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第1土曜特集 全ゲノム解析に基づく難病のゲノム医学
各論
心血管疾患における遺伝学的検査
Genetic testing in cardiovascular disease
野村 征太郎
1
Seitaro NOMURA
1
1東京大学医学部附属病院循環器内科
キーワード:
心血管疾患
,
拡張型心筋症(DCM)
,
肥大型心筋症(HCM)
,
生活習慣関連心血管疾患
,
遺伝学的検査
Keyword:
心血管疾患
,
拡張型心筋症(DCM)
,
肥大型心筋症(HCM)
,
生活習慣関連心血管疾患
,
遺伝学的検査
pp.82-89
発行日 2023年4月1日
Published Date 2023/4/1
DOI https://doi.org/10.32118/ayu2850182
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心血管疾患は遺伝要因と環境要因の組み合わせによって発症する.遺伝要因は頻度の低いレアバリアント・頻度の高いコモンバリアントなどが存在するため,複数の要因を統合的に評価する必要がある.それぞれの心血管疾患には多様な病態が存在することが臨床的にも知られているが,それらを多様な遺伝要因のパターンによって層別化できる可能性が明らかとなってきた.これによって,均一に見える疾患集団を遺伝学的に層別化することで,その患者に最適な治療法を提供する精密医療を実践できるようになってきた.たとえば,拡張型心筋症におけるLMNA遺伝子変異は浸透率がきわめて高く,治療応答性が低く,臨床的予後が大変悪いため,遺伝学的検査によるこの変異の検出は診療ガイドラインにおいても高く推奨されている.遺伝学的検査によって診断に至る例が多く存在するのは言うまでもないが,家系スクリーニングによって無症状であっても疾患発症リスクを予測することもできるようになってきた.また,心血管疾患の遺伝要因を抽出することで,病態に基づいた治療法を開発することも可能である.その際には,ゲノムだけでなく他のオミックス情報を統合することによって,個々の変異が生じる分子病態を詳細に理解しようとする研究が大きく貢献している.今後は,これらゲノム・オミックス情報に豊富な臨床情報も組み込んで人工知能によって大局的な層別化を進めることが重要だと期待している.
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