検査と技術 45巻4号 (2017年4月)

病気のはなし

肺結核 東條 尚子
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Point

●日本の結核罹患率は戦後急速に減少したが,世界のなかでは依然“中まん延国”である.

●最近の傾向として,高齢者,外国生まれの結核患者が増加している.

●医師は,結核と診断した場合は,直ちに管轄の保健所に届け出なければならない.

●結核の化学療法は,患者の結核菌が感受性を有する抗結核薬を3剤または4剤併用して6カ月継続することを基本とする.薬の飲み忘れがないよう,服薬支援が行われる.

技術講座 生理

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Point

●超音波検査は,検査者の技量が結果に大きく影響する検査です.基礎技術を反復し洗練すること,多数の症例を経験することが大切です.

●病変を探し出す(スクリーニング)には,解剖・疾患(病態)への理解を深め,考えながら検査を進めることが大切です.

●撮像技術の基本を理解し,“伝える・伝わる”記録画像となるよう,工夫することが大切です.

●臨床とのコミュニケーションを深め,自身の検査を振り返り検証し,経験を積み重ねることが,検査への信頼性,精度の向上,超音波検査の上達につながります.

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Point

●Martin-Gruber吻合(MGA)は,前腕における正中神経から尺骨神経への運動吻合枝で第一背側骨間筋(FDI)を支配することが最も多い.

●MGAが存在すると,正中神経刺激により短母指外転筋(APB)から記録した複合筋活動電位(CMAP)振幅は,手関節刺激に比べて肘関節刺激のほうが高振幅となる.また,尺骨神経刺激により小指外転筋(ADM)から記録したCMAP振幅は,手関節刺激に比べて,肘関節刺激で振幅が低下する.伝導ブロックを否定できる場合はMGAの存在を考慮する.

●MGAが疑われる場合には,正中神経の運動神経伝導検査(MCS)施行時に,APB導出に加えてFDIやADMから同時記録を行うことにより,その存在を確認できる.

●MGAが存在しない場合と,する場合での,正中神経および尺骨神経MCSの波形変化を理解する.

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Point

●融解曲線分析とは,二本鎖DNAに結合する蛍光色素を用いて,低温から高温に変化する過程で,二本鎖DNAが熱変性により一本鎖DNAに分離する現象を蛍光強度で捉える手法で,SNPsや欠失/挿入などを解析することが可能である.

●高解像度融解曲線分析(HRM)法は,高い精度と汎用性をもちながら,その他の遺伝子解析技術に比べ複雑な手技を必要とせず,比較的安価であるなどの特徴をもつことから,有用性が高い手法である.

●解析結果は,PCR産物の長さやSNPsの種類,変異の位置などの条件に左右されることが多いため,プライマー作成時に注意が必要である.

トピックス

CIM test 中村 竜也
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はじめに

 近年,多剤耐性グラム陰性桿菌の増加が,世界的に問題視されている.

 米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention)は「ANTIBIOTIC RESISTANCE THREATS in the United States, 2013」1)のなかで,最も警戒レベルが高い耐性菌としてCRE(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae)を挙げている.そのなかで,米国におけるCREによる感染症が1年間に約9,000例存在し,推定で600例の死亡への関与があったと報告されている.

 また,WHO(World Health Organization)は,2014年4月に初めて,世界の耐性菌状況をまとめた「Antimicrobial Resistance Global Report on Surveillance, 2014」2)を発表した.このグローバルレポートによると,肺炎桿菌のカルバペネム耐性率が一部の地域で50%を超えている.そして,2014年5月のWHO総会においてAMR(antimicrobial resistance)に関する決議が採択され,AMRに対する対策として,感染制御の強化,抗菌薬の適正使用,耐性菌サーベイランスの強化などについて,加盟国の取り組みを求めることになった.

