保健婦雑誌 54巻13号 (1998年12月)

特集 健康な暮らしを守る住まい

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「住まいと健康」問題の特徴と日本の特殊性

 「住まいと健康」問題を解説するとき,まず次のような問いを投げかけることが多い。建物とその利用者の健康との関係を考えるとき,その建物が事務所ビルである場合と住居である場合でどのような違いがあるだろうか。「住まいと健康」問題は「ビルと健康」問題とどう異なるかという設問である。いくつかある回答のうち以下の2つが「住まいと健康」問題の特徴をとくに現しているように思う。1つは「ビルには『ねたきり老人』がいない」。いま1つは「ビルにはビルを管理する専門業者がいる」である。

 前者は利用者の多様性の問題だが,不特定多数が利用するビルの方が利用者は多様であると一般には考えられているだろう。しかし健康状態という視点でみれば,新生児や乳幼児から療養者や「ねたきり老人」まで,住居の居住者の方がはるかに多様である。

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 私の設計事務所で行っている仕事は,他の建築設計事務所に比較して,少し特殊な分野に入るのかもしれない。設計を依頼してくる多くの方がアレルギーや,アトピーに悩んでいたり,家族にそのような症状の人がいるといった状況が多い。そこで,その解決に向けて建築と健康の関わりや,建材と環境がどのように関連があるのかについての調査や,建築現場で使われる素材の構成についても製造メーカーに問い合わせを行う。そこでの成分開示が十分行われない時は当然使用は差し控える。そこで,安全な素材選定と調達も重要な業務になっている。

 さらに,国内外の建材の安全性に対する動向にも配慮しながら,建築と健康には大きな相関があることを十分に認識し,今後もこの点について調査を進めていく。そこで,試行錯誤しながら実際の建物造りから見えてきていることを報告する。

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 筆者が住環境の問題に関心を持つようになったきっかけと筆者自身の体験や感じたことを通じて,保健婦が住環境の問題に取り組む意味や保健婦にできることを考えてみたのでここに述べたい。

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より健康的な居住環境を

 高齢社会の到来に伴い,住み慣れた地域で暮らし続けることの大切さが見直されてきている。人間の健康は,衛生的で快適な居住環境によって維持される。保健や福祉・医療など多くの問題を抱える中で,高齢者・身体障害者とそれを取り巻く家族が,健康で安全にそして快適に暮らし続けられるよう,住居内の安全の確保,高齢者・身体障害者の自立および介護負担の軽減を社会全体で考えていく必要がある。保健・福祉の連携による支援体制や,医療機関との関係作りを進めると同時に,住居を中心とした健康問題の発生の予防に対しても,今後積極的に関与していかなければならない。

 また,それぞれが置かれている状況を把握・評価し,適切な居住環境を作り出すためには,専門家による的確なアドバイスが必要である。

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はじめに

 筆者の専門は建築の設計監理である。そして本来の業務とは別に,建築相談など地域への活動も積極的に行っている。その1つに「住まいと福祉の会」がある。会員は建築士や教員,医療,保健,福祉,自治体職員,家具製作者など多職種にわたる。毎月の例会では改善事例の紹介や福祉問題をテーマとした幅広い議論を重ねており,時には見学会や研究者を招いての講演会なども行っている。また,住まいづくりへの助言や高齢者・障害者をとりまく生活環境の改善にも長年取り組んでおり,近年は住宅改善の講演依頼や自治体からの委託により住宅相談なども引受けている。

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生活環境保健サービス事業

 保育や高齢化対策,生活環境など日常生活のさまざまな問題を解決するためには,関係する職員や区民,地域の関係団体がともに協力することが大切である。

 一般的には住まいなど生活環境の問題は改善しがたく,現状のなかで我慢するしかないと思われがちである。しかし,必ずしも改善不可能ではなく,多くの場合は少なくとも現状より良い状態になっている。品川区ではより良い生活環境が確保できることを目的に,保健所の環境衛生監視員も一員として加わり,図1のように生活環境保健サービス事業を展開している。

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はじめに

 高齢者・障害者の生活支援のため,在宅福祉の充実が叫ばれて久しい。しかし,当事者が生活を送る場である住宅環境の整備は個々人の責任に負うところが大きく,そのニーズも顕在化していない状況であった。また,日常的に訪問・支援活動で関わる保健婦やホームヘルパーは,その問題に気づき始めていたが具体的な支援策もなく,保健・福祉分野だけで対応することへの限界を感じていた。

