものには蓋をではすまない。

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病院のゴミ処理施設

 近代社会に生活する人類にとって,科学の発展に伴いその機械的な恩恵に浴すること大であり,生活環境に破格の進歩と,変化をもたらせた。しかし生活環境の変化,建物施設の複雑化により,廃棄物も必然的に増大する傾向にある。

 今回は特にその集約的要素が大きい病院の廃棄物について,実情と処理のあり方,ならびに処理施設の建築計画上の留意点などを述べ,今後の計画に参与できれば幸いである。

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はじめに

 衛生上からみても,また生活感情からいっても,し尿は水洗便所によって処理することが,もっとも望ましい姿である。

 水洗便所を設ける場合には,二つの方法がある。一つは水洗便所から公共下水道に排流し,終末処理場に導いて衛生的な処理を行なう方法であり,他の一つは,各戸に浄化そうを設けて水洗便所を使用する方法である。前者がより優れた基本的な方法であることはいうまでもないが,実際問題として,わが国の公共下水道の整備がいちじるしく立ち遅れているために,この方法では現在700万人の水洗化が行なわれているにすぎない。

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 使い捨て用品は,医療上の要請,人的資源の不足などから,とみにその使用が増えてきている。だがそれとともに,廃棄量も多くなり,危険なものも増えている。その処理いかんによっては,院内感染,公害の源にもなりかねない。そこには,使って捨てれば事足れりとするにはあまりに多くの問題が含まれている。

グラビア

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 欧米においては小児病院の歴史は古いが,わが国ではようやく社会の注目をひき始めたところである。この小児病院は1926年に教会付属として設立されたが,1929年に研究所ができ,大学と連繋し,小児科学発展に寄与してきた。小児科医として有名なMitchel, Nelsonもここで仕事をし,現在ポリワクチンで有名なSabinが研究所を持っている。

 小児病院と隣接して一般総合病院がある。産科は一般病院にあるので,新生児は一般病院で扱い,患児だけを小児病院でみる。大学,小児病院,研究所,一般病院の連繋がしっかりしている。

グラビア 私的病院シリーズ・4

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 リハビリテーションセンターと言える施設は公的なものでも数は少ない。伊藤病院は民間の施設として画期的なものと言えよう。

 伊藤病院は昭和33年に外科,整形外科を中心として発足したが,昭和42年6月に現在の101床の規模に拡張し,本格的なリハビリテーションを目的とした病院として新しく出発した。

病院の広場

勤務医確保の一試案 小山 三郎
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 医療の中心は医師にある,病院は患者を収容し医療を施す場である以上病院の中心は医師にある。近頃勤務医の不足の声をしばしば聞く。ことに小都市にその声が高い。私達の病院は常勤123名非常勤30名の医師を抱えた大世帯だが,やはり医師の補充がことにクライネファッハでは困難である。当院の常勤医師は卒業後10年以内34名,11〜20年40名,21〜30年30名,それ以上19名で卒業後21年以上のベテランが半数近いのに10年未満の数が案外少ない。これは一般的傾向でその理由の第一は収入が少ないことであろう。開業医に比べあまりにも少ないため開業するケースが多い。また近頃では大学の医局でもアルバイトの機会が多く週数日で,ほとんど勤務医と同額の収入が得られると聞く。大学在籍はよい履歴にもなり,研究をしながら比較的自由な勤務で収入も相当あるとすれば何を好んで時間に縛られた忙がしい勤務医になるだろうか。管理者は勤務医に魅力となるものを与えねばならぬ。勤務医にとっての魅力は適当な指導医がいて,修練の対象となる患者が豊富にあり,整備されて学問的欲求を満たす医者らしい良心的診療ができて,研究の指導者と施設(図書室を含め)と時間があること,それに収入が多いことであろう。しかしこれらの内には5年10年経つと失なわれる魅力もあり,いつまでも下積の医師として勤務することは望まれぬ。

 元来勤務医の役職には院長,副院長,部長,副部長がある。

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勇気をもって心電図に立ち向う

 先般医学書院から刊行された「心電図と5人の読みかた」は一見の価値がある。たった1枚の心電図からの推理だが,この道の第1線で指導的立場におられる5人の方々が,時にはちがったアプローチから,実にみごとな結論にもって行なっておられる。なにもインフォメーションなしでのたった1枚の心電図からその人のすべてのことがわかるわけがないので,100%あたったとすれば,ギャンブル的なものが大きくきいたことになる。したがって診断があたるかどうかが問題ではなく,5人の方々が推理をすすめてゆく過程に興味があるし,この木から学ぶべきものがある。

 心電図にかぎらずいろいろの検査資料からある結論を出す場合にはいつもそうすることが必要だが,沢山の一寸した変化の中から,どれが重要なものにつながる変化であるかをスクリーニングすることからはじまる。そして,そのよりだした重要なものにつながると思われるものを材料にして組立てたものがどの状態のイメージに適合するかを次々に検討してみる。これが推理の過程である。この本は5人のこの道のエクスパートの推理の仕方を学びとる機会を私どもにあたえてくれている。

