ゲノム編集技術を用いたこれからの遺伝子治療

「Ⅰ．ゲノム編集技術の基礎的背景」ゲノム編集（genome editing）とは，ゲノム領域特異的にゲノムの欠失や挿入を行うことを指すが，その領域特異性が主として強調されている用語である。意図しない箇所に遺伝子が挿入されることによる有害事象を回避できるという観点からも，遺伝子治療への応用として重要な技術である。ゲノム編集技術として代表的なものが，zinc finger nuclease（ZFN），transcription activator-like effector nuclease（TALEN），clustered regularly interspaced palindromic repeat（CRISPR）-Casシステム，の3つである1）。ZFNは，DNA配列を特異的に認識するzinc finger蛋白（DNA結合ドメイン）と，制限酵素FokIのヌクレアーゼ活性部位（DNA切断ドメイン）を融合させた人工的なヌクレアーゼであり，zinc finger蛋白をカスタマイズすることで，ZFNが特異的に結合した目的とする部位のDNA二本鎖を切断できる2）。「KEY WORDS」zinc finger nuclease（ZFN），transcription activator-like effector nuclease（TALEN），clustered regularly interspaced palindromic repeat（CRISPR-Cas），chemokine［C-C motif］ receptor 5（CCR5）