Neurological Surgery 脳神経外科 22巻1号 (1994年1月)

耐用年数 戸谷 重雄
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 ごく最近,私は中国蘇州医学院の学位審査に審査員として参加した.確か数年前にも一度,学位審査に関係してその時の印象を“扉”に書かせていただいた記憶がある.

 今回は午前中は学位審査,午後は学生講義,夜は蘇州地区の地方会に当る会での講演という忙しいスケジュールであった.この夜の会で私は未破裂脳動脈瘤と,それに関連して我が国でも話題になっている脳ドックについて話をした.というのは畏友,杜子威前蘇州医学院院長から,中国でも最近は豊かな人が多くなり,脳ドック的な検査が行なわれる気配が濃厚になってきたことを伺ったからである.因みに最近は上海ではガンマナイフによる治療も,治療費は定かではないが希望者が多いとのことである.

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I.はじめに

 安全,確実な手術のためには外科解剖の知識と理解が重要なことは言うまでもないが,これは術中,手術操作に適確に反映されてはじめて意味のあるものとなる.画像情報の解析により個々の患者についての解剖学的理解が容易となってきたが,術前計画あるいは術中における解剖学的オリエンテーションは,なお少なからず術者の経験や直感に基づいており,常に確実に把握されているとは限らない.しかも,最近とくにもとめられる高次脳機能の保護のためには,個々の患者に関してより精密な機能解剖相関の把握とそれに基づいた手術操作が必要である15,35).これらの問題を克服するため,私達は,術前の画像情報から手術に必要な部分を抽出し,機能マッピング結果などとともに再構成して明確なかたちで術者に提供し,さらに,これらと実際の手術操作位置との関係を術者に明示するシステムを構築してきた.本稿では手術用画像処理システムや手術ナビゲーターなど,パーソナルコンピューターベースで構築しうる脳手術支援システムを紹介し,精密な脳機能解剖の把握や実際の手術への応用について解説する.

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I.はじめに

 クモ膜下出血後の脳血管攣縮は,脳神経外科が著しい進歩をとげている現在でも重要な合併症であり,その予防及び発症後の治療については様々な方法が試みられている.今回われわれはクモ膜下出血後に症候性脳血管攣縮を呈した21例に対し,大量ステロイドの使用を試みた.ここでは,その結果について臨床的検討と共に文献的考察を加え,報告したいと思う.

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I.はじめに

 Battered child syndromeの剖検例の報告は近年本邦においても増加している9).しかしながらこれらの報告の多くは,その直接死因あるいは社会的背景の司法行政の見地からの究明であり23),本症の頭蓋内病変の神経病理学的研究は少ない5,16,20).またこれらの組織学的検索は複数の外傷のメカニズムが加わる重症頭部外傷の発生機序,とりわけ小児の瀰漫性脳損傷の解明に役立つものと思われる10,22).著者らはBattered child sYndromeを呈した8剖検例を集計しその頭蓋内病態の臨床及び神経病理学的検討を行い文献的考察を加え報告する.

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I.はじめに

 前交通動脈瘤(Acom)に対するInterhemispheric approachは,pterional approachと並んで標準的なアプローチであり,高位で後方向きや大脳間裂に大きな血腫がある場合,クモ膜下腔の血腫除去を広範囲に行う際などで広い視野が得られる特徴がある.しかし,時に前頭葉のbridging veinの切断や,interdigitationの強い大脳間裂を分けて前頭葉を圧排する際に,静脈還流障害による脳内血腫や脳挫傷が生じる場合が少なくない.こうした合併症の発生を予防するために,われわれは,両側前頭小開頭後,大脳鎌をその最前端で工夫して切断し,前頭葉が後方へ落ち込むことを利用して,bridging veinを可及的に温存すること,また前頭葉の最前端部のみで大脳間裂を分けて前頭蓋底にそってアプローチし,半球間裂の圧排を少なくすることを試みた.