 津山市では,建設省補助事業である地域住宅計画(HOPE計画:Housing with proper environment)の策定をきっかけとして,高齢者・障害者の住宅改造を考える市民参加型の研究会「津山まちづくり市民会議福祉住宅部会(以下,「部会」という)」が発足した。部会のメンバーは,高齢者・障害者の住宅設計や改造,施工に関心のある建築関係者や,保健・福祉の現場で住宅環境整備の必要性に迫られた保健婦・OT・ホームヘルパーなどの専門職,一般市民であった。この部会では,平成3年度から活動を開始し,部会員である異業種(建築・保健・福祉・医療の専門職)が,ボランティアの立場で,リフォームチーム(以下,「支援チーム」という)をつくり,訪問,改造のプランニング,簡易な施工に関わってきた。住宅改造を支援する活動を通じて,その重要性と課題を実感しながら,公的制度の充実や創設に向けた働きかけを行った。

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筆者の業務紹介

 全国にも例のない福祉用具相談員制度や,在宅福祉の中で町独自の役割を担当している住宅改良ヘルパーを養成し育成した経過を述べる前に,筆者の業務を紹介したい。

 筆者の担当は在宅ケアを中心とした福祉業務全般にわたり,保健婦の資格を有する社会福祉主事の仕事という表現が適するような内容となっており,現在の業務概要としては次のようになる。

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 現在使われている住宅建材の多くは化学物質です。それもその中に有害な物質が数多く含まれています。しかし,その成分や製造方法はほとんど知られされていません。成分そのものを明らかにしない建材メーカーも多数あります。室内に長時間滞在する住空間ではその化学物質が原因で,起きてはいけないことが現実に起きているのです。それは新築病(シックハウスシンドローム)といわれる,得体のしれない症状です。実は長く調べていくと科学的に現段階では十分には解明されていませんが,建物を造るとき,入居時期,仮住まいの状況などを総合的に判断して問題点が浮き彫りにされます。夢を買う,待望の新居が人の健康に影響があることが,徐々にわかってきています。

 環境先進国のドイツでは今日本で議論していることが,解決のための手法として,おのおのの住民に定着しています。また,それに対する行政側の判断や,業界の取り組みも違います。

連載 ヨウスケとトシヒロのこの人に聞きたい

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●“地域で住民とともに進める活動を大事に”を提唱・実践している山根・岩永両氏をホストに,健康に関する活動や地域での取り組みを精力的に行っている方をお迎えして,その魅力を探るのがこの連載です。今回は,中野区立しんやまの家をはじめとするB型高齢者福祉センターでフラダンス教室,ナイスミドル講座などさまざまな事業を展開されている佐谷さんをゲストにお迎えしての2回目です。(本誌編集室)

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 本連載は,状況設定型の国家試験問題(1998年2月23日実施,第84回)を題材に,単なる受験指南ではなく保健婦活動の基本を確認することを目指しています。今回は,未熟児養育制度と保健婦の関わりについて前半で解説いただくとともに,後半ではお二人の保健婦に“設定された状況で活動を考える思考プロセス”をご執筆いただきました。(本誌編集室)

連載 島だより—三宅島の子育て支援・9

連載の最後に 浅沼 奈美 , 新井 信之
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活動をもう一度振り返ると

 9回にわたり,三宅島の多くの人たちが子供たちと関わっている様子を伝えた。それぞれの関係機関が理想をもって三宅島の子供を育てている。その中で保健所の役割を振り返りたい。

連載 ニュースウォーク・9

家族介護給付の変身 白井 正夫
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 最近,「園部方式」という言葉をよく聞くようになった.その名の通り京都府園部町が発信地だ.

 介護保険は訪問看護や施設入所などサービスの現物給付が原則で,自宅で介護する家族への現金給付を認めないことで組み立てられてきた.家族介護への現金給付も選択できるドイツの介護保険とは決定的に違い,日本の介護保険の特徴になっていた.

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はじめに

 今年の世界エイズデー(12月1日)は世界中が若者をターゲットにキャンペーンを実施することになっている。また,日本において厚生省は世界エイズデーのテーマを「時代が変わる,君が変える〜大切な人と生きるために」と決定した。

 HIV感染者は,20〜30歳代で特に増加しており,その中でも異性間の性的接触が主流を占め,今や“誰もが感染するかもしれない”という状況である。こうした状況に対して保健所では,エイズ相談や抗体検査をはじめ,積極的な啓発活動やPR対策に創意工夫が求められている。

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基本情報

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保健婦雑誌
54巻13号 (1998年12月)
電子版ISSN:2185-4041 印刷版ISSN:0047-1844 医学書院

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