Japanese
English
特集 認知症に対するリハビリテーション医療
認知症の薬物療法
Pharmacotherapy for Dementia
富田 泰輔
1
Taisuke Tomita
1
1東京大学大学院薬学系研究科機能病態学教室
キーワード:
アミロイドβ
,
タウ
,
抗体医薬
,
核酸医薬
,
神経伝達物質
Keyword:
アミロイドβ
,
タウ
,
抗体医薬
,
核酸医薬
,
神経伝達物質
pp.897-902
発行日 2025年8月15日
Published Date 2025/8/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr034090897
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内容のポイント Q&A
Q1 認知症に対してこれまでどのような薬物療法が用いられてきたか?
これまで認知症に対して主に用いられてきたのは,ドネペジル,ガランタミン,リバスチグミンといったコリンエステラーゼ阻害薬である.これらの薬剤は神経伝達物質であるアセチルコリンの分解を阻害し,一時的に認知機能を改善する対症療法である.また,メマンチンというNMDA受容体拮抗薬も中等度以上のアルツハイマー病に使用されてきた.
Q2 最新の薬物療法は?
最近の薬物療法として注目されるのが,アルツハイマー病に対する抗Aβ抗体療法である.代表的な薬剤にレカネマブやドナネマブがあり,凝集したAβを標的として脳内から除去することで,認知機能の低下を遅らせる.これらは従来の対症療法とは異なり,疾患発症プロセスに対する直接的なアプローチであり,疾患修飾薬として考えられている.
Q3 薬物療法の効果は?
認知症の薬物療法は症状を完全に消失させるものではなく,症状の進行を緩和し,認知機能や日常生活動作の維持を目的とする.特に早期治療による効果が高く,認知機能低下の遅延が期待される.抗Aβ抗体療法についても病態進行を抑制する効果が報告されており,早期発見・早期介入の必要性が示唆されている.
Q4 薬物療法を行うときに注意する点は?
副作用への注意が重要である.特にコリンエステラーゼ阻害薬では消化器症状(吐き気,下痢)が多くみられ,NMDA受容体拮抗薬ではめまいや混乱が起こることがある.抗Aβ抗体についても,脳浮腫や微小出血が知られており,脳画像モニタリングが必須である.

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