 これらの症例の手術前後の臨床症状,血管撮影上の静脈還流のパターンおよび術後のcomputed tomography(CT)所見と手術所見を対比して検討した.

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I.はじめに

 悪性脳腫瘍に対する化学療法については,抗癌剤の癌細胞に対する感受性,腫瘍領域での分布なども臨床的効果を左右する因子であり,cisplatinについてもその中枢神経における分布が報告されている18,22).これらの分布以外に髄液への移行は,髄腔内播種を示す悪性腫瘍細胞に対しても,またcisplatin投与による痙攣発作18,24)などの中枢神経に対する副作用の観点からも重要であり,投与経路として静注法では,正常動物を用いた実験11)や,あるいは1例のglioblastoma1),neuroblastoma5)や再発ependymomaの小児例6),大量の放射線照射後のprimary germcell tumor9)などからの臨床報告があるが,まとまった臨床報告はない.またcisplatin7,14,17)やetoposide8,21)の動注経験が報告され,それぞれの副作用・安全性について論じられており,最近ではMadajewiczら16)のetoposideとcisplatinの併用動注の効果,toxicityについて報告されているが,やはり髄液への移行はまだ報告を見ない.今回私たちは現在施行している悪性神経膠腫に対するetoposideとcisplatin併用によるマイクロカテーテルを使用した超選択的動注療法19)の治療時における血清,髄液濃度を調べ,platinum(以下Ptと記す)の動態を調べるとともに転移性脳腫瘍におけるcisplatin療法での静注あるいは頸動脈動注例の髄液移行と比較検討した.

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I.はじめに

 非外傷性のくも膜下出血の原因の多くは,動脈瘤や動静脈奇形などであり,脳血管撮影により出血原因が確定される.しかし,少数ではあるが初回の血管撮影で出血原因を確定しえない症例もみられ,このような症例の治療方針や再検査の必要性の有無などについて議論がなされている1-15)

 いわゆる“出血源不明のくも膜下出血”は,再出血の危険性は低く,予後も良好であるとされている1-3,7,10,11).しかし,脳血管撮影で出血源が描出されない症例のなかには,動脈瘤などが潜伏しているものもあり,このような症例が,みすごされ重篤な転帰となることは,臨床の場においては,厳に避けなければならないことである2,4,5,8,11-15)

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I.はじめに

 頭部外傷に起因する硬膜外血腫は,急性の経過をとるものが大部分であるが,なかには出血量が小量であるため無症状に経過して,その後石灰化あるいは骨化するものがあることが知られている2,5,7,15,16).今回われわれは手術を要しない程度の小量の硬膜外血腫例で,経過中に骨化を示し,mass effectが消失しなかった小児の2症例を経験し,治療方針に関して若干の知見を得たので報告する.

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I.はじめに

 全ての脊椎骨折のうち約25%が上位頸椎(C1—C3)に関連して発生するとされ15),さらにこの部位には環椎,軸椎といった解剖学的に特殊な骨が存在するため特徴的な骨折が生ずる.前方亜脱臼を伴う軸椎の椎弓根部骨折は絞首刑によって発生するものと類似していることからhangman's fractureと呼ばれ,全脊椎骨折の4-7%を占めると報告されている10,15)

 また,椎骨動静脈瘻は現在まで約100例の報告がなされ1-9,12,13,17),その多くは穿通性損傷を原因としており,hangman's fractureのような鈍的外傷に伴って生じたとする報告は稀である.最近,われわれは環椎骨折および軸椎脱臼骨折にともなう椎骨動静脈瘻を経験し,外科的にtrappingを行い良好な結果を得たので,診断および治療上の問題点を中心に考察を加え報告する.

