検査と技術 22巻11号 (1994年10月)

病気のはなし

ミオパチー 織茂 智之 , 古川 哲雄
  • 文献概要を表示

サマリー

 ミオパチーとは一次的もしくは二次的に骨格筋が障害され,筋脱力・萎縮が生じる疾患群で,種々の疾患が含まれる.ミオパチーの診断には,遺伝歴,臨床経過,臨床症状などの臨床情報,尿,血液生化学,電気生理学,画像,病理学,遺伝子などの各種検査所見を総合して行うが,このうち生検筋の検索とりわけ筋病理学検査は特に重要である.近年分子生物学的手法を用いミオパチーを遺伝子レベルで解明しようとする試みが行われ,その成果が現れつつある.近い将来原因不明のミオパチーが解明され,遺伝子治療への道が開かれるものと思われる.

検査法の基礎

  • 文献概要を表示

サマリー

 近年,病理組織学的検索は,HE染色をはじめとする形態診断にとどまらず,免疫組織化学的検索や分子病理学的検索など多面的な検索が必要とされるようになっている.

 それらの検索を可能にするために,固定は最初の重要な過程である.今回,日常的に最もよく用いられるホルマリンを主体とした固定法について検討した.緩衝ホルマワン固定パラフィンブロックによる標本は特殊染色,免疫組織化学的染色,もどし電顕法には有用であったが,DNAの抽出においては高分子量のDNAがとれないという限界があった.今後さらに,目的に応じた改良が望まれる.

  • 文献概要を表示

はじめに

 動脈血中の酸素分圧(PaO2)や炭酸ガス分圧(PaCO2)の測定は従来直接動脈血の採血による観血的方法が用いられてきた.しかしこの採血による方法を呼吸管理および手術中の連続的モニタとして活用する場合には採血回数にもおのずと限度がある.また採血行為そのものも危険を伴い容易ではない.さらに未熟児や新生児の呼吸管理の目的で行う血液ガス分析検査ではその侵襲は大きい.しかし1972年西独Marburg大学のAlbert HuchとRenate Huch夫妻によって開発された新生児の血中酸素分圧を無侵襲でしかも連続測定が可能な皮膚電極が発表され,また一方でスイスのRoche研究所のEberhardによって同じころ,しかも同じ原理に基づいた血液ガス分析用電極が発表されるや急速にその臨床応用が試みられた.

 現在,本装置は経皮的血液ガス分圧連続測定装置として採血せずに動脈血の酸素分圧や炭酸ガス分圧の連続モニタとしてICU(特にNICU)や手術室,あるいは回復室などの患者の呼吸管理用機器として普及している.特に未熟児や新生児の呼吸管理には本装置の役割は大きい1)

技術講座 生化学

  • 文献概要を表示

サマリー

 キャピラリー電気泳動は,迅速で再現性のある微量分析の系として,近年注目を集めている.アミノ酸,有機酸,薬物など種々のイオン性物質の分離のほか,蛋白質の分析も行うことができ,髄液や血清などの臨床試料に適用することもできる.キャピラリー電気泳動による髄液や血清の分離パターン(エレクトロフェログラム)は,通常の電気泳動の後のデンシトグラムに類している.ゆえに,試料注入からデータ解析まで“ボタンを押すだけ”の簡便なシステムであり,臨床検査の場への普及が期待される.

  • 文献概要を表示

サマリー

 最近の分子生物学の目覚ましい進歩に伴い臨床検査の分野においても,分子生物学的手法を用いたDNA検査が数多く行われるようになってきた.DNA検査を実施するためには,材料(血液や組織)からDNAを抽出しなければならない.日常の臨床検査でDNA検査を行う場合は,DNAの分離精製を精度よく短時間に行わなければならない.そのために自動DNA装置が必要となるのは必要的である.

 現在市販されているGENEPURETM341(Applid Biosystems社)を実際に使用したので,その有用性と問題点について記述した.