 わが国においても,CREは5類感染症に定められており,重要な耐性菌の1つであることは言うまでもない.CREにおける重要な耐性因子は,β-ラクタマーゼ(extended spectrum β-ラクタマーゼ,AmpC型β-ラクタマーゼやカルバペネマーゼなど)によるβ-ラクタム系抗菌薬耐性であり,特にカルバペネムを分解するタイプ(カルバペネマーゼ)によるものは,抗菌薬治療および医療関連感染対策上重要視すべき耐性機構がある.日本におけるカルバペネマーゼは,欧米とはタイプが違い,IMP型と呼ばれる遺伝子型が多く検出される3).なかでもIMP-6型は,カルバペネム系薬のMIC(minimum inhibitory concentration)値が低く,耐性と判定される基準以下を示すため検出が困難であり,“ステルス型”といわれている.ステルス型はCREの基準を満たさない場合が多く,見逃されている可能性が高い4)

 2016年のCLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)ミーティング(開催地:アリゾナ州テンピ)において,カルバペネマーゼ産生グラム陰性桿菌の新たな検出法として,CIM(carbapenemase inactivation method)testが提案された.本法はZwaluwら5)がPLoS Oneで発表した方法であることがここで紹介された.本法の利点として,特殊な試薬や器具を用いないため,どの検査室でも安価で簡単に検査できること,1枚のプレートで8菌株をテストできること,カルバペネマーゼ産生グラム陰性桿菌の検出感度が99%であったことなどが紹介されている.また,2016年6月には,改良型CIM法も提案された.

国際標準検査管理加算 下田 勝二
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国際標準検査管理加算誕生の背景

 日本政府は,健康・医療戦略を平成26(2014)年7月22日に閣議決定した1).このなかで,「国民の“健康寿命”の延伸」がテーマのひとつとされ,2030年の在るべき姿が示され,実現を目指すこととなった.基本理念には,世界最高水準の技術を用いた医療の提供として,医療分野の研究開発における基礎的な研究開発から実用化のための研究開発までの一貫した研究開発の推進および成果の円滑な実用化により世界最高水準の医療の提供に寄与することが示されている.

 このような流れのなかで,厚生労働省事務連絡〔平成25(2013)年7月〕「治験における臨床検査等の精度管理に関する基本的考え方について」2)が発出されており,治験または臨床研究を積極的に実施している医療機関では,検査精度を確保するためISO 15189などの外部評価による認定を取得することが示された.また,平成27(2015)年4月の医療法改正で臨床研究中核病院が定められ,これに関する厚生労働省通知「医療法の一部改正(臨床研究中核病院関係)の施行等について」3)において,新省令第22条の8に規定する「検査の正確性を確保するための設備を有する臨床検査施設」とは,国際標準化機構に定められた国際規格に基づく技術能力の認定を受けていることなど,その技術能力が国際的に認定されたと客観的に判断できる外部評価を受けた臨床検査室を意味するものであることが明示された.

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災害と臨床検査

 検査室で用いられている多くの自動分析装置は,電源の他に大量の水を使用しているため,災害時に起こる断水や停電などのライフラインの障害で稼働不能となる可能性がある.そのなかで,給排水設備を必要としないドライケミストリー機器は,災害などによるライフラインの障害時に有用とされ,実際に,平成7(1995)年の阪神・淡路大震災をはじめとする災害時に大きな役割を果たしている1,2)

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薬剤耐性(AMR)対策アクションプランとは

 近年,抗菌薬開発メーカーが減少し,既存の抗菌薬が無効となる感染症が問題となってきた.また,医療関連感染症も増加し,その主たる原因は,多くの抗菌薬に耐性化した薬剤耐性菌〔薬剤耐性微生物(antibiotic resistant organisms:ARO)〕であった.一方,畜産などで使用される動物用抗菌薬の過剰使用によるAROの出現も問題となっており,ここで生じた耐性菌がヒトに伝播していることも注目されている.このような背景に基づき,ヒトと動物を合わせた世界レベルでの取り組み(ワンヘルス・アプローチ)が必要であるという視点から,2011年に世界保健機関(World Health Organization:WHO)が全世界に訴えた.以降,世界レベル,および国内レベルでの薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)に関する認識が深まり,具体的な制御に関する取り組みが行われている.

 国内では,厚生労働省に有識者が招集され,“国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議”という組織の下に“薬剤耐性(AMR)に関する検討調整会議”が設置され,検討が進められた.そして,2016年4月5日,「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」(以下,アクションプラン)(全71ページ)1)が公開された.アクションプランの項目立ては表11)に示すように6つの分野に分かれ,2020年までの達成すべき成果指標(表2)1)が示されている.これらのなかから臨床検査技師が取り組むべき役割について抜粋し,以下に解説する.

