炎症性腸疾患診療のupdate
Ⅴ 炎症性腸疾患の内科治療 ⑪抗接着分子治療―ベドリズマブを中心に
本谷 聡
1
,
杉山 浩平
1
,
宮川 麻希
1
,
那須野 正尚
1
,
田中 浩紀
1
1札幌厚生病院IBD センター
キーワード:
抗α4β7抗体
,
ベドリズマブ
,
MAdCAM—1
,
潰瘍性大腸炎
Keyword:
抗α4β7抗体
,
ベドリズマブ
,
MAdCAM—1
,
潰瘍性大腸炎
pp.852-857
発行日 2019年5月25日
Published Date 2019/5/25
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000000815
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接着分子の一つであるインテグリンの機能を阻害する薬剤は,抗原刺激を受けたリンパ球の血管内皮細胞への接着を阻止し消化管組織内への浸潤を抑制する.したがって炎症部位での病原性リンパ球は減少し過剰な免疫反応が制御され,炎症性腸疾患の病態が改善する. ヒト型α4β7 インテグリン抗体であるべドリズマブ(vedolizumab;VDZ)は,腸管特異的に発現する接着分子であるMAdCAM‒1(mucosal vascular addressin cell adhesionmolecule‒1)とリンパ球との接着を阻害する.α4β1 インテグリン抗体であるナタリズマブ(natalizumab)のように,全身の血管内皮細胞に発現するVCAM‒1(vascular celladhesion molecule‒1)との接着は阻止しない.よって全身に及ぶ炎症性疾患での効果は期待できないが,腸管特異的なリンパ球浸潤阻止により炎症性腸疾患には有用であるとともに,腸管以外の臓器への影響が少なく,ナタリズマブで危惧された進行性多巣性白質脳症を発症するリスクはきわめて低いと考えられる.
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