技術講座 血液

赤血球沈降速度測定 亀井 喜恵子
  • 文献概要を表示

サマリー

 赤血球沈降反応(以下,赤沈)の測定方法としてWestergren法とWintrobe-Landsberg法の2法が代表的である.この2方法とも満足のいくものではないといわれるが,生体変化に対しての鋭敏さや測定精度の良さなどから総合的に判断し,国際血液標準化委員会(International Committee of Standardization in Haematology:ICSH)ではWestergren法を国際標準法として推薦した.わが国でもこの方法が広く用いられている.

 赤沈は非特異的な反応ではあるが,種々の検査項目の中では依然として利用頻度が高い.

 本稿では赤沈の臨床的意義および測定上の注意点などについて,自動測定装置での測定経験をも含め述べる.

技術講座 一般

羊水の一般検査 油野 友二
  • 文献概要を表示

サマリー

 羊水と胎児は一体であり,羊水分析による胎児病態の診断は母児管理にとって重要な役割を担っている.今回は羊水分析の中で,一般検査部門で関与するであろう検査について説明する.

マスターしよう検査技術

平衡機能検査 竹森 節子
  • 文献概要を表示

 身体の平衡(バランス)の機能検査には,身体の平衡そのものを検査する方法,眼球運動を用いて検査する方法とがある.

 めまいがすると,ふらふらするので身体の平衡そのものを検査するのは当然である.眼球運動を用いるのはどうしてか? という疑問が出る.内耳で平衡機能に関与するのは,3つの半規管,2つの耳石器である.半規管,耳石器を各々刺激したり,破壊すると,それぞれから眼球振盪(眼振;nystagmus)がみられる.すなわち,外側半規管からは水平性の眼振が,前および後半規管からは垂直回旋性の眼振がみられる.耳石器の1つである卵形嚢からは純回旋性の眼振がみられる1)

生体のメカニズム 遺伝子の異常・10

  • 文献概要を表示

はじめに

 “筋ジストロフィー”とは,骨格筋の変性,壊死を主病変とする遺伝性進行性筋萎縮症の総称である.このうちの約6割を占めるデュシャンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne's muscular dystrophy;DMD)の原因としてジストロフィンが発見され,また,特徴的な3塩基繰り返し配列の異常延長を示す筋緊張性ジストロフィーやホメオボックス遺伝子との関連が示唆される顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーなど,近年の筋ジストロフィーに関する分子生物学的研究の進歩は目覚ましい.ここにその主なものを簡単に紹介したいと思う.

検査データを考える

  • 文献概要を表示

はじめに

 尿沈渣は非常に古い検査であるが,腎疾患のみならず重症の全身疾患を早期診断する契機をも与えてくれる優れた検査である.その中でも,本稿に記載した円柱尿は腎実質の炎症性病変の存在を示す重要な所見である.腎病変の重症度は,尿蛋白排泄量,血尿の程度,円柱の種類と数により,かなり正確に推測することが可能である.

わかりやすい学会スライドの作りかた

  • 文献概要を表示

 学会発表用スライドの中で各種画像や図形,グラフ,カラーなどいろいろな素材を活用することにより発表そのものに,より説得力を持たせることが可能となる.今回は,医学分野において使用される各種画像診断装置の画像のレイアウト方法などを見本スライドをもとに解説し,実践的なスライド作りを紹介する.

検査ファイル

  • 文献概要を表示

 臓器移植のときにドナーとレシピエントの間で白血球の型が問題となることが知られている.この白血球表面に発現されている抗原がHLA(human leukocyte antigen)と呼ばれるものである.HLAには白血球をはじめほとんどすべての細胞表面上に発現されるクラスⅠ抗原と,B細胞・マクロファージなどの細胞表面に限局して発現されるクラスⅡ抗原とがある.

カラードプラ法 佐藤 茂
  • 文献概要を表示

 日本超音波医学会の医用超音波用語によると“カラードプラ法”は「ドプラ法によって得られた流れの情報をBモード像の上にカラーで重畳して実時間で表示する方式」となっており,英語ではdoppler colorflow imagingと呼ばれることが多い.

