扉
Decision making
松岡 成明
1
1産業医科大学脳神経外科
pp.787-788
発行日 1980年9月10日
Published Date 1980/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201199
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産業医科大学の建学の使命として,「人間愛に徹し生涯にわたって哲学する医師を養成する」と最初に唱われている.このような文句はややもすると口先だけに終わる嫌いがある.医学教育の在り方検討委員会に参画するうちに,そのバックボーンとなるべきものは,学生が医学とは何かを一生涯問い続けるであろうという結論に達した.医学に関する哲学を論議するとき,必ず生命論や科学論が中心となるであろうが,人間とは何か,健康とは何か,疾病とは何か,更に人間の文化や産業,生活等へもその論議は発展せざるを得なくなると思われる.そうなると,人間とは何かという論議にまで発展させ,いわゆる人間学(Humanics)をも含有するものであるべきである.
われわれは,医学部6年間,短大3年間を通じて医学概論の時間を必須課目として設けている.医学概論とは哲学の講義である.哲学という言葉を聞いただけで逃げ出したくなるであろうが,これも宿命と諦めていただこうと,澤潟先生は述べられている.20年前,半田肇先生(京大)が,「人間一生のうち,哲学と数学を勉強しておくと退屈しませんよ」といわれたことを細々ながら心にとめていたことが,現在の研究,仕事に少なくとも役立ったことは確かである.教育課程のなかで,われわれ自身がまず哲学する習慣をつけ,そのうえで皆とともに対話を行うという形を進めるべきであると思っている.
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