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はじめに
近年,多剤耐性グラム陰性桿菌の増加が,世界的に問題視されている.
米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention)は「ANTIBIOTIC RESISTANCE THREATS in the United States, 2013」1)のなかで,最も警戒レベルが高い耐性菌としてCRE(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae)を挙げている.そのなかで,米国におけるCREによる感染症が1年間に約9,000例存在し,推定で600例の死亡への関与があったと報告されている.
また,WHO(World Health Organization)は,2014年4月に初めて,世界の耐性菌状況をまとめた「Antimicrobial Resistance Global Report on Surveillance, 2014」2)を発表した.このグローバルレポートによると,肺炎桿菌のカルバペネム耐性率が一部の地域で50%を超えている.そして,2014年5月のWHO総会においてAMR(antimicrobial resistance)に関する決議が採択され,AMRに対する対策として,感染制御の強化,抗菌薬の適正使用,耐性菌サーベイランスの強化などについて,加盟国の取り組みを求めることになった.
わが国においても,CREは5類感染症に定められており,重要な耐性菌の1つであることは言うまでもない.CREにおける重要な耐性因子は,β-ラクタマーゼ(extended spectrum β-ラクタマーゼ,AmpC型β-ラクタマーゼやカルバペネマーゼなど)によるβ-ラクタム系抗菌薬耐性であり,特にカルバペネムを分解するタイプ(カルバペネマーゼ)によるものは,抗菌薬治療および医療関連感染対策上重要視すべき耐性機構がある.日本におけるカルバペネマーゼは,欧米とはタイプが違い,IMP型と呼ばれる遺伝子型が多く検出される3).なかでもIMP-6型は,カルバペネム系薬のMIC(minimum inhibitory concentration)値が低く,耐性と判定される基準以下を示すため検出が困難であり,“ステルス型”といわれている.ステルス型はCREの基準を満たさない場合が多く,見逃されている可能性が高い4).
2016年のCLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)ミーティング(開催地:アリゾナ州テンピ)において,カルバペネマーゼ産生グラム陰性桿菌の新たな検出法として,CIM(carbapenemase inactivation method)testが提案された.本法はZwaluwら5)がPLoS Oneで発表した方法であることがここで紹介された.本法の利点として,特殊な試薬や器具を用いないため,どの検査室でも安価で簡単に検査できること,1枚のプレートで8菌株をテストできること,カルバペネマーゼ産生グラム陰性桿菌の検出感度が99%であったことなどが紹介されている.また,2016年6月には,改良型CIM法も提案された.
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