 超音波ドプラ法とは生体へ放射した超音法が血球などの体内の移動反射体からの反射波がドプラ効果により移動速度に比例した周波数遍移を受けることを利用して,この遍移周波数を検出し血流速度を測定する方法である.ドプラ偏移周波数fdは放射超音波周波数fo,移動体の速度υとすると,fd≒(zυ cos θ)×fo/cとなる.ここでcは生体内の音速,θは超音波ビームと移動方向との角度である.foが2MHz,υ=50cm/sec,θ=0とすると生体内でc=1,530m/secであるからfd=1.31kHzとなり可聴域の周波数である.

  • 文献概要を表示

 動脈硬化症の発症に関連するリポ蛋白として,変性LDL,Lp(a)とともにレムナント・リポ蛋白(RLP)の存在が知られている.Havel Rらは,冠動脈疾患発症に最も危険性の高い脂質がレムナント・リポ蛋白であると報告しており1),動脈硬化の発症ならびに進展に深くかかわるリポ蛋白として注目されている.レムナント・リポ蛋白には,食事由来で小腸で合成されたカイロミクロン(CM)の水解物であるCM・レムナントと,肝臓で合成された超低比重リポ蛋白(VLDL)の水解物であるVLDL・レムナントがある.健常人では,これらRLPは,速やかに肝臓のレムナント・レセプターや低比重リポ蛋白(LDL)レセプターに取り込まれて処理されるため,ほとんど血中に存在しない.ところが,これらリポ蛋白に構造異常があると,レセプターで処理されず,代謝が遅延し血中にRLPが増加し,高レムナント血症を呈する.従来,超遠心操作や電気泳動法により定性的にしか測定できなかったRLPを,コレステロール含量を指標にして,簡便にしかも迅速に定量できる測定法を開発したので,その概略について述べる.

  • 文献概要を表示

 病理医が顕微鏡を用いて,病理組織学的診断を行う場合に最も重要なのは,病変の悪性,良性の区別である.その際判断の基準になっていると考えられるのは,細胞および組織構築の異型であり,腫瘍細胞の密度,腫瘍細胞の分化度,腫瘍細胞の多形性,核分裂像,壊死の有無などが問題となる.電子計算機によって顕微鏡から得られる画像を処理することができるようになってから良性悪性の基準を客観化しようとする試みが多くなされてきている.特に消化管や肝臓では,悪性上皮性腫瘍の客観的な指標を得るための研究が多くみられる.

 具体的には,顕微鏡から得られる画像を処理することによって比較的容易に計測できる指標としては,腫瘍細胞の密度,腫瘍細胞核の面積および真円度および後二者の変動係数などがある.細胞の核面積が大きいと悪性である可能性が高いと一般に考えられている.また,真円度は形がどの程度円に近いかということを数値化したもので,もし腫瘍細胞核が細長ければ,その真円度は小さくなる.一般に上皮系腫瘍では,核が丸くないほうが悪性である可能性が高いと考えられている.また,面積の変動係数が高いと,核の大小不同が大きいことになり,核の真円度の変動係数が高ければ,核に多形性がある,すなわち形のばらつきが大きいことになる.

ラボクイズ

問題:電気泳動パターン

9月号の解答と解説

明日の検査技師に望む

真の医療人として 遠藤 庄蔵
  • 文献概要を表示

 今さら申し上げるまでもないが,現在の医療の中で臨床検査の果たす役割は極めて大きい.臨床検査なくして現代の医療は考えられない.それだけに臨床検査の発展も目覚ましく臨床検査技師に望むものも多いが,反面視る目も厳しい.現代の臨床検査は量から質が問われるようになってきた.医療に限らず技術の高度化は人間性の視点の希薄化に伴い.その結果命の量を増大させることに大きく貢献してきたが,時として命の質を低下させるという場合も生じさせたといわれている.医療人として肝に銘ずべきことであろう.

 臨床検査もシステム化が進みソフトウェアなどが重点的となり,患者を忘れているときがある.現在の医療を一度原点に返って考え直し将来を展望してみたいと思う.