過去問deセルフチェック!

微生物学
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 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説
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 Gram染色を基本とした顕微鏡による細菌の形態観察と菌種の推定は毎年出題されている.検査材料別(感染症の病態別)のGram染色所見で推定可能な細菌を整理しておくとよい.特に,喀痰のGram染色像は必須である.すなわち,市中肺炎の重要な起炎菌である肺炎球菌,インフルエンザ菌(2016年 午後74),モラクセラ菌(2013年 午後68)のGram染色像は必ず押さえておきたい.また,院内肺炎では,黄色ブドウ球菌,緑膿菌,肺炎桿菌,アシネトバクター(2015年 午後73)の染色像が重要である.

 感染病巣から得られた検体のGram染色鏡検は,迅速・簡便に起炎菌の推定ができるため,初期治療における最適な抗菌薬の選択に欠かせない検査法である.Gram染色鏡検は,細菌の形態やGram陽性・陰性から菌種を推定できるだけなく,好中球の貪食像や炎症反応の有無,結晶の存在(関節液でピロリン酸カルシウムなど),抗菌薬治療前後における治療効果の判定など,得られる情報は計り知れない.また,Gram染色所見は,培養環境,追加の培地,培養期間など分離培養条件の変更へとつながり,生菌そのものを得ることに寄与できる.例えば,Gram陰性短桿菌が多数観察されたにもかかわらず,培養翌日にチョコレート寒天培地にも集落の形成を認めなかった場合には,百日咳菌を想定して,ボルデー・ジャング(Bordet-Gengou)培地での追加培養が必要である.また,Gram染色で染まらないガラス傷のように透けて見える(2016年 午前69)場合には抗酸菌染色を追加で行い,菌体が観察されれば小川培地や液体培地での培養を行う.このように,Gram染色鏡検は追加の染色や培養・同定検査の方向づけを行う“羅針盤”の役割も担っている.

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Point

●播種性血管内凝固症候群(DIC)は,固形癌や造血器腫瘍,感染症などが主な原因となり,血液凝固系が過度に活性化された病態である.

●DICをきたす基礎疾患が線維素溶解系(線溶系)にも影響を及ぼすために,DICの病態が修飾される.

●DICの診断には,血小板数や凝固線溶一般検査に加えて,トロンビン−アンチトロンビン複合体(TAT)や可溶性フィブリンモノマー(SF)などの凝固系分子マーカーが用いられる.

●プラスミン-α2-プラスミンインヒビター複合体(PIC)や,プラスミノゲンアクチベータインヒビター-1(PAI-1),白血球エラスターゼによる架橋化フィブリン分解産物(e-XDP)などの分子マーカーは,DICの病型や生命予後を予測するうえで有用である.

連載 人の心に寄り添う医療人になる・15

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 編集室:今回の対談は心身統一合氣道会の藤平信一会長をお招きしています.山藤先生,まずは,この会や藤平先生との結びつきや対談の目的を説明していただけますか.

 山藤:はい.昨年,知人(山田博:株式会社森へ代表取締役)が対談で出ている本〔『無意識の整え方』(ワニ・プラス刊)〕を紹介していただき,そのなかで,藤平先生の対談も載っていて読んだのが,藤平先生のことを知ったきっかけです.心身統一合氣道は武道なのですが,その考え方や実践などが,直感的に僕が考えている「人の心に寄り添う」につながるものがあると感じ,先生は本来大変ご多忙でなかなかお会いすることもできないような方なのですが,強引に先生のところを訪ねました(笑).実際に心と身体の使い方,関係性を体験してみて,「うぉー,これはなんだぁ!?」と感激し,武道は未経験ですが,そのまま入会しました.

連載 生理検査のアーチファクト・3

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こんなアーチファクトを知っていますか?

