Neurological Surgery 脳神経外科 8巻9号 (1980年9月)

Decision making 松岡 成明
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 産業医科大学の建学の使命として,「人間愛に徹し生涯にわたって哲学する医師を養成する」と最初に唱われている.このような文句はややもすると口先だけに終わる嫌いがある.医学教育の在り方検討委員会に参画するうちに,そのバックボーンとなるべきものは,学生が医学とは何かを一生涯問い続けるであろうという結論に達した.医学に関する哲学を論議するとき,必ず生命論や科学論が中心となるであろうが,人間とは何か,健康とは何か,疾病とは何か,更に人間の文化や産業,生活等へもその論議は発展せざるを得なくなると思われる.そうなると,人間とは何かという論議にまで発展させ,いわゆる人間学(Humanics)をも含有するものであるべきである.

 われわれは,医学部6年間,短大3年間を通じて医学概論の時間を必須課目として設けている.医学概論とは哲学の講義である.哲学という言葉を聞いただけで逃げ出したくなるであろうが,これも宿命と諦めていただこうと,澤潟先生は述べられている.20年前,半田肇先生(京大)が,「人間一生のうち,哲学と数学を勉強しておくと退屈しませんよ」といわれたことを細々ながら心にとめていたことが,現在の研究,仕事に少なくとも役立ったことは確かである.教育課程のなかで,われわれ自身がまず哲学する習慣をつけ,そのうえで皆とともに対話を行うという形を進めるべきであると思っている.

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I.緒言

 頭部外傷の診内と治療においてcomputerized tomography(CT)の果たす役割にははかり知れないものがある.比較的微量のX線効果を除いて,極めて低侵襲性であり,これまで補助検査としては専ら脳血管撮影や超音波検査にたよってきた急性硬膜下血腫や硬膜外血腫等の脳実質外血腫の発見に威力を発揮するばかりでなく,脳実質の損傷もCTは異常なX線吸収度値を有する領域として描出することが可能である.容易に繰返して検査することが可能であるため,これまでいかなる方法でも知りえなかったダイナミックな頭蓋内変化24,43)を示してくれるCTは,脳外傷の研究—特に脳実質損傷のnatural historyについて—にはいまや欠くべからざる手段となっている.

 またCTの改良と普及には目ざましいものがあり,今日では日本は米国に次いで世界で第2のCT保有国となった.頭部外傷に関するCTの研究も,頭部外傷をCTを通して観察することの目新しさや驚きが報告の動機となった時代を経て,充分に積み重ねられた経験をじっくり整理分析する時代に至っている.この整理された知識が頭部外傷におけるCT判読の常識として第一線の頭部外傷の治療で活かされることになろう.本文においては,頭部外傷のCTの所見を,充分に吟味した最近の文献と,われわれの症例の分析から43)詳述してゆく.

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I.はじめに

 脳静脈・静脈洞血栓症については19世紀前半より種種の記載がある.初期には耳鼻の感染症に続発するものが知られ,のちには産褥期,経口避妊薬内服,血液疾患,手術の合併症として発症するもの,原因不明で特発性といわれるものが多数報告されている.しかも,その病態が障害される血行動態により,軽度の頭痛のみで経過するものから重篤なものまで多様で,診断が困難なことがあり,初期には剖検で確定診断がなされたことが多く致命率の高い疾患とされたが,近来では脳血管撮影で軽症例でも診断が可能となり,死亡率としては低下した.しかし,急性期に重篤な経過をとる症例に対する治療は,現在もなお議論のあるところである.

 著者らは頭痛,片麻痺,けいれんで発症し,頭蓋内圧亢進,出血性梗塞に対し減圧開頭術を行い救命しえた1例を経験し,その病態,検査および経過をふり返ってみたい.

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I.はじめに

 短絡管設置術を行った水頭症患者ではその短絡管機能を注意深く監視し,機能異常が認められれば適宜,適切な処置がなされねばならない.しかし短絡管機能を正確に知ることは至難の技である.例えば現在広く行われている臨床症状の推移とflushing device操作による短絡符機能判定法は意外に信頼性が低く,しかも,その判定は通常短絡管が「開存しているか,いないか」の2段階としてしかなされていない.しかし短絡管機能判定は

 (1)髄液が過剰に排出されている機能過剰

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I.はじめに

 suprasellar germinomaは,第3脳室先端部から視交叉部に原発するtwo cell pattern pinealomaで,ectopic pinealomaと呼ばれており,また景山2,3)らにより尿崩症,視力障害および下垂体前葉機能低下症の特徴的な三主徴を有する疾患名として報告されている.しかし1954年,Russell5)はinfundibular-suprasellar regionに発生するectopic pinealomaは松果体の実質細胞とは無関係であり,松果体部のatypical teratomaと組織学的に同一であると述べ,またFriedman1)が,発生場所の如何にかかわらず,seminomaあるいはdysgerminomaと同様の組織学的特徴を有したものをgerminomaと命名して以来,一般に第3脳室先端部から視交叉部に原発するectopic pinealomaはsuprasellar germinomaと呼ばれている.われわれは手術および剖検により確認された9例のsuprasellar germinomaと,胞体がエオジンに好染する不規則な形をした大型のchorioepithelioma cellに類似する細胞からなる,稀な原発性suprasellar choriocarcinomaの1例を経験したので,これら10例の臨床,病理所見および内分泌学的所見について,文献的考察を加えて報告する.

