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普通Arnold-Chiari奇形などの名で呼ばれることが多い。この奇形は小脳下部(虫部と扁桃)並びに延髄の形成異常と共に,これらが発育段階で大後頭孔より下方に引き延ばされ上頸部に存することから成つている。頭蓋内圧亢進などに伴つてみられる小脳扁桃の大後頭孔以下への降下とはこの延髄,第4脳室底自体が小脳下端と共に頸椎管腔内に下降していることから鑑別される。もし,椎管腔を開いてみたとすれば,延髄背面が第4脳室の開孔部の下で頸髄背面を被うように隆起(bosse)としてみることができ,これは重要な所見で,矢状断層気脳写でも認められる。第4悩室脈絡叢はしばしば小脳下端に付着してみえる。
1894年,Julius Arnold (独)は腰仙部髄膜脱Meningozeleの新生児で,小脳が大後頭孔下に舌状に上頸髄背面を被つているのを見出し,翌1895年,Hans Chiari (独)は水頭症63例の分析で後脳の変形を詳述して3型に分けた。小脳下部が舌状に上部椎管腔内に垂れ下つているが第4脳室は大後頭孔以下に下つていないもの(Ⅰ型),第4脳室下部も延びて頸椎管腔内にあり,第4脳室が大後頭孔下で開いているもの(Ⅱ型),小脳全体が頸部脊椎二分症の中に逸脱しているもの(Ⅲ型)である。その後の幾人かの人々特にRussell and Donald (1935)によりArnold-Chiari奇形がChiariのⅡ型であることを明らかにした。しかしこのような後脳が大後頭孔内に陥入するのは水頭症の結果でなくして,脊髄,髄膜,根神経などによる固定によつて下方に牽引され移動した結果であると考えたのは1942年,LichtensteinやOgryzloによるとされている。
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