けんさアラカルト

食事と検査値 岡部 紘明
  • 文献概要を表示

 分析技術の進歩は測定法の正確さ精密さを保証できるが,しかし,検体測定以前の状況については検査側では管理できない部分がある.食事は検査値の変動要因の1つである.入院患者に関しては食事制限や絶食など厳密な指示ができるが,外来患者や健康診断では,食事内容や時間が不定で,また,食品の成分は年齢により腸管での吸収差がある.吸収後の代謝過程で異常値を示すこともある.食事による血液成分への影響には,一時的なものと長期的なものがある.農村,漁村など環境による長期間の偏った食生活の影響はよく知られている.食事の影響をみる場合,統計的疫学的な立場から摂取量,種類の影響や,単品(糖・脂質など)の負荷による他成分への影響をみる方法もある.あらゆる食品や全検査項目に関する検索は不可能に近い.また口に入る物としての考えかたからいうと,アルコールや煙草なども検査値に変化を与える.食事の一時的な影響としては,糖類の腸管吸収による血糖値への影響は糖負荷試験として知られている.高齢者では耐糖能異常として現れる.しかし,同じ糖質含量でも図のように,その質によってインスリンの分泌量が異なり,したがって血糖の変動も異なる.食事の成分の中に,ある種のアミノ酸が多いとインスリンの分泌が亢進する.肉類を多く取ってもインスリン分泌は過剰となる.インスリン受容体が血糖を調節する.タロイモやパンではインスリンを多く分泌するが,米食は少ないとの報告がある.

トピックス

脳磁計による脳機能検査 中里 信和
  • 文献概要を表示

 脳から発生する微弱な磁界を測定するのが脳磁図(magnetoencephalography;MEG)で,脳波と異なり頭蓋骨などによるゆがみが少なく,脳の興奮部位が高精度で推定できるのが特徴である.MEG信号は超微弱であり,SQUIDと呼ばれるセンサーで初めて測定できる.SQUIDは超伝導状態で作動するため液体ヘリウム内に置かれるが,MEG測定ではこのヘリウム容器の底に頭部を近づけるだけで非侵襲的に行われる.その際,微弱なMEGに比べてはるかに強い外部磁気雑音を遮断するため特殊な磁気シールド室が必要で,さらに誘発反応の刺激装置には磁気雑音の小さなものが有利である.MEGによって,脳波と同様に自発脳活動や誘発反応が測定可能である1)が,最近ヘルメット型に頭全体を一度に計測する脳磁計が登場し,臨床応用が飛躍的に進歩した(図).

 MEGの結果は,信号波形や磁界分布のみから解釈されるだけではなく,その最大の特徴を生かして脳内の信号源を推定し,その位置をMRIなどの解剖画像上に表示して初めて臨床に役だつ.そのために用いるのが電流双極子モデルであり,MEGの実測値を説明するのに適した1ないし数個の微小な電流素片の位置と方向をコンピュータを用いて計算する.

  • 文献概要を表示

 腫瘍細胞が抗癌剤に対してあらかじめあるいは,治療中に耐性を獲得することがしばしば経験され,悪性腫瘍の治療上の大きな問題となっている.アントラサイクリン,ビンカアルカロイドなどの薬剤に耐性を獲得した細胞が,化学構造,作用機序で類似しない多くの薬剤に対して,同時に耐性を示すことがあり,この現象は多剤耐性(multidrug resistance;MDR)と呼ばれている1).多くの多剤耐性細胞では,mdr-1遺伝子によってコードされるP-糖蛋白と呼ばれる膜蛋白が発現し,薬剤をエネルギー依存性に細胞外へ排出し,細胞内薬剤濃度を低く保つ機序が働いている(図1).mdr-1遺伝子がクローニングされ,P-糖蛋白の構造,機能が明らかにされた2)

 mdr-1遺伝子は第7番染色体長腕に位置し,mRNAは約4.5kbの長さである.その産物であるP-糖蛋白は1,280個のアミノ酸から成り,分子量170kDaの細胞膜を12回貫通している膜蛋白である.細胞外の部分に糖鎖が結合し,細胞内の部分にはATP結合部位が存在している.P-糖蛋白はヒトの副腎髄質,胆管上皮,腸上皮などの正常組織にも発現しており,生理的機能を担っていると考えられている.多剤耐性細胞ではmdr-1遺伝子の増幅が認められることもあるが,発現の調節機構に異常をきたしていることが多い.

