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背景
不適切な食事と肥満は,世界各国が協力して立ち向かわなければならない重大な公衆衛生課題である.世界疾病負荷研究の推計によると,食事因子は成人における総死亡の22%(1年当たり1,090万人)を説明する1).また,body mass index(BMI;体重(kg)を身長(m)の2乗で割った値)が高いことが総死亡に寄与する割合は8.4%(1年当たり472万人)と見積もられている2).これらの知見は,食事の質や肥満に関連する修正可能な生活習慣要因(たとえば食行動)をよりよく理解することの重要性を強調するものである.このような観点から近年注目が高まっている研究分野として,時間生物学と栄養学をつなぎ合わせた「時間栄養学(chrononutrition)」がある3,4).
視床下部の主時計(マスタークロック)によって制御されている概日リズム(サーカディアンリズム)は,睡眠・覚醒のサイクル,摂食行動,ホルモン分泌など,重要な生物学的プロセスをつかさどっている5).これらのリズムは,光,ホルモン,食事摂取量などの外部要因の影響を受ける6).適切な概日リズムの機能は健康にとって不可欠なものである7).また,クロノタイプ(朝型か夜型かという傾向8))は,個々人の食事摂取パターンに影響を与える.たとえば,夜型クロノタイプの人は,1日の後半に食事をとりがちなため,夜間に摂取するエネルギー量が多い傾向にある9).時間栄養学は,このようなリズムに関連するさまざまな食行動に着目した学術分野である.
時間栄養学では,たとえば食事の摂取タイミングや摂取頻度という観点から食行動をとらえようとする.このような食行動は,日常生活の中で比較的簡単に変更可能な因子であるため,食事の摂取時刻や摂取頻度が健康的な食事や肥満に関連するかどうかを検討する研究は急速に増えつつある10,11).しかし,それらの結果は必ずしも一貫したものではない.このような結果の一貫性のなさの要因として,時間栄養学からみた食行動の調査法の違いが考えられる.しかし,複数の食事調査法を用いて時間栄養学からみた食行動を調べ,そのうえで,食事の質あるいは肥満との関連を検討した研究は存在しないのが現状であった.そこで筆者らの研究グループは最近,2つの異なる食事調査法(質問票法と日記法)を用いて時間栄養学からみた食行動を調査し,それらと食事の質および肥満との関連を検討した12).本稿ではこの研究を紹介する.

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