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第1土曜特集 五感を科学する――感覚器研究の最前線
味覚
味蕾オルガノイド研究の最前線
The cutting-edge research using taste organoids
岩槻 健
1
Ken IWATSUKI
1
1東京農業大学応用生物科学部食品安全健康学科
キーワード:
味細胞
,
幹細胞
,
オルガノイド
,
味覚受容体
,
センサー
Keyword:
味細胞
,
幹細胞
,
オルガノイド
,
味覚受容体
,
センサー
pp.726-732
発行日 2022年8月6日
Published Date 2022/8/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28206726
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われわれは,口腔内に存在する味細胞のおかげで味噌汁のうま味や梅干しの酸味などを楽しむことができる.ヒトは動物界のなかでも特殊な生き物で,本来忌避すべき味(苦味,酸味)も許容するが,味覚本来の意味は栄養素と毒物・腐敗物を見分け,エネルギー価値の高いものを嚥下し,危険物を体内に入れず排出させるためのシグナルである.この味覚の起点であり,外来物の関所ともなっている味細胞は培養が難しく,味細胞培養系の構築は味覚研究者の念願であった.最近になり,消化管幹細胞が同定され,その三次元培養法(オルガノイド培養法)が開発された.続いて発生学的類似性から味蕾幹細胞が同定され,味蕾オルガノイドも消化管と類似した方法で培養が可能であることが明らかとなった.味蕾オルガノイドは,再生を繰り返す味幹細胞と,呈味物質に反応する成熟味細胞を包含するため,生体に存在する味蕾のよいモデルとなる.今後,ヒト味蕾オルガノイドが作製されれば,味覚研究や食品開発に役立つだけではなく,再生医療のためのドナー細胞としての期待も大きい.
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