メタボロミクスにおける「質量分析インフォマティクス」

Computational mass spectrometry in metabolomics

SUMMARY

メタボロミクスでは，さまざまなサンプル中に含まれる代謝物を測るために質量分析計が用いられている．質量分析計から得られたデータは，m/zに対する信号の強度であり，これらの信号を処理するために専用のソフトウェアが用いられる．ソフトウェアで処理された信号は，最終的にサンプルと代謝物の行列データへと加工され，多変量解析やエンリッチメント解析が行われる．これらの一連の解析技術の総称である「質量分析インフォマティクス」は，質量分析データを情報科学的な手法を用いて解析するための研究分野であり，近年盛んに研究がなされている．本稿では，メタボロミクスにおける「質量分析インフォマティクス」について，基礎的な部分から実際の応用までを紹介する．また最近コホート研究での大規模なメタボローム解析や，異なる施設での再現性・標準化への取り組みがさまざまなされており，関連する研究を紹介するとともに今後の展望について述べる．