Brain and Nerve 脳と神経 27巻2号 (1975年2月)

アトラス 神経筋疾患の臨床13

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 前回に引続き,筋病変における筋外因子に着目するが,既に本シリーズでは多発性筋炎症候群・重症筋無力症その他の項でもその一部にふれたので,今回は主として内分泌疾患に伴う神経筋病態につき検討した。

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I.はじめに

 けいれん発作は,過度に強い刺激に対する反応として生ずる神経系(とくに運動神経系)の過剰な放電発射の一般的表現である。けいれん発作は,何らかの異常興奮状態の発生を知らせる警鐘であり,臨床家はけいれん発作をきつかけとして,患者の疾患状態に細心の注意を払うようになる。

 しかし,けいれん発作そのものは,多くの場合1〜2分ないし数分以内に自然に停止することが多く,そのためだけで命を落すことは少ない。つまり,多くの場合,けいれん発作は脳の異常興奮過程の存在を知らせる警鐘ではあるが,それ自身が治療の直接対象となるわけではない。

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I.はじめに

 進行性筋ジストロフィー症の深部腱反射が低下または消失することは古くからよく知られている。しかし,その頻度と順序についての報告はあまりみられていない1,10)。また,表在反射については正常であるとされているが,その詳細についての報告はみられない。そこで秋共は深部腱反射及び表在反射について調べ,これらと進行性筋ジストロフィー症の機能障害度との関係について検討を加えたので以下に報告する。

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I.はじめに

 頭部外傷後に生じる諸種変化の中で,電解質の変化に関する詳しい報告はあまりなされていない。今回われわれは,過去3年間に当救急医療センターに入院した頭部外傷患者の中で,明らかな電解質異常を示し,これが頭部外傷後に起こつた症例について考察を加えてみた。

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I.はじめに

 脳組織は他臓器にくらべて酸素消費量が大きいため,脳循環障害により脳hypoxiaにおちいると,すみやかに不可逆性変化を生じ,その結果,重篤な神経脱落症状を呈してくる。従つて,脳虚血発作急性期における虚血脳局所循環と代謝の変化を適確に把握することは,重要な課題である。

 最近の脳循環代謝検査法の進歩は,脳虚血急性期における虚血脳局所を中心とした脳循環と代謝の変化を次第に明らかにしてきたが,一方,さらに複雑な問題を提起したのも事実である。すなわち,脳虚血急性期における虚血脳局所血流と代謝の解離4)あるいは,虚血脳周辺部に認められる脳腫脹,脳浮腫による組織圧の上昇と脳循環の関係など,新たな問題が提起されている2)

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I.はじめに

 生体の各組織はそれぞれ固有の遊離アミノ酸パターンを有し,それは各組織の機能あるいは状態と何らかの関速を持つていると考えられる。末梢神経のアミノ酸に関しては,甲殻類およびラット,ニワトリなどにおける検索が僅かにみられるのみで8,11,13),ヒトの末梢神経のアミノ酸パターンに関しては報告がみられない。種々の研究方法の開発,普及により,ヒト末梢神経においても今後は形態学的な追求のみならず,生化学的変化の検索も必要とされるようになると思われる。

 今回われわれは量的に充分採取が可能である剖検例の大腿神経を対象として,ヒト末梢神経のアミノ酸パターンがいかなる特徴を有しているかを知るために検索を行なつた。本検索では臨床的に末梢神経症状を示さなかつた症例のみを用いたが,これは将来末梢神経障害時の変化を知るための予備的知識となり得ると考えられる。

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I.はじめに

 小児がんは,その治療が,いま,わが国では大きな医療上の問題となつているばかりではなく,小児は可能性に満ちた次代のにない手であり,小児がん患者の親の精神的な苦悩は測り知れず,さらにまた,治療に要する経済的負担は,いまや大きな社会問題となりつつある。

