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微量の生体内物質なり薬物の代謝物を測定するのに,従来のBioassayや分光器に頼らずガスクロ(GC)を利用しはじめたのは,欧米でもここ数年のことである。この間にマススペクトロメトリー(MS)が著るしく発達し,GCとMSを結合させ,さらにcomputerと連同させて一連のsystem化が実際にBiomedical fieldで利用されはじめたくなると正にそれは現時点でのことであつて,とくにわが国ではこれからの問題であるといえる。しかるにこうしたGC-MS Systemを駆使した300名余りの研究者の成果を背景にした方法論,応用面での代表的業績がすでに成書として刊行されたことは大きな驚きであると同時に喜びである。専門的視野から眺めても,本書は単にGC-MSの一般論を紹介しているのではなく,GC-MSの新しい利用法と応用に関連させたtopicを集録している。すなわち大別して1.Mass fragmentography (MF)の原理およびinstrumentationと2.本法を応用した生体内indole alkyl—amines, Fals Transmittersの測定ならびにPsycotropicsの微量分析によるPsychopharmacology領域での応用,長年の希望であつたアセチルコリンの機器分析による測定,さらに最近の話題である3.Chemi—calionizationの利用法と4.GC-MSにおけるStable isotopeの使用,などに集約され,巻末にはMFを応用した1973年までの全論文が紹介され,研究上極めて有意義である。それにしても常に思うことは,こうした機器分析へsampleをもつてくるまでの過程,すなわち,生の試料からいかに効率よく,簡易に,しかも再現性のよいprocedureを用いたかということであり,これが微量測定を可能にする重要な要因の一つだと思われる。つまり常に新しい測定法とは,sample以後に始まる問題ではなく,目的物質を含有する試料そのものから出発するものである限り,いつかこれらの問題もそつくり抱え込んだ応用編の完結が強く望まれるものと思われる。
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