  • 文献概要を表示

 光顕レベルでの特殊染色,免疫組織学的染色,最近ではDNA抽出後のサザンプロッティング,PCRなどパラフィン切片はあらゆる新規の方法論にも対応してきた.というよりもむしろ,パラフィン切片の中に包埋されている何十年にもわたる組織を検討するために新たなメソドロジーは常にパラフィン切片への適応に努めてきた.この稿では最近注目されている癌遺伝子,癌抑制遺伝子蛋白の免疫染色について実例を挙げながら述べることにする.同一蛋白質に対する抗体でありながら,用いる抗体によって染色結果が陽性であったり,陰性であったりする場合があることは衆人の知るところである.その詳細はともかくとして,ユーザーとしてはパラフィン切片で染色可能な抗体を適切に選別できるかどうかが大きな分岐点となる.以下,代表的な3社から発売されている癌関連遺伝子蛋白の抗体でパラフィン切片で染色可能(と言われている)なものを紹介する.表1は抗体をその蛋白の機能から分類してまとめたものである.大別すれば癌遺伝子と癌抑制遺伝子の2種になるが,癌遺伝子はさらにc-erbB-2,EGF受容体といった受容体タイプ群,c-fos,c-junなどの核内転写因子群などに細分することができる.

けんさ質問箱

  • 文献概要を表示

 クロージングボリューム(closing volume:CV)測定時,CVが低すぎて測定できない患者が時折みられますが,その場合,検査結果報告は“測定不可”とすべきなのでしょうか.あるいは測定した値をそのまま書くべきなのでしょうか.また,こういった患者をうまく測定するコツや,注意点がありましたらご教示願います.

  • 文献概要を表示

 クロストリジウムはグラム陽性の細胞壁構造を持つにもかかわらず,通常のグラム染色では陰性に染色されやすい性質を持つことはよく知られています.また臨床材料からしばしば分離されるClostridium ramosum,Clostridium clostridiiformeの2菌種は陽性に染まることはほとんどなく芽胞も見つけにくいことからBactmidesとしばしば誤同定されます.最近,嫌気性グローブボックスの中で固定をすれば,これらの菌もグラム陽性に染色されるという記載を目にしましたが,クロストリジウムのグラム染色性について,どの程度まで明らかなのでしょうか,教えてください.

  • 文献概要を表示

 前立腺癌の術前診断には従来から生検組織診および穿刺吸引細胞診が施行されていたが,生検組織診の陽性率が必ずしも満足すべきものでなく,患者の苦痛,合併症などのリスクが大きい欠点が指摘されている.したがって本邦では検査の簡便さから生検組織診に代わって穿刺吸引細胞診が施行される機会が漸次増えている.前立腺細胞診が施行される病変は,結節性病変である.その中で,頻度の高い良性病変は前立腺肥大症である.前立腺肥大症に前立腺癌が合併することがあるが,通常,臨床的に気づかれない程度の微小な癌である.このような癌の潜伏は前立腺に多くみられ,高齢者では数十%の頻度に達する.前立腺の悪性腫瘍のほとんどは腺癌である.組織学的分化度により高・中・低分化型に分けられる.高分化型は,大・小の腺房状(acinar)構造を示す.中分化型は篩状(cribriform),融合腺管(fused glands)を低分化型は充実性(solid),索状(trabecular),硬性(scirrhous)配列を特徴とする.いくつかの所見が混在している例では量的に最も多いもの(優位)によって診断が下される.

 前立腺癌細胞は一般的に他臓器のホルモン依存性癌(甲状腺,乳腺,子宮内膜)と同様に細胞異型に乏しいものが多い.特に高分化型腺癌ではその傾向が強く診断に苦慮する症例も少なくない.

基本情報

03012611.22.11.jpg
検査と技術
22巻11号 (1994年10月)
電子版ISSN:1882-1375 印刷版ISSN:0301-2611 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月21日~9月27日
)