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第1土曜特集 質量分析イメージング法を用いた創薬・医学研究――時空間マルチオミクスの力
マイクロダイアリシスとメタボロミクスの統合
Integration of microdialysis and mass spectrometry-metabolomics
杉浦 悠毅
1
,
市原 元気
2
,
勝俣 良紀
3
Yuki SUGIURA
1
,
Genki ICHIHARA
2
,
Yoshinori KATSUMATA
3
1京都大学大学院医学研究科附属がん免疫総合研究センター
2慶應義塾大学医学部循環器内科
3同スポーツ医学総合センター/循環器内科
キーワード:
マイクロダイアリシス(微小透析プローブ)
,
グルタチオン
,
質量分析
,
フェロトーシス
Keyword:
マイクロダイアリシス(微小透析プローブ)
,
グルタチオン
,
質量分析
,
フェロトーシス
pp.633-639
発行日 2023年12月2日
Published Date 2023/12/2
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28709633
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細胞 “内” で生じる代謝変容の解析に,質量分析イメージング(MSI)やメタボローム解析が有用であることはいうまでもない.一方で,細胞 “外” に放出され,細胞間で授受される代謝産物,シグナル伝達低分子は,これらの手法で捉えることができない.本研究において,in vivoでの細胞間の代謝コミュニケーションを理解するために,生きた動物臓器から “細胞外” に放出される代謝物をマイクロダイアリシス(微小透析プローブ)で回収し,メタボローム解析を組みわせる手法を確立した.異なる時刻で回収した透析液中には,プローブを刺入した臓器構成細胞から細胞外スペースへ放出される代謝物が含まれている.したがって,マイクロダイアリシスとメタボローム解析の統合により,いつ,どのような代謝物をやり取りしているのかを理解することができる.
今回,筆者らはラット心臓へプローブを挿入し,その後に虚血・再灌流障害を起こさせる心筋梗塞モデルの解析に適用した.その結果,意外なことに再灌流障害時に心筋細胞は活発かつ継続的にグルタチオンを放出していた.さらに,この細胞外グルタチオン放出が酸化ストレス防御システムを不活性化し,心筋細胞にフェロトーシス(酸化脂質細胞死)を誘導するメカニズムを見出した.また,このグルタチオン放出の薬理学的阻害は心筋保護的に作用し,傷害領域を減弱できることを確認した.以上から,細胞内・細胞外を区別したマイクロダイアリシスとメタボローム解析の統合アプローチは,臓器,細胞間での代謝コミュニケーションの理解に有用である.
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