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時宜をえた便利な実務書

 予防接種がわが国における伝染病予防の具体策の一つとして,しめる位置はますます大きく,かつ重要になってきたといってもいいだろう。この書ではまず巻頭に,予防接種の意義・予防接種の背景となる疫学的基礎理論が,船川・金子両編者によって概説されているのは,あとの各論的な個々の予防接種についての記述と,その問題点の提起を,正しく理解させるのに役立っている。従来の予防接種に関する記述は,真先から個々について詳述されていることが多く,ややもすると総括的に予防接種のあり方や,ほかとの関連性について考えることができなくなってしまうきらいがあった。その意味ではこの書の意図は正鵠をえたものといえるだろう。しかし一方それぞれの予防接種の権威者の筆になる各論的記述は必ずしも視点が同じでなく。もちろん当然のことではあるが,統一的見解を欠いていることが指摘される。その一つの重要な点だけを,筆者がとくに心を寄せているゆえにあげると,予防接種の副作用についてである。予防接種の適用の可否,意義づけをきめる大きな要素となる問題だけに,客観性のある統一的・学問的な見解を明示してほしかったと思う。何かワクチンの有効性と信頼性を強調するあまり,副作用の追求と考察の力が弱あられてしまっているような印象を受けるし,副作用という用語自身の限界も判然としない。現実に毎年いわゆる副作用という名で呼ばれている事例が各地で発生している。

第17回日本病院学会パネルディスカッション

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 前号(7月号)では,院内コミュニケーションに対する院長・医師・看護婦のそれぞれの立場からの接近,問題提起をお送りした。今月は,医事の立場からの発言と,これら四者と会場からの質疑応答をお送りする。

研究と報告【投稿】

調剤薬の動向 古川 正
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 病院における薬品消費額は年々上昇している。特に調剤用に消費される額が増している。

 この原因としては二つのことが考えられる。

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緒言

 日本における病院形態ができあがって以来今日まで手術室で活躍してきたのは,医師と看護婦の二つの職種であった。

 ところが近年の医学進歩に伴い手術的治療にも高度な外科手術が必要となってきた。それには複雑化された種々の器械,器具を使用して手術が行なわれるので,手術室看護業務にも次第に専門的な知識を要求されるにいたった。すなわち近代設備を施した手術室においてはこれら種々器械の取扱い,点検などについておのおの専門技術者によって管理される傾向にあるのである。

ホスピタルトピックス 看護

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 中央材料室(Central Supply)の考え方は,もともとアメリカから輸入されたといわれる。ここでは本場アメリカの中材のあり方について述べてみよう。

 中材に働く人は,ほとんどすべてが無資格者である。

ホスピタルトピックス 特殊病院

南仏ユゼ県立精神病院 鈴木 淳
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 マルセーユから汽車で北上すること約2時間で,「アルルの女」や「アヴィニオンの橋」でわが国でも有名な地方に着く。この橋の下を遠くアルプスから源を発したローヌ河が流れ,アルル地方を東西に分っている。この西側の一つの町邑ユゼから800mの距離の南面した広大な緑地帯に,県立精神病院新設の決議をガール県会がしたのは1955年11月のことであった。この翌年県を中心に創設準備委員会が設けられ,1957年700床規模建築許可が保健大臣からおり,設計コンクールの結果,Jac—ques Carluが当選した。1958年詳細な設計ができあがり,保健省の認可も得,策1次建築として,400床規模となって,1961年着工の運びとなった。

 設計時の見積りでは1760万2000フランの建設費であったが,実際は1962年466万875フラン,63年675万1691フラン,64年265万4706フラン,65年には611万1915フランであり,その後の分も加えると支出合計は2539万380フランとなる。現在の現金交換レートは1フランが71円であるから,日本金に換算すると,約20億1100万円となる。

霞ガ関だより

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 最近,とくに進歩発展のめざましい電子工学,精密工学,高分子科学等関連諸科学の成果を医療技術の分野にとり入れ,国民の保健医療の向上をはかろうとする活動が大学研究機関,あるいは関連企業等各方面において急速に展開されつつあることは,世界のすう勢からみて当然のことである。現在,すでに多くの新しい医療機器が,関係技術者の研究と努力によって開発されており,医療の新しい領域がひらかれ,実際の診療に貢献している。この新しい医療技術により,疾病の早期発見,さらに的確な診断と治療が可能となり,病気に対する適切な処置がとられるようになる。とくに,従来ほとんどうつべき手を知らなかった高血圧,がん,心臓病などいわゆる成人病と呼ばれる疾患群に対してこれらの新しい医療機器は有力な武器となりつつある。生体内の微弱な電流をとらえ,あるいは生体内の微細な変化を電流に変え,この電流を増幅して生体内の各部の異常を早期に発見できるエレクトロニクスを応用した医療機器として心電計,脳波計などは広く普及している。また,X線装置にテレビ技術を導入したX線テレビも次第に普及しつつある。さらにエレクトロニクスを救急医療に応用して被害者の血圧,脈波,心電図などの動きを救急医療センターに無線でおくり,患者の状態を知らせ,その指示をあおぐテレメーター方式もすでに実用化の段階に入っている。

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編集後記 落合 勝一郎
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 月刊誌が,おそくもその月央までにだせないということは,情けないことである。本号も8月中に出るか出ないかのすれすれであろうが,それでも漸くこの号をもって,ここ数カ月のおくれをとりもどしたことになるようである。この間,読者にはずいぶんご迷惑をおかけしたことと思う。

基本情報

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病院
26巻8号 (1967年8月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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