今月の表紙
前立腺癌細胞の細胞診
都竹 正文
1
,
古田 則行
1
,
坂本 穆彦
2
1癌研究会附属病院細胞診断部
2東京大学医学部病理学教室
pp.878
発行日 1994年10月1日
Published Date 1994/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902139
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前立腺癌の術前診断には従来から生検組織診および穿刺吸引細胞診が施行されていたが,生検組織診の陽性率が必ずしも満足すべきものでなく,患者の苦痛,合併症などのリスクが大きい欠点が指摘されている.したがって本邦では検査の簡便さから生検組織診に代わって穿刺吸引細胞診が施行される機会が漸次増えている.前立腺細胞診が施行される病変は,結節性病変である.その中で,頻度の高い良性病変は前立腺肥大症である.前立腺肥大症に前立腺癌が合併することがあるが,通常,臨床的に気づかれない程度の微小な癌である.このような癌の潜伏は前立腺に多くみられ,高齢者では数十%の頻度に達する.前立腺の悪性腫瘍のほとんどは腺癌である.組織学的分化度により高・中・低分化型に分けられる.高分化型は,大・小の腺房状(acinar)構造を示す.中分化型は篩状(cribriform),融合腺管(fused glands)を低分化型は充実性(solid),索状(trabecular),硬性(scirrhous)配列を特徴とする.いくつかの所見が混在している例では量的に最も多いもの(優位)によって診断が下される.
前立腺癌細胞は一般的に他臓器のホルモン依存性癌(甲状腺,乳腺,子宮内膜)と同様に細胞異型に乏しいものが多い.特に高分化型腺癌ではその傾向が強く診断に苦慮する症例も少なくない.
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