検査と技術 45巻8号 (2017年8月)

病気のはなし

炎症性腸疾患 日比 紀文
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Point

●原因不明で根本治療がなく,過去には難治性疾患といわれていたが,治療の進歩により多くの方が通常生活を送れるようになってきた.

●その病態は,腸管内の微生物などに対する免疫異常反応により慢性の炎症が生じ,なりやすい体質があると考えられている.

●診断には臨床症状に加え,内視鏡などの画像検査や病理学的検査が重要である.

●治療は,炎症抑制と免疫異常反応抑制が中心で,炎症のある活動期を抑え(寛解導入),炎症の再燃を防ぐことを続ける(寛解維持)ことが重要である.

技術講座 生理

シリーズ ペースメーカ心電図の見方・2

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Point

●ペースメーカの異常動作(ペースメーカ不全)は2つ.“センシング不全”と“ペーシング不全”.

●ペースメーカの“不応期”の設定を理解し,ペースメーカ不全と区別する.

●オートモードスイッチや,心室刺激をできるだけ抑制する機能など,ペースメーカには特殊機能がある.

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Point

●下肢静脈エコーの適応となる深部静脈血栓症や下肢静脈瘤は別の疾患であり,それぞれの病態を正しく理解したうえで検査を行う必要がある.

●下肢静脈瘤は弁不全から静脈内に血流が停滞し,静脈が瘤化する疾患である.

●深部静脈の評価ポイントは下肢静脈瘤が一次性か二次性かを判断すること.

●表在静脈の評価ポイントは,弁不全の範囲を評価し,治療に必要な情報を得ること.

技術講座 管理・その他

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Point

●臨床統計学の学習は実践的に手法を身に着けつつ,必要に応じて理論的背景に触れる,という形がよい.

●交絡と交互作用の概念の正しい理解が必要である.

●“統計”には抽象的な概念が多く本当に難しいので,“いまさら聞けない”などと思わずに,ぜひ生物統計や疫学の専門家にコンサルトを!

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Point

●まずは妊娠期から授乳期の女性,新生児期から乳児期の子どもに特徴的な生理状態を理解することが重要である.

●各時期における栄養問題について,臨床検査値をもとに栄養状態を評価する.

●栄養評価に基づいて,栄養診断,栄養介入,モニタリングを行う.

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はじめに

 読者の皆さんは,自分に風疹抗体があるかどうか知っているだろうか.2013年に風疹の流行があり,患者の中心は成人男性であったことを知っているだろうか.医療機関での勤務や実習の前に,風疹や麻疹,その他の感染症の抗体検査を実施する施設は少なくないと思うが,抗体陰性と言われた人は,ちゃんと予防接種を受けただろうか.

 妊娠中,特に妊娠初期に風疹ウイルスに感染すると,胎児に影響を及ぼし,白内障や先天性心疾患,難聴などをもって生まれてくることがある.先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)と呼ばれるこの疾患は,発生を防ぎ,なくすことが期待できる数少ない先天異常の1つである.本稿では,「“風疹ゼロ”プロジェクト」の始動を受け,風疹とCRSについて私たちが知っておくべきことを解説する.

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はじめに

 近年,新型のCandidaであるCandida aurisは,医療関連感染を起こした場合の致死率の高さと,薬剤感受性の面から着目されている.本稿では,本菌種の菌学的性状,薬剤感受性について解説し,海外の疫学情報についても紹介する.

FOCUS

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はじめに

 病院での検査というと,皆さんは何を思い浮かべるだろうか.本誌の読者は臨床検査を想定する方が多いと思うが,一般の方はX線検査などの画像検査を思い浮かべるかもしれない.人々は自身の知識範囲内で判断を行うため,一般の方が臨床検査以外の検査を先に思い浮かべることも当然だろう.

 では,臨床検査というと今度は何を思い浮かべるだろうか.血液検査,病理検査,一般検査などの検体検査と,心電図検査や超音波検査などの生理検査を思い浮かべると思う.このイメージは日本や一部のアジア地域では正しいが,米国や欧州などでは当てはまらない.米国や欧州をはじめとする多くの国々では,臨床検査とは“検体検査”のみを意味する場合がほとんどである.

 日本で臨床検査技師になるためには,国家試験に合格し,厚生労働省の臨床検査技師名簿に登録をする必要がある.日本のように厳格に臨床検査技師免許の発行を行っている国もある一方で,所定の課程を修了し申請をすればよい国,政府が認めた学術団体が発行する認定証があれば臨床検査技師となれる国など,臨床検査技師になる形態は国によって異なる.

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はじめに

 精度管理とは,正確度(真値との近さ)と精密度(繰り返し測定したときのバラツキ度合い)を管理することであり,施設内で測定結果を比較する“内部精度管理”と,同一条件下の試料を基準として広域で測定結果を比較する“外部精度管理”がある.臨床検査分野では,一般的に管理試薬(日本臨床検査標準協議会が認める標準法に基づいて値付けされた標準物質)を用いて測定機器や試薬の管理を行っている.

