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早産・極低出生体重児に対する静脈栄養の意義
母体から胎児へは胎盤を介して継続的な栄養素の供給が行われている。早産・極低出生体重児は出生により母体からの栄養供給が遮断され,栄養素の備蓄も少ないことから,急激に血中のアミノ酸濃度が低下する。さらに飢餓反応として肝グリコーゲンから著しい糖新生が起こるとともにインスリン分泌能が低下し,糖の利用が低下する。生後早期の早産児にブドウ糖輸液を単独で行った場合,1日あたり体蛋白が1~2%ずつ失われる1)。このような栄養学的危機状態にある早産・極低出生体重児に対して適切な栄養管理を行うことは,NICU入院中の発育だけでなく,未熟児網膜症や慢性肺疾患などの発症、NICU退院後の発育や神経学的予後にも大きく影響することが示唆されている。NICU入院中の早産・極低出生体重児の栄養管理の目標は「胎児に類似した成長と体組成を維持できるような栄養を与えること」と提唱されている2)。NICU退院時の体格が在胎期間別出生時体格標準値の10パーセンタイルに満たない子宮外発育不全(extra uterine growth restriction:EUGR)はその後の神経発達予後に大きな影響を及ぼすことから,積極的な栄養管理(early aggressive nutrition:EAN)によりEUGRを回避することで早産児のアウトカムを向上させる効果が期待される。EANとは具体的には出生当日から十分量のアミノ酸を中心とした静脈栄養とともに,母乳による早期授乳を行う方法である。筆者らの施設では2006年頃から早産・極低出生体重児に対する栄養管理方法として導入し,現在わが国の多くのNICU施設においても標準的な栄養戦略として受け入れられつつある。
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