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第1土曜特集 希少遺伝性疾患の最前線 科学と社会をつなぐ
遺伝性難聴への遺伝子治療とゲノム編集治療
Gene therapy and genome editing for hereditary hearing loss
――Current status and future directions
神谷 和作
1,2
Kazusaku KAMIYA
1,2
1順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座
2株式会社ギャップジャンクション(Gap Junction Therapeutics, Inc.)
キーワード:
遺伝性難聴
,
遺伝子治療
,
ゲノム編集治療
,
アデノ随伴ウイルス(AAV)
,
内耳
Keyword:
遺伝性難聴
,
遺伝子治療
,
ゲノム編集治療
,
アデノ随伴ウイルス(AAV)
,
内耳
pp.931-936
発行日 2026年3月7日
Published Date 2026/3/7
DOI https://doi.org/10.32118/ayu296100931
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先天性難聴の約半数を占める遺伝性難聴では,1990年代の連鎖解析以降,次世代シークエンサー(NGS)の普及により多数の原因遺伝子が同定され,遺伝学的診断が急速に進展した.一方で,同定された変異を直接標的とする根治的治療は依然として承認に至っていない.近年,内耳遺伝子治療技術の進歩を背景に,2023年下旬以降,OTOF遺伝子変異を対象としたアデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子治療の初期臨床成績が海外から相次いで報告され,小児を中心に聴力や語音認知の短期間での顕著な改善が示され,注目を集めている.開発は米国,中国,英国,フランスなどで先行し,局所投与の手術アプローチや片耳/両耳投与など多様な設計で第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験が進行中である.蝸牛正円窓という内耳開口部からの局所投与手技の標準化も進んでおり,微量(数十μL程)のウイルス液を内耳空間に注入し閉鎖するため,全身曝露と副作用が少なく,先行する治験においても安全性はおおむね良好とされている.今後は,効果の持続性,至適投与年齢,片耳・両耳戦略の最適化,製造スケールと品質の確立などが主要課題となる.合わせて,新生児スクリーニングと遺伝学的確定診断の強化は,適格患者の早期介入と治療アクセスを左右する重要な基盤である.本稿では,遺伝性難聴に対するAAV遺伝子治療の背景,最新の臨床開発動向,ならびに今後の展望を概説する.

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