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はじめに
近年,早産児における経腸栄養の早期確立と壊死性腸炎(necrotizing enterocolitis:NEC)や敗血症といった合併症の発生頻度低下との関連が広く認知され,国内の多くのNICUでは早産児に対して日齢0~1に経腸栄養を開始している。経腸栄養を進めることで消化管の成長や発達,局所の成長因子や消化管ホルモンの分泌を促進することが知られ,長期間の経腸栄養停止は消化管粘膜の萎縮,透過性の亢進などを引き起こし,消化管機能不全から二次性のfeeding intolerance,bacterial translocation,NECの要因となる。当科においては生後6~8時間を目安に初回の経腸栄養を開始している。何らかの理由で母親から母乳が得られない,または使用できない場合には,低温殺菌(62.5℃,30分)されたドナーミルク(ドナー登録した女性から提供された母乳)の使用が推奨されている。ドナーミルクの低温殺菌による影響について,リンパ球など細菌成分の減少,リパーゼなど消化酵素活性の低下,サイトカインの変化などが報告されているが,生物学的免疫学的特性は適切に維持されている。国内では2017年に一般社団法人日本母乳バンク協会が設立され,現在は母乳バンクが3か所となり,全国のNICUでドナーミルクを利用できる体制が整いつつある。日本小児医療保険協議会栄養委員会からも2019年に早産・極低出生体重児の管理中のドナーミルク使用について提言が出されており1),従来国内のNICUで早期経腸栄養確立のために利用されていた「もらい乳」(低温殺菌されていない他児母親の凍結母乳)は,サイトメガロウイルスをはじめとするウイルス感染,増殖細菌感染などのリスクから,現在はほぼ利用されなくなった。
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