 昭和43年11月には,わが国で「がんの子供を守る会」ができ,昭和44年1月1日から,小児がんの全国登録が行なわれるようになり,ようやく,わが国における小児がん患者の実態が明らかにされつつある。ところが,小児がんの中で,脳腫瘍が重要な部分を占めていることがわが国では意外に見過ごされている傾向にあるのは残念なことである。わが国においても,脳腫瘍は小児がんの中で多く,例えば,昭和47年の小児がん登録数15)を,がんの種類別にみると,脳腫瘍(129例,11.2%)は白血病(524例,45.4%)に次いで第2位であり,また,小児悪性固型腫瘍の発生部位別の順位をみても,昭和44年から昭和47年まで,脳がいずれも第1位を占めている。

 そこで,小児がんの中で,脳腫瘍は忘れてはならない重要なものであることを改めて強調するとともに,小児脳腫瘍の今後の治療の一助ともなるよう,われわれが1938年から現在まで経験した15歳未満の小児脳腫瘍について,種々の面から考察を加えたいと思う。今回はまず,小児脳腫瘍の統計的事項について述べたい。

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I.はじめに

 視床出血は脳内出血の13〜31%を占め4,11),けつして稀な疾患ではない。近時,頭蓋内出血性疾患,すなわち破裂脳動脈瘤,脳動静脈奇形,小脳出血,皮質下出血ならびに一部の被殻出血等が外科的治療の対象となり,その手術成績も向上してきている。したがつて,これら疾患と視床出血とを迅速かつ適確に鑑別することはきわめて重要である。

 従来視床出血の診断は,臨床症状の詳細な観察とその剖検所見を対比し,そこから得られた情報を臨床例に応用するという帰納的な方法によつてなされ,視床出血に特徴的ないくつかの神経症状が報告されている2,3,5,6)。しかしながら視床出血急性期例では脳卒中発作の一般症状を呈することが多く,神経症状によつて本症を診断することは困難な場合が少なくない。そこで脳血管撮影法を中心とする各種の補助診断法が必要となつてくる。

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I.はじめに

 有機りん剤(OP)は殺虫剤として広く家庭園芸にまで使用され,ときに視神経を主とする中枢神経や末梢神経および自律神経の各系に障害をおこすことでしられている。著者はさきに26名のOP中毒患者につき脳波的見地からの検討を報告した20)。そのうちの1名は,約12年前に自殺を目的としてparathion (P)を服用した症例であつた。この患者は以下にのべる理由により,自殺未遂の前後に精神科専門医による精査が行われていた。しかしP服用の事実がかくされていたために,ナルコレプシーと診断されていた。このことはOP中毒症の経過についていくつかの示唆を与えるものと思えるのでここに報告する。

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I.はじめに

 われわれが行なつている要素別眼性刺激による脳波賦活(要素別賦活)13,14)は,1.視覚感覚賦活,2.眼球運動賦活,3.混合賦活,の3つから成りたつている。1は開瞼した一定の状態で点滅,色,図形の単独ないしは組み合わせ刺激による賦活法13,14)であり,2は暗室での閉・開瞼,開瞼させておいて客方向への眼球偏位・運動を行なわせる賦活法14,15)である。そして3は,これら両賦活を同時に組み入れた方法10,11)である。視覚感覚賦活と混合賦活の方法,およびそれで賦活効果がみられた症例の臨床・脳波所見についてはすでに報告した10〜14)

 本稿では,視覚感覚賦活で賦活効果がなく,限球運動賦活でのみ持続する全汎性発作波が誘発された眼球運動型眼性てんかん14)3例の臨床・脳波所見について報告する。類似症例の報告は極めて少ないというだけでなく,その臨床・脳波所見はてんかんの発現機序を理解する上にも示唆に富むように思われる。

