けんさアラカルト
食事と検査値
岡部 紘明
1
1熊本大学医学部臨床検査医学講座
pp.868
発行日 1994年10月1日
Published Date 1994/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902136
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分析技術の進歩は測定法の正確さ精密さを保証できるが,しかし,検体測定以前の状況については検査側では管理できない部分がある.食事は検査値の変動要因の1つである.入院患者に関しては食事制限や絶食など厳密な指示ができるが,外来患者や健康診断では,食事内容や時間が不定で,また,食品の成分は年齢により腸管での吸収差がある.吸収後の代謝過程で異常値を示すこともある.食事による血液成分への影響には,一時的なものと長期的なものがある.農村,漁村など環境による長期間の偏った食生活の影響はよく知られている.食事の影響をみる場合,統計的疫学的な立場から摂取量,種類の影響や,単品(糖・脂質など)の負荷による他成分への影響をみる方法もある.あらゆる食品や全検査項目に関する検索は不可能に近い.また口に入る物としての考えかたからいうと,アルコールや煙草なども検査値に変化を与える.食事の一時的な影響としては,糖類の腸管吸収による血糖値への影響は糖負荷試験として知られている.高齢者では耐糖能異常として現れる.しかし,同じ糖質含量でも図のように,その質によってインスリンの分泌量が異なり,したがって血糖の変動も異なる.食事の成分の中に,ある種のアミノ酸が多いとインスリンの分泌が亢進する.肉類を多く取ってもインスリン分泌は過剰となる.インスリン受容体が血糖を調節する.タロイモやパンではインスリンを多く分泌するが,米食は少ないとの報告がある.
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