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I.はじめに

 乳幼児慢性硬膜下血腫の多くは,硬膜下穿刺,穿頭術もしくは硬膜下腔腹腔シャントによって満足すべき結果が得られている.しかし,先天奇形や頭部外傷など先行する疾患による脳萎縮が著明な例では,頭蓋脳不均衡状態のため治療に難渋させられることが稀ではない.われわれは頭部外傷後の広範な脳萎縮に続発した慢性硬膜下血腫に対し,前出の各種治療を試み失敗に終り,最終的に頭蓋脳不均衡の是正のため頭蓋縮小術(Reduction Cranioplasty)を試み満足すべき結果を得たのでその詳細につき報告し考察を加えた.

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I.はじめに

 1972年Tealら14)が,内頸動脈より分岐し脳底動脈に直接終わらず小脳動脈へ終枝する異常血管をpersistent trigeminal artery variant(PTAV)と命名して以来今までに多くのPTAV例が報告されている.また,persis—tent trigeminal artery(PTA)に海綿静脈洞内内頸動脈瘤が合併しやすいことは一般に知られているが,PTAVに同部動脈瘤が合併した報告はわれわれが知るかぎり,3例のみである.今回著者らはくも膜下出血にて発症し,PTAVの海綿静脈洞内起始部に動脈瘤を合併した1症例を経験し,直達手術を施したので文献的考察を加えて報告する.

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I.はじめに

 最近,脳原発の悪性リンパ腫が増加しているが7,8),われわれは,海綿静脈洞症候群にて発症した頭蓋底部原発と思われる悪性リンパ腫を経験した.咽頭・副鼻腔からの浸潤例を除くと同部原発の悪性リンパ腫は極めて稀であり9,13),症例を呈示するとともに,このような症例を含む脳神経外科領域の悪性リンパ腫の治療方針について言及したい.

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I.はじめに

 Multicentric gliomaは1896年のGowers5)の報告以来1-10%とされているが報告者によって差がみられ本邦では比較的稀である.RussellとRubinstein17)によると脳実質内やクモ膜下腔との連続性をもたず脳内転移の否定できるものをmulticentric gliomaとしている.最近,われわれはテント上3カ所に発生したmulticentricgliomaを経験したので報告する.

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I.はじめに

 遺伝性出血性毛細血管拡張症(Rendu-Osler-Weber病,以下R-O—W病と略す)は(1)皮膚・粘膜の多発性毛細血管拡張(telangiectasia),(2)病巣からの反復する出血,(3)家族内発症を3主徴とする稀な遺伝性血管形成異常である7,9,13,16).とりわけ肺動静脈瘻は5-50%19)に合併して神経症状の主要な病因の1つになっているが16),脳動静脈奇形などの脳血管病変は散発的に報告されているにすぎない20).最近,私たちは肺動静脈瘻の治療中に脳動静脈瘻と多発性脳動静脈奇形が指摘されたR-O—W病の小児の1治験例を経験したので,若干の文献的考察を行い報告する.

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第2回アジア・オセアニア頭蓋底外科研究会

(AOICSBS)は,1993年9月2日より3日間北京市において王忠誠教授の会長のもとに行われた.北京に到着すると,2000年オリンピックを中国に誘致するための歓迎のたれ幕が至る所に掲げられていた.北京市内の高層建築は昨年に増して盛んであり,夜昼共に街中の人の動きも活発であった.

 研究会の会場は天安門広場に近い北京飯店で,日本からの医師参加者は推定40名弱であり,昨年この地で行われた中日友好脳神経外科シンポでの日本からの参加者に比べるとはるかに下まわった.しかし,昨年の秋に中国と韓国の国交正常化が行われたため,中国を初めて訪れた韓国脳神経外科医は多く,また,北京での脳神経外科関係の会に台湾からの脳神経外科医が参加したのも初めてのことであり,記念すべき会となった.中国以外の参加国は招待も含め,日本,韓国,台湾,インドネシア,インド,パキスタン,サウディアラビア,米国,ドイツ,オーストリアであった.

基本情報

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Neurological Surgery 脳神経外科
22巻1号 (1994年1月)
電子版ISSN:1882-1251 印刷版ISSN:0301-2603 医学書院

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