 一方,形態学においては標準細胞が存在せず,各種アトラスを参照して細胞を識別しているのが現状である.血液形態学では,血液細胞の形態標準化が,2001年より日本検査血液学会(The Japanese Society for Laboratory Hematology:JSLH),日本臨床検査医学会,日本臨床衛生検査技師会の3団体合同で進められており,JSLH標準化委員会で提案した判定基準に準拠した細胞1,2)を標準細胞としている.

過去問deセルフチェック!

血小板凝集能検査
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 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説
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 生体の止血機能においては,まず血小板が内皮下組織に粘着し,それに引き続く凝集反応・放出反応により,血小板止血栓(一次止血栓)が形成されます.したがって,血小板の総体的機能が低下した場合,一次止血栓が形成されにくくなり,出血傾向が生じます.血小板の異常には,数の異常と機能の異常があり,日常診療では,前者(血小板減少症)に遭遇する場合が多いですが,時に,血小板の異常に典型的な一次止血異常が認められるにもかかわらず,血小板数には問題がない場合もあります.その場合,血小板機能低下を疑いますが,この際に最も重要な検査が血小板凝集能検査です.多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)に血小板活性化剤を添加することにより血小板凝集反応が進行しますが,これにより,PRPの濁度が低下して光が透過しやすくなります.このPRPの光学的変化を経時的に検出する透過光法が一般的に用いられる血小板凝集能検査です.

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訂正履歴

訂正日 2017年10月12日

本論文初出時に問題2解答の解説に誤りがございましたので,正しい文章に修正いたしました.

読者ならびに関係の皆さまにご迷惑おかけいたしましたことをお詫び申し上げます.

『検査と技術』編集室

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連載 人の心に寄り添う医療人になる・19

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 山藤:本日は「人の心に寄り添うシリーズ英会話編」です! 私はよく読者目線での要望を聞くのですが,英会話に弱いという医療人は案外多く,ぜひそのような内容をというリクエストを受けて,今回の対談といたしました.これから東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けても,外国人観光客がいっそう増えてきますし,医療現場でも英語に触れる機会は増えていくことでしょう.英語でのやり取りも人の心に寄り添う一面があります.また英語という側面だけではない人と人とのつながりのアプローチも,三宅社長のお話やお人柄からは,いつも垣間見えます.今日もたくさんの気づきと生きるためのヒントがいただけると楽しみにしてきました.私と三宅社長は以前に本連載で対談させていただいた藤平信一会長(心身統一合氣道会)の道場でご一緒させていただいている間柄です.先日もおいしいお寿司をご馳走様でした(笑).今回は大変お忙しいところ無理を言って,この対談を実現していただきました.どうぞよろしくお願いいたします.

 編集室:本日はよろしくお願いいたします.

連載 生理検査のアーチファクト・7

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こんなアーチファクトを知っていますか?

 この心電図(図1)は,12誘導心電図の波形であるが,どう思うだろうか? 右脚ブロックの心電図であることはわかるが,QRS波以降(特に胸部誘導)で不自然な波形を示している.STが低下し,T波を過ぎると波形は右肩上がりを呈しP波につながっている.これはアーチファクトによってできた波形であるが,どのような原理で発生したのだろうか?

疾患と検査値の推移

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Point

●関節リウマチ(RA)は,関節滑膜を病気の主座とする自己免疫性疾患の1つである.

●RAの関節炎は左右対称性に認めることが多く,複数の関節に腫脹と圧痛を認める.

●RAの血清検査として,診断には抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体やリウマトイド因子(RF)が有用であり,活動性評価にはC反応性蛋白質(CRP)や赤沈,マトリックスメタロプロテイナーゼ-3(MMP-3)が有用である.

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はじめに

 超高齢社会を迎え,日常的に医療用医薬品(以下,医薬品)を処方される患者は増加している.一方で,これら医薬品のなかには,臨床検査値に影響を与えるものも少なくない.該当する医薬品に関しては,医薬品の添付文書上で,“使用上の注意”として“臨床検査結果に及ぼす影響”の項が設定されており,この項は異常値が病気の影響か,もしくは医薬品の影響かを判断するための重要な情報となる.医薬品を使用することによって臨床検査値が見かけ上変動し,明らかに器質障害または機能障害と結びつかない場合に限り“臨床検査結果に及ぼす影響”の項に情報が記載され,“副作用”の項とは明確に区別される1)

 本稿では,医薬品の添付文書に“臨床検査結果に及ぼす影響”について記載のある医薬品を中心に,生化学検査および尿検査に対して影響を及ぼす代表的なケースを解説する.