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I.はじめに

 oligodendrogliomaはglioma全体の約5%を占めるにすぎないが,その臨床的,病理学的特徴によりよく知られている.Cushing8)は"oligodendrogliomas occur almost exclusively in the cerebral hemispheres of adults"と述べている.しかしながら頭蓋内正中部に発育して一般のoligodendrogliomaと異なった臨床像を呈する一群が,midline oligodendrogliomaとして過去わずかながら報告されている.われわれは1972年から1977年の間にmidline oligodendrogliomaの7症例を経験したので報告し,本腫瘍群の臨床像を文献例とともに考察することとした.

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I.はじめに

 頭蓋内悪性リンパ腫は極めて稀な疾患であると考えられてきたが2,12,27),次第に増加傾向にある,それはCT導入以来,この疾患の発見率が高まったためでもある.1965年4月1日以来,京大脳神経外科で経験した頭蓋内悪性リンパ腫19例につき,若干の文献的考察を加え,特にその臨床的特徴に関して検討する.

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I.はじめに

 破裂脳動脈瘤と脳梗塞の関係について述べられた報告は多く存在する1-4)がしかし,これらは脳梗塞の原因として,くも膜下出血,出血時の発作性低血圧,手術的要因等とともに,脳血管攣縮の存在を挙げているにすぎない.われわれはくも膜下出血で発症し,脳血管撮影で攣縮の存在が証明され,それが原因で不幸な転帰をとった44症例について,脳血管に生じる病理組織学的変化を調べ,その詳細な結果を既に報告している5)が,今回はそれら症例の中で,手術的操作やレスピレーターの長期使用などの人為的損傷が加えられていない18症例を対象として,脳の病理学的変化を系統的に調べたので,ここに報告する.

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I.はじめに

 眼窩内腫瘍の中で,髄膜腫は比較的発生頻度が少なく,また眼窩内髄膜腫が視神経を取り巻いて鞘状に視神経硬膜下を広範に進展するものは,多くの髄膜腫が被膜をもって球状に発育するのに対し,比較的特異な発育のしかたと思われる.またこうした視神経周囲髄膜腫では,視力障害,二次的視神経萎縮とともに,いわゆるoptociliary veinsの眼底所見が注目されている.今回われわれはこのような特異な発育を示した眼窩内髄膜腫で,岡時に極めて稀な髄膜腫の家族発生例である症例を経験したので,その経過の概要と眼窩内髄膜腫の発生頻度,部位,臨床症状,診断,髄膜腫の家族発生についての文献的考察を加え,またわれわれの行った経頭蓋到達法による眼窩内腫瘍摘出術についての若干の経験について報告する.

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I.はじめに

 視床と言語機能との関係については以前より議論の多いところであり,一定の見解を得ていない.最近,われわれは右利き交叉性失語症をはじめ,多彩な臨床症状を呈し興味ある経過をたどった17歳男子の右視床部腫瘍を経験し,しかも病理組織学的にteratomatous componentとtwo cell pattern pinealomaの組織像を合わせもつgerminomaであった,従来多くの論議を呼んできた視床部の言語機能および交叉性失語症について検討する機会を得たので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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I.はじめに

 髄膜腫は通常,充実性の腫瘍であり,肉眼的に大きな嚢胞を形成することは非常に稀で,その報告例も少ない.最近われわれは,極めて大きな嚢胞性変化を伴った髄膜腫の1例を経験し,CT scan施行の機会も得られたので,若干の文献的考察を加え報告する.

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I.はじめに

 脊髄硬膜外血腫は古くから知られた疾患であるが,比較的稀であり,そのために診断が遅れ重篤な結果を招くことがある.一般的には早期診断,早期治療により良好な結果を得ることが知られている.一方,手術時期が遅れても比較的良い結果を得る例も見られる.著者らは最近そのような1例を経験したので,予後に影響を与える諸因子の検討を加え報告する.

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I.はじめに

 Mesenchymal chondrosarcomaは稀な腫瘍で,1959年Lichtenstein & Bernstein7)がchondrosarcomaの1つのvariantとして報告以来,現在までに約80例が報告されているが2,3,7,14),このうち骨由来のものが最も多く50例,軟部組織由来のもの30例4,5)で,中枢神経系が関与した症例は更に珍しい.

 われわれは,硬膜に発生し,頭蓋内に発育したmesenchymal chondrosarcomaで,3回の摘出術により18年間生存した,極めて稀な症例を報告するとともに,現在までに報告された症例の文献的検索を行い,本症の臨床および病理学的検討を行ったので報告する.

基本情報

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Neurological Surgery 脳神経外科
8巻9号 (1980年9月)
電子版ISSN:1882-1251 印刷版ISSN:0301-2603 医学書院

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