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第1土曜特集 五感を科学する――感覚器研究の最前線
味覚
味覚受容をつかさどる細胞分子機構
Current understanding of molecular and cellular mechanisms of taste
樽野 陽幸
1
Akiyuki TARUNO
1
1京都府立医科大学大学院医学研究科細胞生理学,JST CREST
キーワード:
味覚
,
基本味
,
トランスダクション
,
受容体
,
シナプス
Keyword:
味覚
,
基本味
,
トランスダクション
,
受容体
,
シナプス
pp.722-725
発行日 2022年8月6日
Published Date 2022/8/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28206722
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味,すなわち味覚は化学物質が舌,軟口蓋,咽頭の上皮に存在する味蕾を刺激することにより生じる感覚である.ヒトを含む多くの哺乳動物は甘味,うま味,苦味,塩味,酸味の5つの基本味を受容することができる.味蕾はおよそ100個の紡錘型の味細胞の集合体であり,各基本味はそれぞれ固有の細胞種によって受容される(図1).甘味やうま味はそれぞれ糖質,アミノ酸といったカロリー源の存在を知らせる味であり,好ましい味として感じられる.苦味や酸味は毒素や腐敗を知らせる味であり,好ましくない味として感じられる.一方,塩味は塩分摂取量を調節するために濃度により好ましさが変化するという特徴がある.このように,自然界における動物の生存に必須の役割を果たしてきた味覚だが,肥満,糖尿病,高血圧などの生活習慣病が蔓延している飽食の現代においては,食行動を制御する味覚を理解することの重要性はこれまでにない高まりをみせている.本稿では,味蕾における基本味の受容と神経伝達の細胞分子機構の最新の知見を紹介する.
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