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I.はじめに

 パーキンソニズムに対するL-Dopaの効果が確立されてより,本症候群は"Striatal dopamine deficiency syndrome"8)とさえ呼ばれるに至つている。しかし,L-Dopa療法には無効例ないし効果不十分の例もかなりみられ,しかも大量投与に伴なう副作用が高率に出現することから1,4,20),従来の抗コリン剤,アマンタジンなどのほか,諸種の酵素抑制剤なども併用の試みがなされてきた。L-Dopa投与の目的は勿論線状体におけるDopa—mine (以下DA)を高めることにあり,従つてL-Dopaの効果を高め,副作用を少なくする目的で,Monoamine oxidase抑制剤1),Catechol-O-methyl transferase抑制剤6,9),Dopamine-β-hydroxylase抑制剤13)なども試みられたが,著るしい効果をうることはできなかつた。それは摂取したL-Dopaの大部分が腸管,肝,腎,肺など脳以外の部に多量存在する脱炭酸酵素により脱炭酸され17),DAあるいはさらに進んだ代謝産物へと代謝されてしまうためである(第1図参照)。そして末梢におけるDAは,脳血液関門を通過しえないため,脳内DAを高めることはできず,単に末梢における作用(副作用)を示すのみという臨床上不都合な結果をもたらしている。そこで末梢におけるDopaの脱炭酸を抑制するのが最も脳内DAを高めうることが見出され,多くの脱炭酸酵素抑制剤の検討から,臨床応用可能で強力な末梢性脱炭酸酵素抑制剤としてL-α-hydrazinomethyldopa(以下MK 486と略す。第2図)が浮かび上がつてきた。

 MK 486はそれのみの投与では何らの明らかな作用はみられないが,アミン前駆物質とくにL-Dopaの作用に強く影響を与え,末梢におけるDopa脱炭酸酵素抑制の結果,脳内アミンを著るしく高めることから,パーキンソニズムにおけるL-Dopa療法において,その効果を著るしく高めるものとして臨床応用が試みられるに至つた3,11,20)

症候群・徴候・30

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 普通Arnold-Chiari奇形などの名で呼ばれることが多い。この奇形は小脳下部(虫部と扁桃)並びに延髄の形成異常と共に,これらが発育段階で大後頭孔より下方に引き延ばされ上頸部に存することから成つている。頭蓋内圧亢進などに伴つてみられる小脳扁桃の大後頭孔以下への降下とはこの延髄,第4脳室底自体が小脳下端と共に頸椎管腔内に下降していることから鑑別される。もし,椎管腔を開いてみたとすれば,延髄背面が第4脳室の開孔部の下で頸髄背面を被うように隆起(bosse)としてみることができ,これは重要な所見で,矢状断層気脳写でも認められる。第4悩室脈絡叢はしばしば小脳下端に付着してみえる。

 1894年,Julius Arnold (独)は腰仙部髄膜脱Meningozeleの新生児で,小脳が大後頭孔下に舌状に上頸髄背面を被つているのを見出し,翌1895年,Hans Chiari (独)は水頭症63例の分析で後脳の変形を詳述して3型に分けた。小脳下部が舌状に上部椎管腔内に垂れ下つているが第4脳室は大後頭孔以下に下つていないもの(Ⅰ型),第4脳室下部も延びて頸椎管腔内にあり,第4脳室が大後頭孔下で開いているもの(Ⅱ型),小脳全体が頸部脊椎二分症の中に逸脱しているもの(Ⅲ型)である。その後の幾人かの人々特にRussell and Donald (1935)によりArnold-Chiari奇形がChiariのⅡ型であることを明らかにした。しかしこのような後脳が大後頭孔内に陥入するのは水頭症の結果でなくして,脊髄,髄膜,根神経などによる固定によつて下方に牽引され移動した結果であると考えたのは1942年,LichtensteinやOgryzloによるとされている。

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 診断・治療技術の進歩と,人間の生活様式の変貌に伴い医療の対象となる疾患の種類も次第に変化し,脳血管障害・頭部外傷・各種の中毒や脳の慢性器質性障害が医療の中で占める比重は時と共に重くなってきた。その結果,患者に苦痛を与えることなく脳の機能状態を客観的にとられる脳波検査はその必要性を益々増し,現に広く用いられるようになってきている。しかしその内容まで立ち入って検討してみると,時には,名ばかりの検査であったり,誤った診断が行なわれたりしていて,全国的な水準は未だ充分に高いとはいえない。

 脳波検査の普及に伴い,その解説書にはかなりすぐれたものがわが国でもいくつか出版されている。読者はこれを読むことによつて脳波全般についての知識を得ることはできるが,さて現実に患者の脳波を目の前に置いてそれをどのように判続するかという段になると戸惑いを覚える人が少くないようである。幸いすぐれた指導者が傍にいていちいち教えてくれる場合はよいが,このようなことは一般には望みにくい。