 Valsalva洞〜上行大動脈内に見える帯状エコーは何でしょうか?(図1)

 一見すると可動性があり大動脈解離の剝離内膜(intimal flap)のように見えるが,線状ではなくぼんやりした帯状に見えることから,アーチファクトのようにも見える.このような可動性があるエコー像が描出されたら,まず,Mモード法で動態を観察することが重要である.Mモード法で見ると,収縮期には厚みが増して大動脈前壁に近づき,拡張末期には厚みが薄くなって大動脈後壁に近づいていることがわかる.なおかつ,その動態は大動脈前壁の動きに似ているが,その振幅がより大きいことがわかる(図2).これらの特徴は,多重エコーであることを示している.

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はじめに

 定量検査の測定値を判断する基準として,基準範囲,病態識別値,治療閾値,予防医学的閾値などが使用されている.これらの判断基準の意義,適用する対象,場面はそれぞれ異なる(表1).本稿では,各判断基準の意味および算出方法について述べる.

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Q 小児の食物アレルギーと臨床検査について教えてください.

A この秋,新しく「食物アレルギー診療ガイドライン2016」1)が出版されましたので,できるだけその内容に沿ってお答えします.臨床検査についてはガイドラインにあまりデータが載っていませんので,筆者のデータを使って具体的なデータの読み方と注意点をご紹介します.

ワンポイントアドバイス

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はじめに

 Mycoplasma pneumoniaeの培養検査は特殊な培地を必要とし,培養日数も長いため,実施している病院検査室は数少ない.しかし近年,抗菌薬耐性の観点から見直されつつある.本稿では,当検査室で行っている培養検査について,注意点などを含め紹介する.

Laboratory Practice 〈一般・管理〉

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はじめに

 バーチャルスライドとはスライドガラス標本の全体または一部をデジタル画像に変換することで,視野移動や鏡検倍率の変更を可能にし,コンピューター上で実際に顕微鏡を鏡検しているかのように見える“仮想顕微鏡”のことである.医療機関では,病理診断部門においての使用が圧倒的に多く,施設内での病理組織標本や細胞診標本のデジタル化保存および電子カルテとの連携,病理医不在施設における遠隔病理診断や症例のコンサルテーション,さらには医学研究や教育にも使用されており,近年急速に普及している.

ラボクイズ

血液検査 木村 充

2月号の解答と解説 仲村 武

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必要な知識を適切にテーマ化した一冊

 現在,増加し続けている日本女性の乳がん罹患と死亡に対して,世界的に死亡率減少効果が証明されているマンモグラフィによる乳がん検診が行われているところではあるが,日本女性の乳がん罹患が40歳代後半〜60歳代前半までが高率を示していること,40歳代〜50歳代前半においては,“dense breast”率が高いことから,マンモグラフィによるがん検診の精度を補填する方法が模索されている.乳房超音波検査のマンモグラフィ検査との併用はその一つである.実際には従来から超音波併用検診が実施されてきたが,期待された救命効果を証明できなかったのは,その検査法や判定基準が周知徹底されてこなかった点にあると考えられる.

 現在,日本乳腺甲状腺超音波医学会のまとめたガイドライン,判定基準を日本乳がん検診精度管理中央機構(精中機構)が受け継ぎ,講習会による普及活動が進められているが,マンモグラフィに関する知識のように徹底するには,文献・資料・書籍や画像など,非常に多くの場面において間違いのない情報提供が必要である.

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『臨床検査』3月号のお知らせ

あとがき・次号予告 谷口 智也
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 4月号のあとがきを1月に書いています.年明けすぐにやってくるセンター試験の問題をここ数年紹介してきましたが,今年もやっぱり?でした.英語に映画「君の名は。」や「PPAP」を連想させる問題,日本史には「妖怪ウォッチ」や「ゲゲゲの鬼太郎」が登場したり,国語の問題に「おっぱい,おっぱい。」という文章が出題されたりと話題に欠かない試験となったようですが,受験生は大変だったことでしょう.さて,臨床検査技師の国家試験も,この4月号をご覧になっている頃には,そろそろ結果が出ていることでしょう.昨年は,これまで2年連続で80%を超えていた全国合格率も76%と下降し,難しくなったようです.今年の第63回臨床検査技師国家試験はどうなっているのでしょうか.

基本情報

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検査と技術
45巻4号 (2017年4月)
電子版ISSN:1882-1375 印刷版ISSN:0301-2611 医学書院

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