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はじめに

 米国で2010年に発表された「甲状腺細胞診ベセスダシステム」1)(「The Bethesda System for Reporting Thyroid Cytopathology」2))(以下,TBS)は,2008年から米国の病理医を中心に検討され完成した甲状腺細胞診の新しい報告様式である.その後急速に普及し,現在では甲状腺細胞診の世界標準となっている.日本では,2015年に改訂された「甲状腺癌取扱い規約第7版」3)(以下,第7版)がTBSに準拠した細胞診の報告様式を採用している.ただし,第7版の報告様式ではわが国の現状に合わせてTBSに若干の修正が加えられている.本稿では両者の特色や相違について解説する.

臨床検査のピットフォール

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はじめに

 Clostridium属は,芽胞を有する直線状の偏性嫌気性グラム陽性桿菌と認識されている場合が多いが,実際の臨床現場で遭遇する本菌属には,グラム陰性に染まるものや,紡錘型のもの,好気培養で生育する菌種があり,Bacteroides属,Fusobacterium属,Lactobacillus属などと誤同定されがちである.これらを見逃さないためには,認識とは異なるClostridium属菌の存在を念頭に置いて分離・同定を行う必要がある.本稿では,これらの誤同定されやすいClostridium属菌の代表例として,C. clostridioforme groupおよびC. tertiumについて概説する.

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Q 尿中バイオマーカー:L型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)について教えてください.

A さまざまな作用機序をもつ新規薬剤が次々と開発されているなかで,腎疾患をターゲットとした治療薬の開発は,残念ながら十分に行われていません.こうした薬物療法の問題のみならず,進行した腎疾患には根治的治療法がないことから,腎疾患の進行を抑制するうえでは,早期診断が大変重要になります.腎疾患の進行や腎予後は,糸球体障害よりも尿細管間質障害と強く関連することがわかっています.そのため,尿細管間質障害を早期に診断およびモニタリングできるバイオマーカーは,腎疾患診療に大変有用です.

ラボクイズ

病理組織・細胞診検査 仲村 武

7月号の解答と解説 井上 佳

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所見を拾い上げる「眼」を養う書

 このたび,角田博子先生・尾羽根範員先生の著書『乳がん超音波検診——精査の要・不要,コツを伝授します』が医学書院より刊行された.マンモグラフィ検診の精度管理にかかわってきた者として,本書は超音波検診の精度管理の著書として大変に期待するものである.本書に対する推薦文を述べる.

 マンモグラフィ検診精度管理中央委員会(精中委)は,1997年の設立以来,マンモグラフィ精度管理について長年にわたり携わってきた.2013年3月より,超音波関連3学会からの要請により,将来を見越して超音波検査の検診・精密検査に関する精度管理システムづくりも精中委管轄で行うこととなり,名称も日本乳がん検診精度管理中央機構(精中機構)と変更した.超音波検査の精度管理については,2004年に日本乳腺甲状腺超音波医学会(JABTS)が『乳房超音波診断ガイドライン』(南江堂,2004年)を出版し,改訂が重ねられ普及に努められてきた.このガイドラインの中に超音波検診の項目があり,角田博子先生・尾羽根範員先生がその責任者を務められ,超音波検診の要精基準の作成に携わってきている.

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『臨床検査』8月号のお知らせ

あとがき・次号予告 矢冨 裕
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 6月に入り,今,8月号のあとがきを書いております.すでに先月から,とても5月とは思えない暑さとなり,この8月号が皆さまのお手元に届くころはどうなっているのかと心配します.そのようななか,気候変動対策の国際的枠組みである「パリ協定」の目標達成も危うい状況になり,本当に暗い気持ちです.

 さて,本誌のほうは,本号も盛りだくさんの内容です.「病気のはなし」では,炎症性腸疾患が取り上げられています.この疾患は,潰瘍性大腸炎とクローン病に分けられますが,私が学生のときには,わからないことだらけの難病でした.しかし,今回,読ませていただき,現在は治療が格段に進み,多くの患者さんが通常生活を営めること,さらには,画期的治療として生物学的製剤が新たに導入されていることがわかりました.また,疾患感受性遺伝子の同定が進み,腸内細菌,さらには,種々の環境因子の関与が明らかにされ,本疾患の,多因子疾患としての免疫異常の本態が明らかとなってきました.また,新しい検査として便中カルプロテクチンが紹介されていますが,この検査は,この6月に新たに保険収載されました.本当に医学・医療の進歩にはすさまじいものがあり,絶えず勉強し,新しい知識を吸収しなくてはいけません.他のシリーズ企画もいつも通り充実しています.ぜひ,お目通しください.

基本情報

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検査と技術
45巻8号 (2017年8月)
電子版ISSN:1882-1375 印刷版ISSN:0301-2611 医学書院

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