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目的 ムコ多糖症Ⅰ型(MPS Ⅰ)患者を対象としたラロニダーゼ(本剤)の長期使用実態下での安全性および有効性について検討した。 方法 本剤を投与されたMPS Ⅰ患者全例を対象に,特定使用成績調査を実施し,日常診療における安全性および有効性データを収集した。登録期間は2006年10月から2016年4月までとした。用法・用量に介入せず,患者の観察期間は投与開始後最長9年間とした。安全性については,有害事象の発現状況,安全性に影響を与えると考えられる患者背景因子,投与量および投与期間と有害事象発現率との関係,ならびに抗体産生と副作用発現の関係を評価した。また,有効性に影響を与えると考えられるこれらの要因と全般改善度(やや改善以上)の関係についても検討した。 結果 安全性解析対象患者40例のうち,有害事象は29例(72.5%)で認められた。主な重篤な有害事象は,てんかんおよび発熱(各2例)であった。本剤との関連性が認められる,もしくは否定されない有害事象は16例(40.0%)158件にみられた。頻度の高いものは蕁麻疹および発熱が6例で最も多く,紅斑およびそう痒症が各3例であった。腎機能障害がみられた1例の転帰は未回復で,その他の事象の転帰は回復または軽快であった。抗ラロニダーゼ抗体(IgG)産生は34例中33例にみられた。統計学的検討を行った結果,抗ラロニダーゼ抗体(IgG)産生の有無と副作用,過敏症(副作用)およびIAR(infusion associated reaction)の発現に有意差は認められなかった。抗ラロニダーゼ抗体(IgG)抗体産生ありの群では,過敏症(副作用)の発現に有意差が認められたが,副作用とIARの発現では有意差は認められなかった。最終評価時の全般改善度は改善(著明改善,改善,およびやや改善)10例(25.6%),不変24例,悪化3例,および判定不能2例であった。全般改善度との統計的な関連性を検討した因子のうちで,年齢,拡張期血圧,投与量および投与期間は全般改善度との相関がみられた。また,α-L-イズロニダーゼ活性,尿中ウロン酸濃度,肝臓サイズの改善傾向が認められた。 結論 本剤との関連性が認められる,もしくは否定されない有害事象の頻度は40%で,ほとんどの副作用は非重篤で転帰は回復または軽快であった。最終評価時の全般改善度(やや改善以上)は25.6%であった。本調査では,ラロニターゼ長期(最長約9年間)投与の安全性および有効性に新たな懸念は認められなかった。