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—船川幡夫・金子義徳編集—「予防接種」
宍戸 昌夫
1
1横浜市大公衆衛生学
pp.78
発行日 1967年8月1日
Published Date 1967/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203151
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時宜をえた便利な実務書
予防接種がわが国における伝染病予防の具体策の一つとして,しめる位置はますます大きく,かつ重要になってきたといってもいいだろう。この書ではまず巻頭に,予防接種の意義・予防接種の背景となる疫学的基礎理論が,船川・金子両編者によって概説されているのは,あとの各論的な個々の予防接種についての記述と,その問題点の提起を,正しく理解させるのに役立っている。従来の予防接種に関する記述は,真先から個々について詳述されていることが多く,ややもすると総括的に予防接種のあり方や,ほかとの関連性について考えることができなくなってしまうきらいがあった。その意味ではこの書の意図は正鵠をえたものといえるだろう。しかし一方それぞれの予防接種の権威者の筆になる各論的記述は必ずしも視点が同じでなく。もちろん当然のことではあるが,統一的見解を欠いていることが指摘される。その一つの重要な点だけを,筆者がとくに心を寄せているゆえにあげると,予防接種の副作用についてである。予防接種の適用の可否,意義づけをきめる大きな要素となる問題だけに,客観性のある統一的・学問的な見解を明示してほしかったと思う。何かワクチンの有効性と信頼性を強調するあまり,副作用の追求と考察の力が弱あられてしまっているような印象を受けるし,副作用という用語自身の限界も判然としない。現実に毎年いわゆる副作用という名で呼ばれている事例が各地で発生している。
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