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 微量の生体内物質なり薬物の代謝物を測定するのに,従来のBioassayや分光器に頼らずガスクロ(GC)を利用しはじめたのは,欧米でもここ数年のことである。この間にマススペクトロメトリー(MS)が著るしく発達し,GCとMSを結合させ,さらにcomputerと連同させて一連のsystem化が実際にBiomedical fieldで利用されはじめたくなると正にそれは現時点でのことであつて,とくにわが国ではこれからの問題であるといえる。しかるにこうしたGC-MS Systemを駆使した300名余りの研究者の成果を背景にした方法論,応用面での代表的業績がすでに成書として刊行されたことは大きな驚きであると同時に喜びである。専門的視野から眺めても,本書は単にGC-MSの一般論を紹介しているのではなく,GC-MSの新しい利用法と応用に関連させたtopicを集録している。すなわち大別して1.Mass fragmentography (MF)の原理およびinstrumentationと2.本法を応用した生体内indole alkyl—amines, Fals Transmittersの測定ならびにPsycotropicsの微量分析によるPsychopharmacology領域での応用,長年の希望であつたアセチルコリンの機器分析による測定,さらに最近の話題である3.Chemi—calionizationの利用法と4.GC-MSにおけるStable isotopeの使用,などに集約され,巻末にはMFを応用した1973年までの全論文が紹介され,研究上極めて有意義である。それにしても常に思うことは,こうした機器分析へsampleをもつてくるまでの過程,すなわち,生の試料からいかに効率よく,簡易に,しかも再現性のよいprocedureを用いたかということであり,これが微量測定を可能にする重要な要因の一つだと思われる。つまり常に新しい測定法とは,sample以後に始まる問題ではなく,目的物質を含有する試料そのものから出発するものである限り,いつかこれらの問題もそつくり抱え込んだ応用編の完結が強く望まれるものと思われる。

症候群・徴候・31

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 この症候群を現代流に「軟口蓋・喉頭片麻痺」といつてしまえば,何の変哲もない「ノド」の一側の麻痺にすぎないと,極めて簡単に聞きすごされてしまうが,軟口蓋と声帯に限局した運動麻痺は解剖学的に考えれば,いくつかの注目すべき問題を含んでいる。

 Avellis (独,1891年)がこれに関する論文を表わした当時においては,軟口蓋が顔面神経によつて支配されていると考えられていたが,これは現在において既に信ずる人はない。しかし,軟口蓋の知覚支配が舌咽神経によるものであつても,その運動支配もが舌咽神経によるものであるかについては長い歴史的な論議のあるところで,これは副神経延髄根(内側枝)によるとされている。今からみれば,この問題に火をつけたのがAvellisであるとみることが出来る。彼は150例の喉頭麻痺患者の中に口蓋垂と軟口蓋が健康側にひかれる合併例10例を観察した。

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編集後記 塚越 廣
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 「脳と神経」から「脳神経外科」が分離して1年半を経過した。最近また「神経内科」が創刊,従来からの「臨床神経学」「脳と発達」「精神神経学雑誌」,「神経研究の進歩」「Folia Psychiatrica et Neurologica Japonica」などを加えれば,我が国における神経学の専門雑誌も多彩となつてきたことがわかる。かって神経学関係の雑誌は「脳と神経」誌のほか,1,2を数えるにすぎなかつたことを思うと隔世の感じがする。

 我が国において神経学関係の雑誌が多くなつたことは,それだけ神経学に関する医学関係者の需要が多く,また関係論文も多くなつたことを示すものであろう。それぞれの専門雑誌が,おのおのその特色を出しながら,よい論文を掲載してゆけば,それだけ神経学に関する我が国の水準は高まることになり,それはまた投稿される論文の質を向上させることに連なるであろう。

基本情報

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Brain and Nerve 脳と神経
27巻2号 (1975年2月)
電子版ISSN:2185-405X 印刷版ISSN:0006-8969 医学書院

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